テレワークによって会社と自宅を行き来しながら仕事をしているが、これに出張が加わると、さらに面倒なことになる。ファイルをノートPCなどに持ち出して作業していると、出張後にうっかり新しいファイルを、古いファイルで更新しかねない。
……この記事を書いている時点で、新型コロナが5類に移行されて25日が過ぎた。
私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回は移動中にChromeリモートデスクトップを使って作業をすると、どのぐらいのデータ通信量が発生するかテストしてみた。
5月29日(月): 10分間のリモート原稿制作にかかったデータ通信量は……
今週は出張で東京を離れることに。新幹線の中で空き時間ができたので、ノートPCで原稿の続きを書こうと思ったのだが、ファイルを自宅に置いてきたことに気が付いた。こういうときには、Wake On Lanやスマートプラグを利用して、自宅のデスクトップPCを起動。さらに、Chromeリモートデスクトップを利用して、ファイルを何らかの方法で送るという手もあるが……。作業中のファイルが自宅とノートPCの2つに分かれてしまい、世代管理の手間が増えてしまう。
そこで、今回はChromeリモートデスクトップを使って、自宅のPCにある原稿ファイルを遠隔操作で開き、そのまま原稿を書いてみることにした。ただ、そうなると今度は原稿を書いている間はずっと、Chromeリモートデスクトップによる通信が行われることになる。
Chromeリモートデスクトップでの遠隔操作中は、ホスト側(操作される側)のデスクトップ画面の様子をインターネット経由で受信するとともに、ゲスト側(操作する側)の操作内容が送信されている。フリーWi-Fiを使える場所ならよいが、スマホのネット回線をテザリングして使っているときは、どのぐらいの通信が発生しているのか気になって仕方がなかった。
ということで、「NetWorx」というフリーソフトを使い、10分間の作業中にかかった通信量を測定したところ、上りで1.7MB、下りで41MBのデータ通信が発生していた。書きかけの原稿ファイルをChromeリモートデスクトップ経由でノートPCにコピーしていれば、1MB程度の通信しか発生しなかったので、どうやら無駄にギガを消費してしまったようだ。
ちなみに、ChromeリモートデスクトップでホストPCに接続した状態で、何もしないまま10分間放置した場合の通信量は上りで1.5MB、下りで36MBだった。このため、10分間のキーボード操作で上りに+0.2MB、テキスト入力によってデスクトップ画面の表示が変化した分だけ受信に下りに+10MBのデータが送受信されたことになる。
【Chromeリモートデスクトップを10分間使用】
無操作時 上り1.5MB/下り36MB
原稿の作成時 上り1.7MB/下り41MB
その後、貯まったメールをChromeリモートデスクトップ越しで確認したのだが、どれだけ大容量の添付ファイルがあっても、通信量が増えないのはプラスだと思う。ただ、そのファイルを表示するなどして、画面の表示が大きく変わると、とたんに下りの通信量が跳ね上がった。
自宅のPCにしかないアプリを使うなどのケースをのぞけば、普通のデスクワークはデータを移動して手元のノートPCで処理した方が、データ通信量を節約できそうだ。
5月30日(火): サイトのリモート表示にかかったデータ通信量は……
モバイルでネット通信を利用する作業のひとつに、Google Chromeなどのブラウザーを使ったサイトの閲覧がある。掲載されている画像の多いページなどでは、それだけデータ通信量が増えるが……、これをChromeリモートデスクトップ越しに行うとどうなるか? 実際に試してみたのが以下の結果だ。
【INTERNET Watchのページを表示】
ローカル 上り500KB/下り6MB
リモートデスクトップ経由 上り665KB/下り250MB
Chromeリモートデスクトップ経由でサイトを閲覧していると、ページをスクロールして画面表示を移動させた際に、下りの通信量がガリガリと跳ね上がった。やはり、テザリングでChromeリモートデスクトップを利用しているときには、遠隔表示しているデスクトップ画面の表示が大きく変わるような操作はNGらしい。
5月31日(水): 音楽のリモート再生にかかったデータ通信量は……
Chromeリモートデスクトップでは画面の表示を変えると、それだけデータの通信量が増えるというのは良く分かった。ならば、“音”の通信では、どのぐらいの量のデータ通信が行われるのか? ローカルでSpotifyを再生した場合と、Chromeリモートデスクトップ経由でiTunesの音楽を再生した場合、それぞれにかかったデータ通信量を調べてみた。
【10分間音楽を再生】
Spotify 上り529KB/下り17MB
リモートデスクトップ経由 上り1.6MB/下り44MB
Chromeリモートデスクトップを使った場合、無操作時には下り36MBの通信が発生していたので、音声の受信にかかったデータ量は8MBということになりそうだ。
Chromeリモートデスクトップを使えば、自宅PCのiTunesで管理している音楽ライブラリにアクセスできるが……、やはりデータ通信量ではSpotifyを上回った。iTunesでは音楽ファイルがm4a形式で圧縮されているので、1曲あたりのファイル容量は数MB。ダウンロードしてローカルで再生したほうが、データ通信量を節約できそうだ。
ちなみに、Chromeリモートデスクトップで再生操作を行うと、当然のことながらホスト側のPCでも音楽が再生されることになる。このとき、ホストPCでミュートの操作を行うと、ゲストPCでも音が鳴らなくなるので注意したい。
6月1日(木): YouTubeをリモート視聴した場合のデータ通信量は……
Chromeリモートデスクトップでは、言ってみれば“デスクトップ画面の様子”という動画を常にダウンロード再生していることになる。さらに、この状態から“YouTube動画の再生”を行った場合、データ通信量はどうなるか? ローカル・ホストの両PCで実際に計測を行ってみた。
【10分間YouTube動画を再生】
ローカル 上り1MB/下り65MB
リモートデスクトップ経由 上り2.7MB/下り368MB
動画のダウンロードがホストPCで行われているので、両者に差が付きにくいかと思ったのだが……。その表示範囲を超えるデスクトップ全体を動画配信しているChromeリモートデスクトップの方が、データ転送量で圧倒的に上回った。やはり、画面が目まぐるしく変わるようなウィンドウは、Chromeリモートデスクトップでは表示してはいけないらしい。
なお、この状態でゲスト側のChromeリモートデスクトップのウィンドウを最小化してみたが、その場合にもホスト側のデスクトップ画面のデータが常に送られているようで、データ通信量に変化はなかった。これはiTunesで音楽をリモート再生しているときも同様で、どうやらBGM代わりに音だけを受信するような使い方はできないらしい。
6月2日(金): ホスト側に複数のディスプレイを接続すると、データ通信量が変わる?
これまで行ってきた操作では、自宅のデスクトップPCをホストとして、そこにノートPCからリモート接続していた。ここで気になったのが、自宅のデスクトップPCのディスプレイ環境。4KとフルHDの2台のディスプレイを接続しているので、それだけリモート操作時のデータ通信量が増えていたような気がする。
そこで、フルHDディスプレイ1台だけをデスクトップPCに接続した場合、Chromeリモートデスクトップで行われる通信量が変化するかをテストしてみた。
【フルHDモニターのみデスクトップPCに接続した場合】
リモート放置 上り1.1MB/下り33MB
リモート原稿制作 上り2.0MB/下り39MB
リモートサイト閲覧 上り451KB/下り69MB
リモートiTunes再生 上り1.6MB/下り44MB
リモートYouTube再生 上り2.4MB/下り186MB
放置やiTunes再生ではデータ通信量に大きな変化がないが、サイト閲覧などの画面表示が大きく変化するシーンでは、ディスプレイ1台の方がデータ通信量をかなり節約できた。出張などで会社や自宅を長期間離れるときには、ディスプレイの電源を1台落としておいた方が、Chromeリモートデスクトップ利用時のデータ通信量を削減できそうだ。
とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。