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はじめに
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自然をすべて手に入れる 神奈川県湯河原町
(3yk)
当たり前だと言うかもしれないが、果たしてそのさまを本当に見たことはあるだろうか。この先に、本当に海はあるのか。 と、湯河原町の幕山、梅が咲き誇る山のふもとで私は熱弁したのだった。 酔っ払っていた。大学時代の友人たちと梅の花を見、山頂まで歩き、ほどよくからだが疲れたところでカップ酒を手に入れ、通りすがりの地元の人にもらった甘いくだもの(なにか覚えていない)をカップ酒に漬けてさらにおいしくって、それはもういい気分だった。
山を登り花を堪能した今、これから川をたどって広い大海原まで歩いていけたらどんなに素晴らしいことだろう。自然のすべてを手に入れたといっても過言ではない。たしかそんなことを捲し立てて、6人は一列になって大通りを外れ、川沿いの小道へと進んでいったのである。
そこから先は野良猫になったような心持ちだった。左手側に川を見ながらとにかく道を進む。川はいかにも山間を流れる川ですよというごつごつした雰囲気から、次第に両脇をコンクリートで固められた良い子ふうな水の流れに変わり、対してわたしたちが歩く道は次第に細く狭く、知らないまちの隙間を行く。
6匹の野良猫は都度作戦会議を開きながらなるべく川に沿った道を進み、川の水はどこから塩っぱくなるのか想像を膨らませていた。 結論から言うと、川の水はどこまでいっても無味であった。 ゴオゴオと車の行き交う音が大きくなる頃、川は唐突に海へと繋がった。 さっそく川と海の境目に走り寄って、水を舐める。川側、うん、塩っぱくない。海側、うん、塩っぱい。ちょうど境目は海の味が薄まっただけのような、なんとも感慨のない味だった。
なんだ、川の水がだんだんと塩っぱくなるのではなくて、海から塩っぱい味がくるだけなのか。でも海の向こうにあるのはまたいくつもの川だ。じゃあ塩味はどこからやってくるのだろうか。
野良猫たちは一旦問いを忘れ、大いに砂浜で遊び、いくつか気に入った石をポケットに仕舞って、電車に揺られて帰った。神奈川県の海岸は色形が珍しい石が多くて、電車が海岸のすぐそばを走るから大好きだ。 海の塩味、そういえばあれきり調べもせずに数年が経ったな。
終わってふたたび解説です
3ykさんが湯河原町を紹介してくれました。通りすがりの地元の人にもらった甘いくだものをカップ酒に入れて飲んでいたそうです。昔からコミュニケーション能力が高かったんですね。
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