書き出し小説大賞 258回秀作発表

デイリーポータルZ

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

桜が散るのとタンポポの季節です。毎年言ってるかもしれませんがタンポポが黄色い可憐な花からふわうふわの綿毛になって種を飛ばしていくという、まるで映画のような展開に、毎度のことながら感嘆しております。つかまじすごくね?タンポポ。

それでは今週もめくるめく書き出しの世界へご招待しましょう。

書き出し自由部門

雨の日の桜は濃い。

ぐるりん

別に花見のために咲いたわけじゃない。

瞼の裏側まで、春だった。

タカタカコッタ

歩道橋をギザギザの影が登る。

みよおぶ

昼下がりに帰る高校生が、一番輝いている。

もろみじょうゆ

黒歴史とか言ってる君も、おっさんから見れば眩しいんですよ!

泣いている私の足元にレジ袋が寄り添った。

井沢

有料だけどな!

木曜日はクッションみたいな物さ!

ナックルボール

有給と肉球は、いくつあってもいい。

七寒六温

ブルーシートに残った親方の体温を指でなぞった。

寂寥

いったん広告です

前倒しの花見に熊が吠えた。

人馬一体勘

殺したての死体には、知らない愛が詰まっていた。

坂上田村麻呂の従兄弟

夜、森の息遣いと焚き火が、君を化物にする。

あおすけ

化物になって夜に溶ける。

琥珀の海で眠る虫が見た星の終わり。

いずも

蛇の舌みたいに裂けた夜の先にぶら下がってる君のエクステ。

須能がる↑

小麦粉をこねた生地でつくった、彼氏。 にら将軍ハルナ

僕の顔をお食べ。

涙で歪む夜景。世界はそのように壊れたのです。

正夢の3人目

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