6mの棒にカメラを付けると、ほぼドローン

デイリーポータルZ

地上7mくらいの視点です。もうドローン視点と言っていいと思います。

東京23区内の屋外でドローンを飛ばせる場所はほとんどない。200g未満のトイドローンですらなかなか飛ばせないのだ。しかも、2022年の6月からトイドローンですらいろいろ規制されてしまい、ますます飛ばせなくなってしまう。

そこで棒を使うことにした。棒は人類が初めて使った道具だからだ(たぶん)。人類500万年の長い付き合いである棒が、ドローンなんていう新参者を凌駕するのは当たり前だろう。

2022年は棒復権の年である。

棒までのあらすじ

僕は重さ200g未満のトイドローンを2機持っているのだけど、東京に住んでいると飛ばせる場所が非常に少なく、飛ばせる場所でもなにかと面倒です。

どっちも2022年1月現在はトイドローン。6月からは右のがトイドローンではなくなるので、国交省のWebサイトで機体登録した。

高いところから撮った写真や動画は面白いんですが、ドローンはなかなか飛ばせない。飛ばせる場所でも音がうるさいなどで嫌がられます。

そこで、棒を使うことにしました。棒を使えば、ちょっと高いところから撮影できて愉快なはず。まず家にあった150cmの旗振り棒にカメラを付けてみることにしました。

Amazonで500円くらいの旗振り棒。

本来は旗をつけて振るための棒ですが、伸び縮みする棒としては安かったので買った物でした。でもただの棒なのでカメラを付けるには一工夫必要です。

先端が球。ここにカメラを付けたい。

先端の球を三脚のネジ(1/4インチネジ)に変換するアダプターを、毎度おなじみ3DCADで設計して3Dプリンターでプリントして付けました。

先っちょ球to1/4インチネジ変換アダプタ~。

小さいカメラを付けてみるとこうなります。

蝶ネジで球を締め付けて固定するので、雲台みたいに角度を変えられる。

 手に持ってみると、これくらいのスケールになります。

150cmの棒を伸ばして手に持つと3.5mくらいの高さから撮れる。

普通と150cmの棒の視点の違い

写真で比べてみましょう。

これが普通の高さ。地面から150cmくらい。

150cmの棒にカメラを付けて手に持つと、地上から3.5mくらいになります。

ちょっとだけ視点が高くなりました。でも、まだ低い?

なかなかいいかも?と思ったのもつかの間、あっという間に欲が出てしまい2.5mの旗振り棒を購入しました。これはAmazonで1500円くらい。

これも先っちょ球to1/4インチネジ変換アダプターを付けました。

最大に伸ばして手に持つと、先端は4.5mくらいの高さになります。

かなりの高さになりました。
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良いけどたわむ

4.5mはけっこう高いんですが、棒を伸ばすと先端がしなります。先っちょが遠ければ遠いほど先端がしなるのは仕方ないこと…と思ったんだけど、あまりしならない棒を見つけました。

Insta360純正の3m自撮り棒。お値段なんと定価で13,200円。これまでの棒の10倍とか26倍のお値段。…しばらく意識を失っていたら買ってました(ブラックフライデーで10%オフでした)。

重さ365g。仕舞寸法36cm。買ったあと、仕舞寸法が少し長い(56cm)けど、もうちょい軽くて(225g)安い(6400円くらい)Insta360純正の3m棒があることに気が付きました。​​​​仕舞寸法が少し長いし、きっと酸っぱい。(キツネ脳)

3mあるけど高いだけあってしっかりした作りであり、伸ばしてもほとんどたわまず、しかもカーボンなので軽い。そして、もともと自撮り棒なので変換アダプターを作る手間もなくカメラを付けられます。

高いだけありました。金はすべてを解決します。世の中、なにごとも金です。どっかに10億円くらい落ちてないかな。お金、欲しいですね。

5mの視点を手に入れた。剛性がありつつ片手で持てる軽さ。素晴らしい棒。

150cmの棒で地上3.5mだと、「確かに高いけどそれほど?」って感じだったのが、3mの棒で地上5mになると明らかに高さを感じます。

橋が小さく見えてきました。

もっとだ!モアー!モアー!もっと高く!

人類の欲に限りはありません。特別だったものは一瞬で風化して普通に相転移します。これこそが人類を月にまで送った原動力。バベルの塔を建てた、僕たちの欲と業。

6mまで伸ばせる棒を買いました。

魚釣りに使うタモ網の柄です。Amazonで6,500円くらい。クライミングの先輩が「長い棒って言ったらタモ網だよ」って言ってました。​​

タモ網の柄のパラメーターは『重さ、伸長時の長さ、仕舞寸法、価格』の4つ。これらを見比べて仕舞寸法76cm、重さ550g(ベルト込み)で6,500円の棒にたどり着きました。

仕舞寸法が短いけど重い、軽いけど高いなどいろいろあった中で選びました。他にもっと良いのがあったとしても悔しくなるだけなので、 僕には教えてくれないで下さい。

ネジの変換アダプターをプリントした

タモ網の柄はタモ網用なのでタモ網とは互換性があるけどカメラの三脚ネジ(1/4インチネジ)とは互換性がありません。カメラを付けるには変換アダプターが必要です。

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1/2インチネジという規格で、1/4インチネジの倍らしい。M12という規格のタモ網もあるらしいけど、これは1/2インチ(12.7mm)でした。

で、こんなものをこさえました。1/2インチメスネジと1/4インチオスネジを繋ぐ変換アダプターです。

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下が1/2インチネジで、上が1/4インチネジ。モデルデータはコチラ。ネジが入らなかったらSTLデータを修正したりプリント後に削ったりして下さい。

ガッチャンコするとこうなります。

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これで先っちょにカメラを付けられるって寸法です。

ついでに、両手で棒を持った時でもスマホでカメラの映像を確認しやすくするアダプターもこさえました。

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3Dプリンターが無いなら自転車用のスマホホルダーなどを使うといいと思います。

カメラの画像を手元で確認しながら撮影出来るようになりました。

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スマホ対応のアクションカメラが便利です。手元でリアルタイムに映像を確認できる。

6mの棒、すげぇ

今までの棒と比べてみると、6mのタモ網棒がどんだけ長いか分かります。 

縮めた状態で並べてみる。すでに圧倒的に長い。そしてこれら棒の合計金額を計算してはいけない。正気に戻っっちゃうから。

下の写真は伸ばした状態。6m、なっが!

一気に倍だからね。すごい長さ。古代マケドニアのファランクス隊を想起させる6m。

伸ばして立ててみると、こう。

長くてウケる。地上7mの視点をゲット。

もう片手じゃ持てないので両手で持ちます。変換アダプター込みで重さは600g程度ですが、伸びるとテコ的なアレで重く感じます。棒の下端をお腹に当て、腰を入れて支えると楽です。

でもって、棒の先にカメラを付けてみると圧倒的高さ。ドローンと言ってもいいのでは?

進撃の巨人で言うと、7m級の中型巨人の視界がこれくらいになります。

比較動画

手に持ってる状態から6mの棒で撮ったものまで、段階的に上がっていく比較動画を作ってみました。

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カメラは軽ければ軽いほどいい

6mまで伸ばすと棒自体の重さもすごいことになるし、さらにその先に付けるカメラが重いとさぁ大変。まず重いし棒がしなっちゃう。だから先っちょにつけるカメラは軽いやつにしました。

これ。

Insta360 Go2 32GB。1年くらい前に買って、たまたま今回役に立った。最近、容量が2倍の64GBのが発売されました。悔しくないもん。

ケースにカメラ本体が収まってる感じで、ケースに入れたままでも使えるし、ケースから出してカメラ単体でも使えます。 

分離型アクションカメラ。カメラ本体は防水でけっこう頑丈。アルパインクライミング中に岩場で10mくらい落としたことがあるけど壊れなかった。

ケースは、ケースでありリモコンであり充電器であり三脚ネジ付きだったりします。

このケースがとにかく秀逸。折りたたみの足もあって三脚として自立もする。

メモリやバッテリーは小さいのですが、その分しっかり軽くてとても良い感じです。6mの棒の先につけるために作られたカメラといっても過言ではありません。(過言です)

ケースと本体で89g。軽い。 

ケースから出して本体のみにすると超絶軽い。

カメラだけだとおどろきの26g。

このカメラと棒を使ってドローンっぽい映像を撮れないか試みてみました。 

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棒でも注意は必要だなと思いました

外で撮影してみて、いろいろ課題も見つかりました。まず、棒の操作を誤ると事故になってしまいます。人や物にぶつかったらけっこう大変。

今のところ棒はドローンのように規制はされていません。少なくとも公園などで棒が規制されてるのは見たことありません。でも、だからって無茶をしてるとドローンと同じ様に規制されかねません。

棒が社会の敵になり、棒を規制せよ!なんてことになったら困ります。だから、まだ棒愛好家が少ない今だからこそ自主規制が必要だと思いました。

・周りの人に配慮し、人混みやイベント会場など、人が多い場所では棒を伸ばさないこと。
・重要施設やプライバシーを侵害しそうな住宅、施設の周りで棒を伸ばさないこと。
・周りをよく見て、必ず棒の行き先を目で追って安全を確認すること。
・棒の長さは6m程度までを推奨。10m超えは無謀。棒が150mを超えると航空法の範囲に入る可能性があります。(御冗談)

写真 2022-01-03 11 14 18.jpg
棒撮影の様子。青い服が筆者。棒を6mまで伸ばし、棒の下部はクライミングのハーネスに当てて保持している(応援団の旗的な持ち方。棒を支えながら魁!!男塾の極小路秀麻呂を思い出していた)。両手でしっかり支えます。

特に安全に関して配慮が必要です。

・飲酒をしたら棒を伸ばしてはいけない。
・電線その他、頭上によく注意して棒を引っ掛けないようにする。
・スマホの画面や上にばかり気を取られていると足元への注意が疎かになるので足元もよく見る。上やスマホを見ながら棒を持って歩かない。歩き棒スマホは非常に危険。
・自転車や自動車、バイクなど乗り物を運転しながらの棒運用は避ける。
・悪天候時は落雷の可能性があるので棒を立てない。特にカーボン棒は危険。
・棒と同じ長さの半径内に他人がいる場合は、いない場所に移動するか許諾を得る。
・棒はできれば両手で支える。自分の力に応じて無理のない長さと重さの棒を選ぶこと。
・重いものを先端に付けると操作が難しくなるので、一眼レフなどを付けるのは禁止。小型のアクションカメラがおすすめ。

以上。 2022年1月5日 日本棒協会(NBK)

棒の安全運用のために、いずれ棒スクールの開校や棒検定、棒ライセンス、棒操作技術者の育成、棒の機種とシリアル番号の登録なども必要になってくるかも知れません。(与太話)

以上を守って、棒撮影を楽しんでいただければ幸いです。6mの棒は、いいぞ。下の動画は6mの棒で撮ったものです。

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エンジョイ、棒。

NBKでは棒の安全運用を研究していきます

棒スクールとか棒の登録とかは御冗談ですが、棒撮影で事故とか起こると普通に「棒を禁止せよ!」ってなりかねないのが今の日本です。そうなったら嫌なので、特に長い棒を使って撮影する時は安全に留意して下さい。

棒撮影自体はとても楽しいし、手軽に騒音もなくドローンで撮ったような映像を撮れるのは愉快です。何よりドローンのように禁止されていないのがいい。

これからも、安全で効果的な棒の使い方を研究していきたいと思います。以上、第1回日本棒撮影協会特別研究報告でした。

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