値上げに音上げ??:狂乱物価は新たなステージに

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当地、カナダの食料品の価格も一時の狂乱ぶりから落ち着きを取り戻していますが、数年前の物価からははるかに高くなり、スーパーで手にしようとする食材も価格を見て手が引っ込むことはまだしばしばあります。航空券などは夏の旅行シーズンになり、狂乱状態にありますし、ようやく飛行機を予約しても今度は宿泊場所に困る悩みがついて回ります。

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ところが最近ラジオのコマーシャルで「自動車の0%ファイナンス」を宣伝していました。この金利高の中、ダッジのライトトラックの販売会社が「あの忘れかけていた0%ファイナンスが戻ってきた!」と宣伝しているのです。多分ですが、ものすごい反響があるのでしょう。そして他の自動車会社も我も、我もと追随する可能性があります。つまり、物価高における逆転現象です。

私が週に1度は欠かさず通っていた飲み屋に行ったところ、入り口に張り紙。「10年間お世話になりました」と。そして店のガラス面には目隠しの紙が貼られ中が見えないようになっていました。流行っていた店なので唐突感は否めません。個人的想像ですが、10年という区切りから大家とリース料の更新で折り合わなかったのではないかと思います。当地では契約更新の際、大家が無謀なリース料や賃料を提示することがしばしば問題になります。住宅に関しては州政府がその年の最大の引き上げ幅を決定しており、今年は2%です。但し、商業不動産にはその制約はありません。無謀な賃料提示にテナントは大家にNOを突き付け、「なら、閉店する」という選択肢を選ぶ時代になったのかもしれません。

CBCニュースではトロントにおける投資家所有の物件が赤字になっていると報じられています。家賃収入に対して固定資産税や管理費、金利などの諸経費を差し引くとマイナスと言う意味です。カナダは賃貸住宅事業は儲からないとされます。理由は賃料が物件価格に対して低いのが理由です。新築の表面利回りは3-4%程度、それに対して上述の諸経費を引けば間尺に合わないのは自明です。これはカナダ政府の住宅価格抑制のための政策でもあるのですが、投資家もこれには「音上げ」のようです。

北米の狂乱物価は新たなステージに入った感があります。つまり、消費者や需要側が声を上げる時代、そして一部の販売者、供給側がそれに寄り添う形になったと思うのです。全てにおいて高すぎた、だから消費の勢いが維持できず、クラック(裂け目)が生じてきたように思えます。

北米の全般的な株価が冴えないのも企業決算の盛り上がりに欠けるからでしょう。カナダの株価も一進一退で、トロントの証券マン氏から「お前、これいつまでこの状態だと思うか?」と聞かれ、思わず回答に悩んでしまいました。読めないのです。個人的には見ないふりの夏を経て、景気が秋ごろに思った以上に冷える気がしています。

一方の日本は元気なようです。引き続き値上げラッシュで食品から他の物品やサービスにも波及してきていると報じられています。また付加サービスを上乗せしてより高い金額にすることもあるようです。例えば新宿に出来た東急歌舞伎町タワーの映画館は4500円で一般の映画館が2000円弱と比べると2倍以上です。多分、お気に入りの映画を最高のコンディションで見たい人向けのサービスですが、別にドリンクとポップコーンが無料でついてくることが魅力的かどうかは疑問です。

いずれにせよ、値上げをするというのは2つのケースしかありません。コストが上昇したためにやむを得ず値上げするケース、もう一つは需要が旺盛で値上げしても問題なく売り上げが維持できることです。今の日本は前者と後者の混合状態で、企業側は値上げで「助かる」から「儲かる」に移行しつつあるとみています。儲かれば内部留保よりも給与や株主配当を増やしてばら撒くことでマネーが循環し、好景気を演出していくことになりそうです。

日本の株価の上昇もそのあたりに理由を見出すことができるのですが、「日本だけ特別」ということはないので手放しになるのは危険かと思います。内需については健全ですが、多くの企業の売り上げや利益が海外依存体制になっており、その点を勘案するとむしろ気を引き締めなくてはいけない状況になりつつあるのではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年6月21日の記事より転載させていただきました。

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