日本経済最大のタブー“ザイム真理教”…信者8千万人、岸田政権が増税連発の裏側


日本銀行本店(「Wikipedia」より)

『ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト』(フォレスト出版)。そんなおどろおどろしいタイトルの本が、バカ売れしている。5月22日に発売後、売上をグングン伸ばし、3週間で4万部を突破。同ジャンルの書籍としては異例の売れ行きで、アマゾンでは、発売直後から経済学ジャンル1位の座をキープし続けている。

 著者は、20年前に『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)で一世を風靡した経済アナリストの森永卓郎氏。柔和な笑顔で、難解な経済の仕組みをわかりやすく解説してくれる森永氏が「人生の集大成」として取り組んだのが“ザイム真理教”だったという。

 いったい、どんな内容なのか。本人に、そのカラクリをじっくりと話してもらった。

「岸田文雄総理が、このまま緊縮財政に取り組めば、日経平均株価は、現在の10分の1の3000円になっても不思議ではありません。いま総理の頭の中にあるのは、金融の正常化と財政の健全化しかない。なので、とてつもない勢いで増税と社会保険料アップ、あるいは公共サービスカットがきます。すでに、もう毎月やるのかと思うくらい、ビッシリ増税メニューが並んでいるんです」

 そう言って森永氏が予測する、岸田政権の増税スケジュールは、確かに強烈だ。

森永氏が出演しているABCテレビ『教えて!ニュースライブ 正義スのミカタ』6月3日放送より 今年から数年間にわたって、増税スケジュールがビッシリと組まれている。

 岸田総理の経済政策の元になっているのが、“ザイム真理教”だという。絶対的な国の指針として財務省(旧大蔵省時代から)が布教し続けてきたものの正体は、目に見えないだけに、不気味でおそろしい。

 ザイム真理教とは、「国の借金が増え続ければ、国家財政は破綻する」と国民にアピールして、税金や社会保険料の負担を増やすよう、“布教活動”を行っている財務省(旧大蔵省)官僚によるカルト的な教えのこと。

「政治家も多くの国民も、財務省のマインドコントロールによって支配されていて、もう身ぐるみはがされるくらいに不幸な目に遭わされるかもしれないのに、それでも多くの人が信じ続けているんです」(森永氏)

 では、ザイム真理教の教えとは、具体的にどんなものなのか。本の中から、その“教義”の一部を引用してみよう。

・税収を大きく上回る歳出がなされ、その差である財政赤字がどんどん拡大している。

・その結果、日本の国債残高は、どんどん増えていて、いまや先進国のなかでダントツに大きな残高になっている

・財政赤字を放置すれば、将来世代に負担を先送りすることになる。

・同時に、国債の信任が失われれば、通貨の信任や金融機関の財政状況にも悪影響を及ぼす

・国民が広く受益する社会保障費は今後も増大していくと見込まれ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税の引き上げは必要

「どれも、まったくその通りだ」と思った人は、すでにザイム真理教に洗脳されている可能性が高い。森永氏は、有力な学者や政治家、財界人、マスコミがことごとく、この教義を信じ込まされた結果、とんでもない方向に日本経済が迷い込んでしまったと指摘する。

 財政再建を至上命題とし、景気動向を無視して消費税をアップして、デフレ脱却の芽を摘んできた。長年、赤字国債を大量に発行してきたせいで、国の財政は借金まみれだと言うが、森永氏の試算によれば、その借金と同じくらいの資産を日本は持っており、 危機的な状況には、まったくないという。

「2020年度末に財務省が公表した数字を見ると、日本は1661兆円もの借金を抱えています。ところが、それと同時に、政府は有価証券や土地、建物など1121兆円という莫大な資産を保有しています。さらに通貨発行益を加えると、実質債務はわずか8兆円。しかも現在の岸田政権が財政緊縮を徹底した結果、すでに日本政府は借金どころか、預金を持っていると見込まれるんです」

 では、いったいなぜ、ザイム真理教がそこまで力を持つようになったのか。いくつかのポイントを挙げて、森永氏に詳しく解説してもらった。

みんな知っているけれど、誰も怖くて言えないこと

――どうして、このテーマを書こうと思われたのですか。

森永氏 ちょうど、65歳になって、子供も巣立ったし、無理に仕事をする必要はなくなったんですよ。あと畑で農業も始めて、お金がなくても生きていける手立てが整ったので、最後に本当に書きたいことを書いて、人生を終えようと思ったんです。

 ずっと、みんな知っているんだけれども誰も怖くて言えないテーマが、私の中では2つありました。ひとつは財務省がカルトだっていう話と、もうひとつは日本航空123便の墜落事件の真相です。そのうち、とりあえず、ひとつをやったという感じなんです。

――大手の出版社からも出版を断られたそうですね。

森永氏 そうなんです。まず、書く前に企画を持ち込んだんですが、みんな断られました。そこでとりあえず原稿を書いてしまって大手出版社に持ち込んだんですが、これもすべて門前払い。

 どこがいけないというのでなく、そもそもこのテーマは書いてはいけないんだという雰囲気でした。編集者レベルで通ったところでも編集会議にもあげてもらったけれど、もう箸も棒にもかからない感じでした。私は、これまで100冊以上本を出していますが、こんなことは初めてです。

――それはタブーに触れるからでしょうか。

森永氏 (言葉にはしないけれど)そんな感じですね。でも、その気持ちはわからないでもないんです。彼らもサラリーマンで、生活を守らないといけませんので。私は、出版にはまだ言論の自由は残っていると思っていたけれど、もうそれもないなということは、はっきりわかりました。諦めかけていたときに「うちで出しますよ」と、社長ひとりで経営している三五館シンシャという出版社が引き受けてくれたんです。

――それだけ断られ続けた企画が、いざ発売したら、たちまちベストセラーになりました。

森永氏 この3週間、経済書では、ずっと1位をとっています。だから8000万人は騙されているんだけれども、4000万人はまだ騙されていない(※1)。その人たちには響いたのかなと。

※1 2021年10月に朝日新聞が行った世論調査によれば「消費税を下げたほうがいい」と答えた人は、全体の35%(約4000万人/1億2000万人)にすぎなかった。残り65%(約8000万人)の人は「消費税を下げなくてもいい」、あるいは「増税してもいい」と回答している。

――メディアで、本書のことは取り上げられていますか。

森永氏 大手新聞社とテレビ局は完全無視です。書評もまったくありません。大手でない出版社と週刊誌でいうと、「アサヒ芸能」とか「週刊実話」はわりと大きく扱ってくれています。あとはタブロイド紙やネットメディアもメチャクチャ扱ってくれています。大手メディアとテレビは一切ないです。

――20年前の『年収300万円時代を生き抜く経済学』と比べたらどうでしょうか。

森永氏 『年収300万円~』は、最初のバージョンが37万部ですが、続編が十何万部か売れて、関連本もすべて入れると約100万部売れました。それと比べると、今回の本も同じくらい勢いはありますが、取り上げられ方は、大手新聞とテレビ局が無視しているというのが徹底的に違いますね。

莫大な資産があることは隠されたまま

――ザイム真理教は、いつ頃から流布されるようになったのでしょうか。

森永氏 私は、1980年に社会に出て日本専売公社(現JT/日本たばこ産業)の主計課という、大蔵省から予算もらってくる部署に配属されたんですけど、その頃からおかしくなってきたんです。きっかけは、1973年に石油ショックが起きて、景気対策として国債を発行したこと。意外と多めに。それが10年たつと返済しなければいけないから、財政を締めないとダメだと言い始めました。“財政再建元年”と当時の大蔵省の役人が言い出して、それでおかしくなったんです。だって10年で返す必要なんてまったくないんですから。

 一方、バランスシートに資産がたくさんあることを、ずっと財務省が隠し続けていたんですね。国の財務書類という統計は、高橋洋一さんという、いま嘉悦大学にいらっしゃる方が財務省在任時代につくりました。役人の習性で、一度つくった統計を途中で辞めるのは難しいんです。前例踏襲で仕事をするからです。

――国の資産にも「売れるものはたくさんあり、売れないものはほんの一部にすぎない」と書かれています。

森永氏 はい。財務省は「まったく売れない」と言っていますが。そんなことはありません。一番巨額なのは、世界でもっとも流動性が高くて売りやすい米国国債。それが100兆円くらい。あと地方債などで、全体の7割が金融資産です。土地・不動産については、一等地ばかりなので全部売れます。それらをひっくるめると、国には、ざっと1100兆円も資産があるんです。

――家計にたとえれば、収入を上回る借金をして、毎年借金だらけではないのかと言われたら、確かににそのとおりだけど、実は、その人はとんでもない資産家だったということでしょうか。

森永氏 そうです。私の試算では、2020年度末で8兆円しか借金ないんですけど、その後、岸田政権がものすごい財政の引き締めをして、日銀も国債を大量買い入れしていますから、おそらく現時点では、間違いなくプラス。貯金を抱えているんです。貯金を抱えているのに「増税をするぞ」と言っているんです。

東大法学部出身は経済学を知らない

――そのあたりは、専門家の世界での議論はされていないのでしょうか。

森永氏 ないです。というか、そういう話をすれば、たちまち干されます。

――森永さんも、その恐れはありますか。

森永氏 あります。私は小泉内閣のときまでは、いくつもの政府の審議会の委員を務めていたんですが、ある時期から全部クビになりました。任期が更新されずに次々と消えていく。そして次からは選ばれない。

――政策の方向性に忠実な人を委員会の専門家に呼んでくるのは、今も変わらないのでしょうか。

森永氏 財政制度等審議会なんて、もう信者ばっかり。というか、ザイム真理教の“教団幹部”に近い人たちを集めているんです。財務省は、ケタ違いに悪質。どこへでも洗脳しにきますからね。一方的に説明されたら、確実に信者になってしまいます。

森永氏 政治家にしても、ちゃんと経済を勉強していない人ほど簡単に“落ち”ます。反論できる人は、ほとんどいません。財務省出身の政治家も少なくありませんが、財務省が一番経済学を勉強していない。なぜなら、東大法学部が支配しているので。法学部出身者は、経済学をちゃんと勉強していないんです。あと、もっとも潤沢な天下り先を持っているのが財務省なんです。

――天下りの撲滅は、小泉内閣の頃から言われていましたが。

森永氏 世間は誤解しているようですが、これまで天下りが禁止されたことは一度もないんです。天下りの斡旋が禁止されただけです。ですから、退官後も転々と天下り先を渡り歩いて、数年ごとに数千万円の退職金がもらえるうえ、個室と秘書、専用車、交際費、海外旅行が漏れなく付いてくるという待遇です。これは、やめられないですよ。

帳簿上の債務超過はインフレを起こさない

――本に書かれている「通貨発行益」は、いまひとつ一般人にはわかりにくいと思います。お金をたくさん印刷して発行しても、国民にはなんらデメリットはないということでしょうか。

森永氏 自分が権力者だったとすると、紙切れに「1万円」と書いたら、それだけの価値の紙幣として使えるわけですよ。ということは、発行者に「1万円」の利益が転がり込んでいるということになります。これは大昔から行われています。貨幣の歴史とともに、「通貨発行権」が使われているんですね。世界中でどの時代でもみんな使っています。

――やりすぎると猛烈なインフレがくる?

森永氏 そうです。問題は、どこまでなら大丈夫かっていうところ。安倍政権が残した最大の成果というのは、2020年度に1年間で80兆円財政赤字を出したこと。それでも、なんともなかったんですよ。たぶん80兆円くらい毎年赤字を出しても大丈夫ということです。

 国が大量に国債を発行して、中央銀行が引き受ける。金利が上がると債務超過になる。債務超過になったら、その瞬間、誰もその国を信用しなくなり、経済が壊滅するといわれていました。

 だけど去年、オーストラリアの中央銀行が債務超過になったけど、何も起こらなかった。最近、アメリカの中央銀行が債務超過になった。でも何も起こってない。だから、真っ赤なウソだったというのがわかったんです。

――これまでの学説とは、何が違っていたのでしょうか。

森永氏 債務超過に陥った瞬間に信用を失うといわれていました。でも、誰も中央銀行が債権超過かなんて気にしていなかったんです。

――デフォルトになっているのとは違うのでしょうか。帳簿上は債務超過に陥っているものの、支払いは続けるということですか。

森永氏 はい。一般の民間銀行はダメですよ。債務超過になると、自己資本比率規制があるから業務はできなくなるけれど、中央銀行は全然問題にならないということがわかったんです。

――1990年代後半のアジア通貨危機はどうでしょうか。

森永氏 あれは海外から大量の借金をしていた国で起きたことです。海外の投資資金というのは、(高利貸しの)街金みたいな感じなんですよ。あるいは闇金に近いような存在。だからヤクザみたいなところから金借りてはダメということ。日本の場合は自国通貨で借金しているので、それとは違って、まったく問題ないんです。

――海外から高利で借りている場合、返せなくなると資本を引き上げられておかしくなるということでしょうか。

森永氏 そう。日本にはそんなものはない。国債にしても、外資が何度も日本を破綻させようとして、日本の国債を売りにいったけれど、すべて失敗して、みんな尻尾を巻いて帰っていきました。

 日銀が通貨発行権を握っているので、日銀が買ってしまえば暴落なんてしようがなかった。そんな当たり前の仕組みをわかっていなかったということなんです。

国民負担率10割になったら起きること

――アベノミクスによって、株価、企業業績は上向きましたが、庶民の生活はよくなっていないのはどうしてでしょうか。

森永氏 消費税を上げたからです。2013年4月に、黒田東彦日銀総裁が「異次元の金融緩和」を始めました。びっくりすることに、たった1年で消費者物価がほぼ2%弱、上がったんです。それでデフレ脱却するはずだったんだけど、財務省がそのタイミングで消費税を引き上げました。すると、たった1年でデフレに戻ってしまいました。だから最大の失敗は、消費税を引き上げたことといえます。2014年に8%にして、その後2019年に10%にしました。

――税率の引き上げが、たとえ2%、3%であっても、どんどん物価が下がって、給与が上がっていない時代に、これをやられるとダメージが大きいですね。ダメージが大きいから、消費が一気に失速。心理的に、ありとあらゆるものが上がっていくと思うと、サイフのひもが固くなっていくわけですね。

森永氏 そうです。安倍総理の最大の人事ミスは、日銀副総裁だった岩田規久男先生を総裁にしなかったことです。岩田先生は上智大学の元教授で、リフレ派経済学者の第一人者です。

 黒田前総裁はもともと財務省の人なので、ザイム真理教の信者なんです。岩田先生が退任されて時間がかなりたったので、最近、本当のことを言い始めました。2014年の消費税引き上げを岩田先生は「絶対にダメだ」と言っていたのに、黒田前総裁は「絶対に大丈夫だ」と言って、それ以来、もう冷戦状態だったらしいです。

――新しい日銀総裁については、どのように見ていますか。

森永氏 植田和男総裁は、元同僚の話を聞いても、あまり期待できません。岸田総理の忠実な執行者になるでしょう。たぶん、選挙が終わったら金融引き締めにいくと思います。これはとてつもなく危険で、それが世界の金融危機の引き金を引くことになるかもしれないと言う人もいるくらいの行為。それでも岸田総理は、やると思います。

――このところ株価は絶好調なのにですか。

森永氏 だから、とてつもない勢いで落ちると思います。なかなか信じてもらえないんですが、世界恐慌に至る1929年10月24日の“暗黒の木曜日”から始まった暴落によって、株価は10分の1になりました。日本で今、暴落が起きたら、それと同じくらいのインパクトがありますので、私は日経平均が3000円になっても不思議ではないと思っているんです。

――岸田総理が考えている引き締めというのは、どういうものですか。

森永氏 岸田総理がザイム真理教を信じてしまっているものですから、彼の頭の中には、金融の正常化と財政の健全化しかないんです。なので、とてつもない勢いで増税と社会保険料アップ、あるいは公共サービスのカットがきます。毎月やる気かと思うくらい、ビッシリ増税メニューが並んでいるという状況なんです。

 でも、このまま放っておくと、「全部もっていかれるぞ」と私は言っていたのですが、最近冷静に考えてみると、国民負担率100%になったからといって止まらないんです。110%、120%といくかもしれません。カルト教団が年収のすべてを献金させるのでは止まらず、家屋敷もクルマも売って献金しろと言いますね。それと同じです。

――いま国民負担率が5割近くですが、それが2倍になるという見立てでしょうか。

森永氏 2倍以上になるかもしれません。このまま放置したら。

――稼いだものが全部持っていかれるというのは、どういう状態でしょうか。

森永氏 稼いでも稼いでも持っていかれるというのは、今の北朝鮮とかと同じになるということです。

――そういうなかで、何か庶民ができることはあるのでしょうか。

森永氏 江戸時代に五公五民(5割を年貢で持っていかれる状態)になったときに、一部のグループの人たちは一揆を起こしました。もうひとつのグループの人たちは、田畑や家屋敷を全部捨てて逃げたんです。

 現代では、「戦え」と言う人たちのほうが、私が聞いている限りではまだ多いんですが、私は戦うほうが、正直いうと難しいと思っています。なぜならば“脱洗脳”というのは、洗脳された期間と同じだけの期間がかかるからです。国民が目を覚ますまでに、あと40年くらいかかるんです。だから「逃げようぜ」と言っているんです。

――株価も落ちると考えられますか。その時点で、何か方向転換が起きないものでしょうか。

森永氏 世界恐慌のときでも、普通の人たちがみんな困ったんですね。あるいは東京大空襲の後とか、関東大震災の後とか、そういうときには普通のサラリーマンたちが一気に追い込まれるんです。

 そういうときに誰が強かったかというと、農民です。都会の人は、ずっと大切にしてきた着物とか書画骨董とかをお米に換えてもらいにいった。だから先回りして、私はもう自分で食べるものは自分でつくることにしました。自分で使う電気も自分でつくる。自分で使う水も自分でつくる、というふうにすれば、消費税もかからないし収奪のしようがない。

タダで借りた土地で、消費税と電気代無料の自己防衛

――家庭菜園の規模を超えたものですか。

森永氏 野菜をつくっているのは30坪です。それで十分、自給自足はできるんだけど、いまスイカとメロンをつくっていて、全部で60坪耕しています。

 野菜は、スーパーで売っている基本的なものは、すべてつくっています。トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、アスパラガス、レタス、サラダ菜、春菊、ラディッシュ、大根に、ほうれんそう、ニンジンとか、いま25種類つくっています。さらに、うちの周りでいろいろつくっている人がいて、その人と物々交換しています。隣のおっちゃんは、自然薯までつくっています。

 うちの近くで始めて、今年で4年目。その前に3年、群馬で農業をやっていました。

――どなたかから教わりながらですか。

森永氏 群馬のときに、プロの農家の方に教わっていました。一番大変なのは、雑草との戦い。うちは農薬を使っていないから、1日畑に行かなかったらボウボウに生えてくるんです。早めにやらないといけない。私は芸者みたいな商売をしているので、仕事がこうポンポンと入ってきたら行けなくて、その後始末がすごく大変なんですよ。

――水やりはどうしているのでしょうか。

森永氏 雨が降らない時期は、三輪の自転車にポリタンクを積んで、一日100キロくらい蒔かなければならず、結構な重労働です。害虫もたくさんいます。敵は大雨、大風、鳥、虫、病気。動物も出ます。捕まえたことはないですが、タヌキかハクビシンなどです。あとカラスは大敵ですね。

――電気はソーラー発電ですか。

森永氏 そうです。ムチャクチャやってます。家とは別のところでソーラー発電のパネルを設置しています。うちは築30年で、屋根の上に負荷をかけると危ないといわれているからです。とりあえず、発電した電気を売っています。自宅のパネルもありますがすごく小さくて、すべての電力をまかなうまではいっていません。

 私は、一番現実的な抗議の仕方というのは、東京や大阪を捨てることだと思っているんです。東京は家賃も物価も高いから、その生活費をまかなうために死ぬまで働かなくてはいけなくなる。ローンも高いし。そこから抜け出せば楽しい仕事ができます。

――都会人の地方移住は、人間関係が大変ではないですか。

森永氏 田舎は相当若い時期に行かないと難しいんですが、うちは「トカイナカ」と呼んでいます。田舎と都会の中間にあり、そこくらいだとそんなに人間関係は濃くないので心配はないです。

――ご自宅は埼玉県所沢ですね。

森永氏 はい。所沢も駅の周りは盛り上がっていて大都市になっちゃったんですが、うちはその先で、駅からも離れています。

――それでも土地代は高いのではないですか。

森永氏 確かに、東京で畑をやろうとすると、とてつもなく高い。私の友人が、世田谷で畑を借りて、一坪切るくらいの面積が月1万3000円でした。だから、うちと同じ面積を借りると毎月70万円以上かかってしまう計算になります。

 その点、うちはタダです。固定資産税は、地主持ちです。農家の土地をお借りしてやっていて、生産緑地の耕作者名義に名前を入れてもらっているだけで、生産緑地なら地主もそんなに負担しなくていいんです。

――今回、ザイム真理教の本を出したので、森永さんも突然、スキャンダルに巻き込まれるおそれはないでしょうか。たとえば、痴漢の冤罪に巻き込まれるといったことや、何かスキャンダルが出てくるといった具合に。

森永氏 それは、ありますね。国税が査察に入ってくるとか。警察も予算や金融関係のデータ面で財務省の傘下にあるので、何をされるかわからない。あとは、スラップ訴訟に巻き込まれるおそれもあります。

 その準備をするためには、今の2倍くらい本が売れてくれないといけないですね。

――ありがとうございました。

(構成=日向咲嗣/ジャーナリスト)

森永卓郎(もりなが・たくろう)
1957年、東京都生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。1980年に東京大学経済学部を卒業後、日本専売公社(現在のJT)に入社、「管理調整本部主計課」に配属となる。当時の専売公社はすべての予算を大蔵省(現・財務省)に握られており、「絶対服従」のオキテを強いられることになる。同部署で体感した大蔵省の実態を原点に、「ザイム真理教」が生まれ、それが国民生活を破壊していったメカニズムを本書で明らかにする。

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