株式会社マネーフォワードが2月16日に発表した「インボイス制度に関するアンケート調査」の結果によると、企業におけるインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応は準備が進んでいるが、個人事業主では低水準にとどまっていることが分かった。この調査は、インターネットを用いて2022年12月23日~30日に実施されたもの。インボイス制度への対応に伴う負担や、事業へのマイナスの影響の有無なども法人・個人事業主に聞いている。
「インボイス制度を機にクラウドツールを導入・検討」法人で半数近く、個人事業主では2割
まず、法人・個人事業主にそれぞれ「2023年10月1日から施行される『インボイス制度』を知っていますか?」と聞いている。法人(n=668)では「知っている」が59.0%で半数を超え、「少し知っている」が28.3%、「あまり知らない」が7.9%、「知らない」が4.8%だった。一方、個人事業主(n=512)では「知っている」が31.8%、「少し知っている」が35.4%、「あまり知らない」が20.7%、「知らない」が12.1%だった。「知っている」「少し知っている」を合わせると、法人で83.7%、個人事業主で67.2%となっている。
前の質問で「知らない」と答えた人を除いて、「インボイス制度への対応はできていますか?」と問うと、法人(n=636)では「対応できている」が26.6%、「一部対応できている」が33.8%、「対応を予定している」が21.9%、「対応の予定はない」が5.2%、「未定」が5.0%、「わからない」が7.5%だった。個人事業主(n=450)では「対応できている」が8.7%、「一部対応できている」が9.3%、「対応を予定している」が26.6%、「対応の予定はない」が24.0%、「未定」が18.7%、「わからない」が13.3%だった。「対応できている」「一部対応できている」を合わせると、法人で約6割、個人事業主で約2割だ。
インボイス制度への対応には経理処理などの新たな手間も発生するが、この課題を解決する1つの手段にクラウド型(SaaS)ツールの導入がある。「インボイス制度を機に、クラウドツール(SaaS)を導入しましたか?」と状況を尋ねると、法人(n=603)では「導入した」が19.9%、「導入を検討している」が29.4%、「導入する予定はない(システム等は利用しない)」が17.7%、「導入する予定はない(他社の既存のシステムを流用)」が15.1%、「すでに導入してした」が3.8%、「わからない」が14.1%だった。個人事業主(n=342)では「導入した」が6.1%、「導入を検討している」が14.3%、「導入する予定はない(システム等は利用しない)」が31.9%、「導入する予定はない(他社の既存のシステムを流用)」が17.8%、「すでに導入してした」が3.8%、「わからない」が26.0%だった。「導入した」「検討している」を合わせると、法人では半数近くに上るが、個人事業主では2割にとどまっている。
個人事業主が「適格請求書発行事業者」の登録申請をしない理由とは?
「適格請求書発行事業者の登録申請をしましたか?」との質問に、法人(n=636)では「登録申請した」が49.2%、「登録申請をする予定」が27.5%、「登録申請をする予定はない」が10.1%、「わからない」が13.2%だった。個人事業主(n=450)では「登録申請した」が10.7%、「登録申請をする予定」が25.6%、「登録申請をする予定はない」が38.0%、「わからない」が25.8%だった。申請済み・申請予定を合わせると、法人では約8割だが、個人事業主では約3割となっている。
前の質問で、個人事業主のうち「登録申請する予定はない」または「わからない」と答えた人(n=171)を対象に、「適格請求書発行事業者の登録申請をしない理由を教えてください」と質問したところ、「課税売上高が1000万円を超えていないから」が63.7%、「事業や売上に影響がないから」が26.3%、「手続き方法がわからないから」が21.1%、「取引先が適格請求書発行事業者でないため対応の必要性がないから」が18.7%、「クラウドツール導入による経費の増加」が14.6%となっている。
「適格請求書発行事業者登録をしない場合、顧客から価格や契約変更などの交渉などはありましたか?」との質問に対し、法人(n=64)では「あった」が3.1%、「ない」が82.8%、「わからない」が14.1%だった。個人事業主(n=171)では「あった」が1.2%、「ない」が94.7%、「わからない」が4.1%だった。
「事業にマイナスな影響があると感じている」法人で約6割、個人事業主で半数弱
「インボイス制度への対応は大変だと思いますか?」と質問した回答として、法人(n=603)では「大変だと思う」が36.0%、「少し大変だと思う」が42.3%、「どちらとも言えない」が15.6%、「あまり大変ではない」が3.6%、「大変ではない」が2.5%だった。個人事業主(n=342)では「大変だと思う」が48.2%、「少し大変だと思う」が27.5%、「どちらとも言えない」が19.3%、「あまり大変ではない」が2.9%、「大変ではない」が2.0%だった。「大変」「少し大変」を合わせると、法人で約8割、個人事業主で約7.5割だ。マネーフォワードでは「インボイス制度対応を負担に感じている」と指摘している。
「インボイス制度によって、事業にマイナスな影響があると感じていますか?」と質問すると、法人(n=636)では「感じている」が23.3%、「少し感じている」が35.4%、「どちらとも言えない」が25.0%、「あまり感じていない」が9.1%、「感じていない」が7.2%だった。個人事業主(n=450)では「感じている」が27.8%、「少し感じている」が19.8%、「どちらとも言えない」が35.1%、「あまり感じていない」が6.9%、「感じていない」が10.4%だった。「感じている」「少し感じている」を合わせて、法人では約6割、個人事業主では半数弱が、事業にマイナスな影響があると感じていることが分かった。
では、具体的にどのような影響があるのだろうか。「インボイス制度による、マイナスな影響として考えられることはありますか?」(複数回答可)という質問がある。法人(n=532)では「経理処理による間接業務の増加」が54.9%、「取引金額の変更」が47.6%、「取引先との契約解消」が30.3%、「仕入税額控除ができない場合の費用負担の増加」が30.1%、「クラウドツール導入による経費の増加」が27.6%だった。個人事業主(n=372)では「取引金額の変更」が49.2%、「経理処理による間接業務の増加」が42.5%、「仕入税額控除ができない場合の費用負担の増加」が36.6%、「取引先との契約解消」が32.5%、「クラウドツール導入による経費の増加」が23.9%だった。