先日、人生初の奄美大島入りをする機会を得た。奄美大島といえば……あっ、冷静に考えたら全く知らんぞ? 南国を味わうなら沖縄本島や石垣島などがウィッシュリストの上位。ぶっちゃけ奄美大島はスルーしがちっていう。
そういえば貴重な固有種がたくさん住んでいるというのは聞いたことがある。ということは、未開のジャングルに覆われた南の島みたいな? そう思っていました。実際に上陸するまでは。
・奄美大島
ということで飛行機で奄美大島へ。今回は奄美群島の豊かな自然をPRしてほしいという趣旨での、奄美群島広域事務組合によるプレスツアーだ。
それにしても、思っていたよりあっさり着いてしまった。もっとこう、激しく揺れる小型のプロペラ機で草をむしっただけの空き地のごとき空港にランディング。
そこから始まる、ディスカバリーチャンネルやナショジオ的な、ワイルド感に満ちた大自然とのガチ邂逅に備えていたのだが……
奄美大島の皆さんすみませんでしたァァァァアアアア!!
とても綺麗で立派な空港でした。サイズこそ控えめだが、そこに貧弱感はない。漂うのは小綺麗な南国感。
なるほどね。もう何となくわかったぞ。ここはどちらかというと、海がメインの南国リゾート的な島に違いない。しかし、そのイメージは即座に揺らぎ始める。
・本土感
おっ、ファミマじゃん。
奄美版のドンキか?
けっこう走ってるけど、ひたすら山ばっかやぞ? 海どこ行ったんだよ。ていうか、この島デカくね?
そして島の中心部だというエリアに到着。あそこに見えるのはマツキヨとモス。撮り忘れたが、さっきイオンも見えた。
そして広がる ひじきの煮物みたいな色をした無個性な住宅街。この風景は9割くらい私の住む埼玉の場末と一致している。奄美大島に来たはずなのに、マジでアイランド感稀薄……!
誇張なしに体感はほぼ本土。勝手にジャングルに覆われた島だとか、トロピカルリゾートだとか思っていたが、そんなことはなかったのかもしれない。あと想像の数倍はデカい。
山が多くて視界が開けないのも内陸の田舎っぽさを加速させる。トドメはイオン。イオンの地元感は、奄美大島をも埼玉の場末に錯覚させる。このままじゃ大自然のPRができねぇ……!
・ネイチャー
いよいよ全奄美大島関係者にブチ切れられそうな結論に至りつつあったところで、この島はようやく本気を見せ始めた。急にバスの外の景色がジュラシックパーク化したのだ。
生い茂る巨大なシダ系植物。入ったら絶対に戻ってこれない系のジャングルじゃん。さっきまでの9割埼玉な景色はどこに行ったのか。
そして現れるマングローブからの……
うぉぉぉぉおおおおおおおおおお! これだよ!! こういうのが欲しかったんだよ!!!
いかにもな感じにモコモコした緑のフィールドと、その先に見える蛇行した川。あまりにも仕上がっているワイルドネイチャー。これから、この下に少しだけ降りて行けるという。
上から見た感じでは山の裾というか、陸地というか、そういうものだと思っていたが、実は広大なマングローブ林だったのだ。
何やら赤いのがあると思ったらオヒルギだった。この花から胎生種子が伸びてきて、それを落として数を増やす。よくいる種を落として増える植物とはちょっと違うタイプだ。
ちなみにここは奄美群島国立公園特別保護地区のマングローブ原生林。少ししか降りられないのはそういうことだ。
・カヌー
このあと、先ほど見えたS字に蛇行している川にカヌーで入っていけるという。ということでやってきたのはカヌー乗り場。やったことないが大丈夫なのだろうか?
直前に5分ほどレクチャーの時間があったが、ぶっちゃけやって慣れろという感じ。まあ、なるようになるだろう。そう思って乗ったら余裕で何とかなった。
この時は干潮だったため、水位はかなり低め。満潮の時にはマングローブ林の中を走る細い水路に入ることができるようだった。満潮の時の方が撮れ高ありそう。
この辺にはときおりウミガメがやってくるらしい。実は少し遠いところで目撃情報があがったが、残念ながら私は見ることができなかった。
ときおり魚影が見えるが、さすがにカヌーを漕ぎながらカメラで追いかけるのは困難。ちなみに水中はこんな感じ。
特にそれらしい生物を見ることはできなかったが、カヌーというのは乗ってみると実に楽しい。心底未経験だった私でも、開始5分くらいで自在に操船できるようになった。
他の人々も同じような感じだったので、そういう乗り物なのだと思う。値段もかなりお手頃だ。これはガチでおススメ。本当に楽しかった。
・夜の奄美
そうして時刻は夜。ガイドが同行するナイトツアーで、夜行性の動物を見に行くことに。昼間は普通の道路らしいが、時間帯によって侵入が制限されるエリアだとか。
事前の予約が必須。観察は車内からのみ。ライトの使用や進行速度などについて、野生動物を保護するための色々と細かい規定がある。
さて、相手はガチ野生動物。何が見られるかは完全に運次第だ。ゆえに、記事で紹介する通りのものを皆さんも見られるとは限らないし、逆に、もっと凄いものを見られる可能性もある。
まず見えたのはモダマ。1mくらいの長さになるデカい豆だ。国内で自生している場所は限られている。
続いて見えたのは……アマミノクロウサギ! 特別天然記念物だ。こいつの命の価値は、恐らく低級庶民おじさんの私より高い。
道路脇で草を食っていたが、ノソノソと茂みの中に逃げてしまった。しかしろくに写せていない。灰色の何かよくわからないものになっている。
その後クロウサギチャンスは再び訪れた。しばらくしてから、車から離れたところにもう1匹見つかったのだ。距離があるからかすぐには逃げない。
え、全然見えねぇじゃんって? まあ待てよ。こんなこともあろうかと超望遠レンズを持ってきていたのだ。
これがガチなアマミノクロウサギ。余談だが、奄美大島の観光では、レンズ交換式のカメラと超望遠域のズームレンズがあるとはかどると思う。
さらにのちほど、別の個体を前から撮ることに成功! SONYの瞳AFは特別天然記念物にも有効ォォォォオオオオオ!!! よく見ると爪がヤバいな。
その後もクロウサギは何度か出没。遭遇の難易度は低そうだ。この標識もマニアに人気のようで、わざわざ撮りに来るらしい。
他の動物については、残念ながら出会えなかった。アマミトゲネズミと思しきネズミを一瞬だけ見られたが、写真でとらえるのは困難だった。動画は撮っていたものの、ぶっちゃけよくわからない。
リュウキュウコノハズクも間違いなく近くにいた。ずっと鳴き声が聞こえ続けていたのだ。しかし姿をとらえることはできなかった。
また、アマミヤマシギはツアーが終わって市街地に帰る途中に道路の真ん中に突っ立っているのを2回見た。よくあることらしい。
ガイドの方によると、まだ寒い時期ゆえに動物の活動がイマイチらしい。もっと暖かくなってからの方が、貴重な爬虫類や両生類も動き出すため、色々見られる可能性があるとのこと。
シーズンと運が重要なようだ。しかし、アマミノクロウサギを見られただけでもかなり面白かった。奄美大島か徳之島に来ないかぎり、今のところは生で見る機会が絶対に無い生物だ。
・奄美大島
ということで人生初の奄美大島。ぶっちゃけファミマからモス、マツキヨ、そしてイオンのコンボを食らった時は、あまりの内地っぽさにナメきっていた。
しかしそのワイルドネイチャー力(ぢから)はガチだ! これはもっと暖かい時期に余裕をもって、本格的な装備で挑みたいところ。
島の自然には異国どころか、異世界感すら感じるほど本土の野山で見られるものとは違っている。皆さんも是非奄美大島に行ってみてはいかがだろう。唯一無二の体験が待っているぞ!
参考リンク:奄美群島広域事務組合、マングローブパーク
執筆&写真:江川資具