マネーの景色:日経平均株価はまだ上がるのか?

アゴラ 言論プラットフォーム

アメリカの5月度消費者物価指数(CPI)が発表になり総合が前年同月比4.0%上昇、前月比で0.1%上昇となり、4月の4.9%上昇から鎮静化しました。またコアはそれぞれ5.3%、0.4%上昇となり、事前予想とほぼ一致しておりインフレが着実に落ち着きつつあることを示しました。

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現在、FOMCを開催しており、明日、6月14日にその発表がありますが、このCPIを受けて8-9割が利上げ一時停止と予想する向きとなっています。北米の株式市場はこの1週間ぐらい確実に買いの手が伸びてきており、6月は投資家にとって心地よい月となりそうです。

主導している銘柄の一つがテスラで既に13日間連騰です。その間だけで概ね4割程度上げた理由は2つあり、一つはアメリカのEV促進税額控除がモデル3全種が対象となり、一部州ではトヨタカローラより安くなること、もう一つはEVの充電設備についてフォード及びGMと提携し、テスラが既に張り巡らせたテスラ仕様の充電設備でフォード及びGM車が充電できるようになることを囃したものです。

これが何を意味するか、といえばEVが世に出始めた頃は最も保守的な立場だったアメリカが大転換しつつある点です。マーケティングのイノベーター理論で第3段階に当たる「アーリーマジョリティー」の層にシフトしてきたとみてよいでしょう。かつては走行距離が長いアメリカのドライバーにとって充電切れが一番恐ろしいことだったのですが、時間とともにその発想が変わり、今回のフォード、GMとの提携で大きく改善する期待感が高まったといえましょう。

一方、日本の雄、トヨタが全個体電池車を27年から市場投入するというニュースは別の意味でインパクトがありました。充電時間が約10分と短いこと、一回の充電での走行距離が1200キロにも達することは衝撃とも言えます。ただ、全個体電池は各社血眼になって開発を進めており、あと1年以内に追随するところが複数出てきてもおかしくないとみています。つまり、このニュースのメリットはトヨタのみならず、EVメーカーとEV関連業界全体を潤すことになるのでしょう。いよいよディファクトスタンダードの転換点が近づいてきたという気もします。

株式市場はそういう将来への期待に強く反応するものです。今期どれだけ儲かっているか、あるいはどれだけ安定的かというより3年後、5年後に向けてその会社が成長産業にどれだけ投資を行い、化けるのかという観点で投資家は見ています。優勝劣敗であり、EV化に遅れている企業、EVチャージャーの同業者などの株価は渋い状態になっています。

さて、日経平均は終値で33000円を超えてきました。「覚醒した」というのが正直な意見です。ここまでの反応は全く予想できませんでした。では今後もこの調子で上がるのか、と言えば私はまだ懐疑的に見ていますが、市場の反応次第だと思います。少し前にも書きましたが、今、儲けているのは外国人投資家ばかり。しかもロットを稼げる大型株に資金が集中しており、正直、全体の騰落率でみると言う程ではないのです。前回も申し上げたように皆がウハウハになっておらず、個人投資家にうまみが廻ってきていない状態かと思います。よってこれで新興企業へ資金が廻ってくるか、これが判断どころになるかと思います。

33000円を超えてきて久々に思い出したのがダウと日経平均の関係です。連動性があるとされ、様々な分析がありますが、このところあまり話題にならなかったと思います。この連動性はダウが上がれば日経平均も上がり、逆もしかり、という意味なのですが、もう一つのポイントは日経平均とダウが円ドルの違いがあれどほぼ似たような指数値になる点です。つまりダウが現在34200ポイント程度で日経平均が猛烈にそれを追いかけている状態になります。かつて追い越したこともありますが、基本はダウが上です。

と言うことは日経平均は上げてもあと1000円がいっぱい一杯でそこからはダウ次第という見方もできます。もちろん、北米株式市場が強気シグナルになっているので堅調に推移する可能性はありますが、唯一、商業不動産(オフィスリース)と中小銀行の業容が悪すぎて秋にひと悶着ありそうな気がしています。

日銀の定例政策会議では今月は特にサプライズはでないと思われますのでマネー市場は1-2か月は心地よい追い風が吹くとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年6月14日の記事より転載させていただきました。

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