脱毛ブーム、再び過熱の理由…日本人の3割が経験、60代にも普及 トラブル増加


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「gettyimages」より

 今、脱毛ブームが加熱している。昨年12月28日付「NHK NEWS WEB」記事によれば、脱毛エステ脱毛クリニックでの本格的な脱毛処理が人気で、女性に限らず男性からの人気も高く、利用者の年齢層も10代から60代と幅広いという。そこで今回は脱毛ブームが加熱している理由や、ブームによってもたらされる危険性などを、美容医療事情に詳しい東京未来大学准教授の鈴木公啓氏、国民生活センターの安井大智氏に解説してもらう。

今や3人に1人が脱毛経験ありの時代

 どの程度の割合で脱毛経験者がいるのだろうか。

「アデランスが2022年1月から2月にかけて、全国の20代から60代の男女4888名に行った『脱毛に関する全国意識調査』によると、これまで脱毛を経験したことがある人は全体の34.2%となっています」(鈴木氏)

 アンケートによると脱毛の比率は女性が圧倒的に多いようだが、一方で男性からの需要もにわかに高まっているという。

「2023年の2月に私たちがおこなった調査では、コロナ禍において若年男性を中心に脱毛経験者が増えたことが示されています。背景として、時間に余裕ができて自分の姿に意識を向ける機会が増えたことなどがあるようです」

 では、なぜ今、脱毛がここまでブームになっているのだろう。ひとつ考えられるのは、欧米などの海外の脱毛文化が日本にも浸透してきているということだ。VIO脱毛専科エステ「NICOL」を運営するパザパグループが行った在日外国人女性に対する脱毛事情のアンケートでは、53.4%の人が「脱毛をしている」と回答している。

「確かに海外の影響はあると思います。また、もともと日本人は美肌に対する高い関心を持っていたということも関係していると思います。それに加えて服装の変化もあると思います。和装から洋装になり、そしてさらに腕や足などがより露出するような服装をするようになり、人目にさらされる部分の体毛を意識するようになったという経緯も関係があると考えられます。」(鈴木氏)

 国民生活センターが昨年11月30日に発表した「成年年齢引下げ後の18歳・19歳の消費者トラブルの状況」によれば、2022年は脱毛に関するトラブルでの相談が顕著だった。

「昨年は脱毛エステに関する相談件数が1万8990件にも上っています。トラブルの発端としては、『友人の紹介で脱毛エステに行った』『インターネットで広告を見て行った』というものが散見されたのが特徴ですね」(安井氏)

 海外における脱毛文化がテレビやSNSのインフルエンサーなどを通して若い世代に広まり、さらに人気の高まりを受けて無数の脱毛エステがインターネット上で広告を打ったことがブームに拍車をかけた、という見方ができるかもしれない。

脱毛ブームの拡大で起きる悪質業者とのトラブルの実態

 だが、このような脱毛需要の高まりは、危険なトラブルも多く生んでいる。

「国民生活センターに20代の男性から寄せられたトラブル事例では、SNSで『ひげ脱毛が月額約1000円、全身脱毛が約3000円』とうたう広告を見て脱毛エステに足を運んだところ、ひげや脱毛をしたい部分を選べる約50万円のコースを勧められたそうです。男性は広告にあったひげ脱毛を受けたいと申し出たところ、『納得のいく脱毛をする場合はこれくらいの料金がかかる』と言われてしまい、つい契約してしまったということでした。しかも提示されたクレジットの分割払いは36回払いで、さらに分割手数料が付き、けっきょく総額はさらに上がり、なんと約60万円になってしまったそうです」(安井氏)

 鈴木氏は、こうした脱毛サロンに消費者が夢中になる背景には、とある心理があると分析する。

「広告やSNSにより脱毛についての情報が周りにあふれたことで、これまで以上に脱毛を意識するようになったと考えられます。さらに、その影響をうけて脱毛を経験する人が周りにいたとしたら、『自分もしなければならない』と考えるようになってしまうこともあるでしょう。そうして脱毛をすると、さらに周りの人が影響を受けて脱毛をするかもしれません。脱毛ブームの背景にはこのようなことが生じている可能性があります。他の装いにもいえることですが、友人や家族といった周囲の人の影響で脱毛をおこなう人は少なくないと思われます。

 気をつけなければいけないのは、脱毛することが正しいこと、となってしまうことです。今後脱毛する人が多数派になり、脱毛があたりまえとなってきた場合に、脱毛をしないことに対してネガティブな評価がおこなわれるようになるのは問題だと考えられます」(鈴木氏)

 詐欺まがいの広告や強引な勧誘で客を集める悪質エステが増えている脱毛業界だが、ブームは今後も加速していくのか。

「今後も脱毛ブームが続いていく可能性はあると思います。脱毛も装いの一つであり、自分磨きの楽しみという側面もあると思います。ただし、それがあまりにも『しなければならないもの』となるのも不健全だと思います。脱毛をするかしないか個人が自由に選択できるような社会であることが望ましいと思われます」(鈴木氏)

 では、トラブルへの予防策とは。

「低価格をうたった広告を鵜呑みにしないこと、あとは強引に契約を迫られてもきっぱりと断ることが大切です。万が一納得できない契約を結んでしまった場合は、一人で悩まずに消費生活センターなどにお気軽に相談してください」(安井氏)

 日本人の価値観に馴染み、近年インターネット広告やSNSを通じて浸透が進んでいる脱毛文化。周囲に流されない自分の意思と、悪質業者に騙されない危機意識をしっかりと持ったうえで、自身も脱毛をするか否かを検討してもらいたい。

(文=A4studio、協力=鈴木公啓/東京未来大学こども心理学部准教授)

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