最初、この企画の趣旨を聞いた時、内心どうしようって感じていた。
というのも、私はもともと「一人で食べないようなものを一人占めして食べる」を日常的に、自主的にしている自覚があったのだ。
あらゆる大人買いを楽しんできたいま、まるごと一人占めしたい食べ物ってなんだろうか。
ひとつ思い当たったのが、ヨックモックのシガールだった。
愛されてやまない青山のお菓子・シガール
たくさんの人に愛されまくっているため、説明不要の可能性もある。だけど説明はしておこう。シガールとは青山のお菓子ブランド「ヨックモック」が作り出した、バターたっぷりロール状のクッキーだ。
生まれてからこれまでの間、シガールは私にとって「出先でごくたまにもらえる、品のあるおいしいお菓子」という位置付けだった。
一度だけ買ったことがあったが、自分のためではなかった。去年の1月末、勤めていた会社を辞める際、置き土産として買ったのだ。
当時、紙袋に丁寧に入れられたシガールの箱を受け取りながらひっそりと思っていた。
「このままぜんぶ、すべてを私だけのものにしたい。」
だけど、ありったけの理性を込めてその気持ちにフタをした。
そして時を経ていま、私の前には、あの日必死の思いで別れを告げたシガールの地平が広がっている。うれしい。とてもうれしい。
だけど、裏側に貼られたシールを見た瞬間にシュッ……と現実に引き戻された。1本あたり58kcalなのだという。
あすけんねえさん(※)に正直に報告したらきっと泣かれる。
※「あすけん」という食生活記録・改善アプリ内に頻繁に登場するAI栄養士「未来(みき)さん」のこと。入力した食事の内容がひどいと、泣くことがある。
いや、あすけんねえさんが泣かなくても、私の胃腸が泣き出してしまう可能性もじゅうぶんにある。
各所で悲しみの涙がこぼれてしまわないように、持続可能性のある方法で挑戦するのがいいだろう。
朝、食べるのがいい
持続可能性のためにはまず、食べるタイミングが肝心だ。
夜と朝だったら、間違いなく朝がいい。朝とったカロリーのほうが、寝るまでの間に消費されやすいはずだから。
改めて食べてみると、ああなんと、てっぺんからつまさきまで、バターの風味が強いお菓子なんだろうと思い知らされた。ほぼバターではないか、君。
ひとり自宅でそっと食べていると、会社とかでもらって食べていたときの数倍くらい、じっくり観察してしまうことにも気がついた。
これが、あと29本もうちにあるってまじなのかよ……。我が家にはいま、ものすごい奇跡が舞い降りている。
必ずしも家で食べる必要はない
ところでシガールは袋のまま持ち歩くとボロボロになりがちだ。私もこれまでに何度か、鞄のなかで悲しい姿にしてしまったことがある。
とはいえ、対策さえすれば持ち運びだってできるはず。100円ショップに走り、道具をそろえてみた。