突然だが、あなたは他人の胸ぐらを掴んだことがあるだろうか? これ、無い人は無い経験だと思う。他人の胸ぐらを掴まないまま一生を終える人だって普通にいるに違いない。
事実、私(中澤)が、これまで41年の人生で他人の胸ぐらを掴んだのは1度だけ。人生たった1度の胸ぐら掴み。その相手は、何を隠そう現在話題の中田敦彦さんである。
・同学年
お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」でデビューし、現在はYouTuberとしても知られる中田さん。私が仕事でお会いさせていただいたのはダンス・ボーカルユニット「RADIO FISH」の『PERFECT HUMAN』が話題になっていてノリにノッている時であった。
私と中田さんは同じ1982年生まれ。私からすると、オリエンタルラジオは同年代のヒーローだった。不遇の時代もオールナイトニッポンは聞いていた。今でも、「1番好きだったラジオ番組は?」と質問されたら、迷いなく「オリエンタルラジオのオールナイトニッポン」と答える。
・中田さんに取材
特に、中田さんの斜に構えてるけど自分の情熱までは無視できずに結局真っすぐぶつかってしまう感じが大好きだった。自分もそうだったから。多分、今より少しだけ世の中に期待していたし、信じてもいた。あれは、エヴァンゲリオンに育てられた我々の世代が共有している気持ちだったんじゃないかなあと思わなくもない。
さて置き、そんな勝手な共感を抱くくらいの人物だったゆえに、取材の時、私は震えた。あの中田さんと私の人生が交わることがあるなんて……!
・胸ぐらを掴みたい
質問も全然うまく回せない。しかし、曲がりなりにもロケットニュース24の記者として来ている。この記事がスベったら中田さんにも申し訳ない。そこで、他メディアがインタビューで絶対やらないような写真を撮影させてもらうことに決めた。
話しながら「胸ぐら掴みたいな」と思っていたのだが、いざ、中田さんに言うとなると、このアイデアをなんて打診したらいいのか分からない。初対面で「胸ぐら掴まさせてもらっていいですか?」って言ったら不機嫌になる人は結構いそうだからだ。
・中田さんが何言ってるのか分からなくなる
しかも、中田さんは今、タキシードを着ている。こんなピシッとした格好してる人になかなか「胸ぐら掴まさせてもらっていいですか?」とは言えない。謙譲表現にしたら失礼じゃなくなるだろうか。胸ぐら掴まさせていただいてよろしいでしょうか? いや、そういう問題じゃないな。
頭の中がぐるぐる回りすぎて、もはや中田さんが何言ってるのかもわからない。蒲田行進曲? なんの話でしたっけ? そこで意を決してそのまま言ってみた。すみませんが、胸ぐら掴ませてもらっていいですか?
・事件
「いいですよ」と一瞬にして受け入れる中田さん。全く動じないところが逆に怖い。良いって言っといて掴んだら洒落にならない何かが起きてしまうのではないか?
しかし、準備は整ってしまった。もう逃げることはできない。じゃ、失礼して……と恐る恐る胸ぐらに手を伸ばしたその時! 事件は起きた!!
タキシードってどうやって胸ぐら掴むんだろう?
タキシードの襟ってストンと落ちているからどこを掴んだらいいかが分からない。かと言って、蝶ネクタイを綺麗に締めている首元を掴むのはさすがに忍びない。胸ぐらを掴むのが初めての人の悩みがそこにあった。
・お礼を言えた
何でもやってみないと分からないものである。というわけで、協議の末、タキシードの襟の首元辺りを掴むことに落ち着き、無事、撮影することができたのであった。
挨拶段階からファンであることを伝えていた私。取材が終わったタイミングで、もう1度握手しながらお礼を言ったところ、中田さんは返す言葉でこう言った。「励みになりました。また、会える日を楽しみにしてます」と。
・色んな芸能人に会ったけど
励みになったのはこちらのセリフである。記者になって1年経った頃くらいにあったこの取材。あれから7年が経ち、色んな芸能人に会ったが、最もフラットに接してくれた人物のような気がする。
初心を忘れないためにも、その画像はTwitterアカウント(@sorekara_jona)のヘッダーにしている。ネットの声は好感度に左右されがちだ。そして、好感度はテレビが支配しがちだが、テレビもネットも本来は敵同士ではないと思う。
ゆえに、私は自分の目で見たことを信じようと思っている。また会える日を楽しみにしています。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.