陳麻家(チンマーハン)という中華チェーンをご存知だろうか? 公式サイトを見ると青森や沖縄にも出店しているようだが、全国どこにでもお店があるわけではない。マイナーではないが、超メジャーともいい難いポジションである。
そんなチェーンの1つが新宿西口にもあるのだが、偶然にも店の前を通った私は思わず目を見張った。「ちょい飲みセット」があるではないか。しかも価格は800円! これはいい!!
──と思って入店したのだが、当然ながら店おとしては「出来れば他にも色々と注文して欲しい」と思っているだろう。しかし、私としてはなるべく安く済ませたい。様々な誘惑を断ち切り、「ちょい飲みセット」だけでフィニッシュできるのが理想。
つまるところ、「ちょい飲みセット」とは店と客の思惑が静かにぶつかる場であり、もっと言うならば戦場である。これまで何度もお伝えしているように、「ちょい飲みセット」を頼むことはすなわち戦うこと。
という覚悟をもって、今回もまた私は「ちょい飲みセット1つ」と店員さんに告げた。
数分後、運ばれてきた「ちょい飲みセット(800円)」は、生ビールに餃子、ザーサイ(メンマでも可)の組み合わせ。1000ベロ以下の価格でこれだけ付いてくるのだから、実にありがたい。
と思う一方で、テーブルに並んだ餃子とザーサイを見ているとなんだかモヤついてくる。店の名(陳麻家)を考えると麻婆豆腐とか担々麺がウリだと思われるのに、餃子で満足しているという事実がちょっと悲しいのだ。
不思議なもので、1人でビールを飲んでいるとその悲しみが増幅されてくる。これは危険な兆候。ほっとけば暴飲暴食に走る恐れアリ……と判断した私は、餃子を平らげた直後に担々麺を注文して強制的にシメることにした。
ハーフ担々麺(480円)を追加したので、合計は約1300円。「ちょい飲みセット(800円)」で収めることは出来なかったが、出費を最小限に抑えた形。
これまでの失敗を糧にして、事前に手を打ったと言える……と思っていた。誤算だったのは、担々麺が想像以上に私の味覚にハマったこと。
この担々麺、美味い! っていうか、具のミンチ肉で飲めるじゃん! なんならスープで飲めるじゃん!!
……という事実に気づいてしまったのだ。ひとたびそうなると、「じゃあもう1杯だけ」という流れになるのは必然。
すると今度は「なんでミンチ肉で飲んでるんだ? 店にはいくらでもつまみがあるだろ」となってしまう。こうして……
1度シメたはずなのに、気づけばもう1周。最後にまた別の担々麺でシメて、合計5200円になってしまったのである。
自分でも愕然とするような結果。一体いつになったら「ちょい飲みセット」で本当にちょい飲みできるのか? と思わなくもない。ただ、今回の経験は決して無駄ではない。反省材料を得たことで、次回に活かせるはず。
いちおう振り返っておくと、私のミスは担々麺をクローザーだと考えたこと。あいつにそんな重責を担わせるべきじゃなかったのだ。ミンチ肉だけで飲ませようとする狡猾な野郎なのだから。
ちなみに、今回取り上げた「ちょい飲みセット」は陳麻家の西新宿店で見つけたもの。全店舗にあるかどうかは分からないので、「運良く見つけたら頼んでみよう」くらいの軽い気持ちでいるのがいいかと思う。
まぁ、軽い気持ちで「ちょい飲みセット」を頼むと、ちょいでフィニッシュできることはほぼ不可能な気がしなくもないが……。強い意思があれば大丈夫だろう。健闘を祈る。