コロラド州のジャレッド・ポリス州知事が2023年4月25日に、アメリカ初となる「農機具を修理する権利に関する法律」に署名しました。これにより、コロラド州の農業従事者は2024年1月1日から自分で農業機械を修理したり、メーカーを通さない独立した修理業者に修理を依頼したりできるようになります。
Boosting Colorado’s Strong Agriculture Industry: Governor Polis Signs Bipartisan Legislation Into Law | Colorado Governor Jared Polis
https://www.colorado.gov/governor/news/9991-boosting-colorados-strong-agriculture-industry-governor-polis-signs-bipartisan
Colorado governor signs tractor right-to-repair law opposed by John Deere | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2023/04/colorado-governor-signs-tractor-right-to-repair-law-opposed-by-john-deere/
「修理する権利」とは、電子機器などの製品を購入したユーザーが、メーカーの修理サービスや代理店を介さずに自分で製品を修理できる権利のこと。EUやアメリカでは、この権利を保証するためにメーカーに修理用の道具や部品の供給を義務づける動きが強まっており、これまでに自動車やゲーム機などがその対象となっているほか、2022年にはニューヨーク州がアメリカで初めて広範な電子機器を対象とした法律を制定しました。
広い範囲の電子機器を対象とした「修理する権利」を認める法案をニューヨーク州議会がアメリカで初めて可決 – GIGAZINE
農機具での修理する権利を定めた州法案「Colorado House Bill 1011」が提出されたコロラド州議会では、2023年3月30日に上院で21対12の賛成多数により法案が可決され、続いて4月11日には下院で46対14の賛成多数により可決されました。審議では、農機具を自分で修理する能力を訴える農業従事者側と、それに反発するメーカー側が激しく対立しましたが、上下両院を通過したことで法案はポリス州知事に送られました。
そして、今回ポリス州知事が署名したことで、法案は正式に制定されることが決まりました。発効は2024年1月1日で、これ以降農機具メーカーは、ユーザーや独立系の修理業者に部品や組み込みソフトウェア、ファームウェア、修理器具、修理マニュアルなどの文書を提供しなくてはなりません。
ポリス州知事は署名時の声明で、「勤勉な農家や牧場主が機械を修理するのにかかる時間と費用を節約し、コロラド州の農業の繁栄を支援する重要な超党派法案に署名することを誇りに思います。これまで、農家や牧場主は、メーカーやディーラーのせいで修理が滞り、数週間や数カ月間といった貴重な時間を失うことがありましたが、この法案はそれを変えるものです」と話しました。
一方、大手農業機器メーカー・John Deereは、修理する権利を支持しつつもその法制化には反対するとの立場をとっています。同社は、2023年1月に農業圧力団体との間で修理する権利を認める合意書に署名しましたが、法案がコロラド州議会で可決された際には、メディアに対して「コロラド州の法案は不要であり、我々の顧客に悪影響を及ぼす意図しない結果をもたらすと強く感じています」と語りました。ただし、「意図しない結果」が具体的にどのような結果なのかについては明示していません。
「修理する権利」を認める合意書に農機具メーカーのジョン・ディアが署名、認定ディーラーで修理を数週間待つ状況が改善か – GIGAZINE
コロラド州やニューメキシコ州などの農業従事者で組織されるロッキーマウンテン・ファーマーズユニオンのチャド・フランキー会長は、「コロラド州にならって、ほかの州でも農家や牧場主が自分たちの機器を修理することが認められるようになるでしょう」と話しました。
消費者保護団体・Public Interest Research Group(公益研究グループ)の調べによると、アメリカではさらに15の州で、農機具の修理に関する法律の2023年中の成立に向けた議論が進められているとのことです。
この記事のタイトルとURLをコピーする