メモ
銃社会のアメリカでは、テロや銃乱射事件を未然に防ぐべく、州によっては通報次第で重装備の特殊部隊を即時送りこむ体制が整えられています。しかし、この厳重な警戒態勢を悪用し、ウソの通報や脅迫を警察に行い、まったく無罪の人の元に特殊部隊を送りこむ「スワッティング」が近年増加しており、問題視されています。そんなスワッティングを自動化して代行を引き受ける業者が登場していると、IT系ニュースサイトのMotherboardが報じています。
A Computer Generated Swatting Service Is Causing Havoc Across America
https://www.vice.com/en/article/k7z8be/torswats-computer-generated-ai-voice-swatting
2023年2月、アメリカ・アイオワ州にある警察署に、1本の電話がかかってきました。電話をかけてきたのは男性のような声で、少しパニックになっている様子で「もしもし、私は今罪を犯したばかりで自首したいのです。地元の学校に爆発物を仕掛けました」と話しました。
警察は驚いて、爆発物が仕掛けられたという高校を特定し、周辺を封鎖して特殊部隊と共に爆発物を捜索しましたが、結局何も見つからなかったとのこと。こうした嫌がらせはスワッティングと呼ばれ、近年非常に事例が増えています。
実際に人気の実況配信者にスワッティングが行われ、ライブ配信中に警官が実況配信者の自宅に突入するケースは増えており、社会問題となっています。
ゲーム配信者の生放送中に武装した特殊部隊を緊急出動させる「スワッティング」の被害が増加中 – GIGAZINE
FBIシアトル支部の広報担当者であるスティーブ・ベルンド氏はMotherboardの取材に対して、「無実の人々を危険にさらすため、FBIはスワッティングととても真剣に向き合っています。スワッティングの電話は、警察に最初に対応した者と嫌がらせの被害者にとって非常に危険なものです」と述べています。
以下が実際にアイオワ州の警察にかかってきた電話の音声。Motherboardは、警察にかかってきた電話の録音を聞いた上で、「男性の声はボイスチェンジャーを介したか、あるいは何かしらのツールで合成したような人工的な声にも聞こえる」と評しています。
Stream Torswats Call 1 by Joseph Cox, Motherboard | Listen online for free on SoundCloud
この電話と同じように爆弾や銃乱射のウソ予告をする電話が数カ月にわたってアメリカ中の警察にかかってきていると報告されています。独立系ニュースメディアのNPRによると、2022年10月時点でアメリカの28州・182校もの学校がウソの脅迫電話を受けたと報じています。
Motherboardは、暗号化メッセージングアプリのTelegramで「Torswats」と名乗る業者がこのウソの脅迫電話を有料で代行する仕事を行っていると報じており、Torswatsが依頼を受けてから脅迫するまでを、合成音声を使うことですべて自動化していると主張しています。
Torswatsが提示する依頼料は、学校閉鎖が1回75ドル(約9900円)、ターゲットとなった個人のもとに特殊部隊を送りこんで家宅捜索を行わせるスワッティングが1回50ドル(約6600円)で、ターゲットが実況配信者などの有名人の場合は価格が応相談となるそうです。TorswatsはTelegram上で依頼を引き受けており、依頼料の支払いは仮想通貨で行っているとのこと。
なお、上記のアイオワ州で起こった事件については、Torswatsにウソの脅迫電話を依頼したのが16歳の少年であると判明し、少年はテロによる脅迫を行った罪で起訴されました。しかし、実行犯であるTorswatsの正体は依然として不明のまま、2023年2月にTelegramのチャンネルを閉鎖し、ウソの脅迫電話をかけたときの録音をTelegramから削除した上で姿をくらませてしまったそうです。
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