TikTokの親会社であるByteDanceの元幹部で、2018年に同社を解雇されたインタオ・ユー氏がサンフランシスコ高等裁判所に不当解雇訴訟を起こしました。ユー氏は「ByteDanceが中国共産党員に特別な権限を与えて監視を許していたことを問題視したところ、上司に解雇された」と主張し、ByteDance内部の問題を赤裸々に語っています。
Former ByteDance Exec Claims TikTok Ripped Rival Content And Granted CCP A Backdoor | HotHardware
https://hothardware.com/news/former-bytedance-exec-claims-tiktok-ripped-rival-content-granted-ccp-backdoor
TikTok parent ByteDance sued by former California executive alleging China had ‘supreme access’ to all data | Fortune
https://fortune.com/2023/05/13/tiktok-bytedance-lawsuit-california-executive-china-access-data/
裁判所に提出された訴状の中で、ユー氏は「会社の違法行為について上司に進言したところ、エンジニアリング責任者の職を解雇されてしまった」と述べています。
ユー氏によると、ByteDanceはInstagramやSnapchatを含む他のプラットフォームから著作権で保護されたコンテンツを盗んでTikTokに投稿したり、ボットを作成してアプリの指標を水増ししたりしていたとのこと。こうした問題についてユー氏がアルゴリズムを担当する上級スタッフに進言したところ、上司は「大したことではない」と述べて意見を受け入れなかったそうです。
また、ユー氏はByteDance内に「委員会」と呼ばれる中国共産党員からなる部隊があったとも主張しています。この部隊は、TikTokなどのByteDanceのアプリを監視し、共産主義の中核的価値をどのように進めるかを指導するなどの権限を持っていたとユー氏は指摘。さらに、中国版のアプリを瞬時に終了できる「キルスイッチ」を所持していたとされています。
ユー氏によると、「委員会」はByteDanceから特別な権限を与えられ、アメリカに保管されているデータも含めて、ByteDanceの全データへのアクセス権限を持っていたとのこと。TikTokはこれまで「アメリカのデータはアメリカで管理される」という主張を続けていましたが、ユー氏の主張はこれに反しています。
ByteDanceは、この申し立てを「根拠がない」とし、精力的に争う姿勢を見せています。ByteDanceの広報担当者は「我々は他社の知的財産を尊重することを約束し、業界の慣行と当社のグローバルポリシーに従ってデータを取得しています」と述べました。
ByteDanceが所有するTikTokは、親会社が中国に拠点を置いていることから、アメリカやヨーロッパ各国から厳しい監視の目が向けられています。アメリカではTikTokを制限または禁止する法案が複数の州で提出されており、2023年3月にはTikTokのCEOが初めて公聴会に出席して議員らの質問に答えています。
TikTokのチュウCEOがアメリカの公聴会で証言しデータ流出疑惑について回答 – GIGAZINE
CEOは上記の公聴会において、中国の従業員がアメリカのユーザーデータにアクセスできるのかという質問に「複雑な問題だ」「そのようなことが起きている証拠を見たことがない」と回答して議員らの嘲笑を誘いました。中国政府とのつながりが指摘されるTikTokですが、実際にユーザーデータを政府が閲覧したとの証拠はなく、同じようにユーザーデータを収集するFacebookやTwitterなどは規制対象になっていないことから、外国企業を排斥し、アメリカの利益を高めながら影響力を広げる反グローバリズムの問題であるとの指摘も行われています。
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