清水建設は5月8日、劇場などで行う公演の事業性を評価するシミュレーションシステムを開発したと発表した。
同社では、「劇団四季」の興業運営を行う四季の協力を得て、同システムの有効性の検証に着手したという。
検証にあたっては、システムのベースに据えている3次元の竣工BIMにより、四季が上演する演目のシーンを精緻に再現したバーチャルな劇場空間を構築して事業性を評価。評価結果とリアルな実演空間での評価を共同で照合していくという。
なお、事業性の評価では、舞台空間での演目の実現性(セットの収まり)の確認と、客席空間での視認性による販売席のグレード設定の2つが主な対象となる。
興行主は、新たな演目に取り組む際など、必要に応じてその事業性の評価を行うが、舞台空間・客席空間のいずれの評価とも2次元図(平面図と断面図)上で行うため、膨大な手間と時間を要しているという。
同社は、設計者が製作するBIMデータについて、建物の運用段階に至るまで、一貫活用・展開するプラットフォーム「Shimz One BIM」を構築。生産性の向上に努めているという。
同社によると、運用段階で活用する竣工BIMについては、出来上がった建物の3次元形状が納められているため、同データを活用した新たなビジネス展開を模索していたという。
そうした中、竣工BIMを活用することで興行主による事業性評価を代替できると考え、劇場の工事を発注した四季の協力を得て、シミュレーションシステムの有効性の検証に着手した。
同システムによる事業性の評価手順では、竣工BIMデータをカスタマイズし、舞台形状や個々の座席の位置などを精緻に再現したバーチャルな劇場空間を構築。続いて、演目の複数のシーンについて、舞台装置や大道具、小道具、俳優の立ち位置などを3次元でモデル化し、構築したバーチャル空間に取り込むという。
演目の実現性は、モデル化したシーンをバーチャルな舞台上に重ねることで検証。客席空間の視認性は、各座席に着席した観客の視線で舞台上の任意の位置に設ける複数の視対象物を眺めて可視・不可視を検証する。
所要時間はいずれも数十秒程度だとしており、バーチャルな劇場空間は客席からの視認性に限らず、音響の聞こえ方、照明の明るさなどの評価にも対応するため、新築する劇場の計画・検討にも活用できるという。
今後は、システムの有効性の検証を経て、同システムによるコンサルティング業務を展開する。また、四季では、同システムにより事業性の評価業務の合理化を図っていくとしている。