株式会社ミロク情報サービスは2023年2月10日(金)、「NISA等の拡充、相続税の見直し、インボイス実施への対応 令和5年度税制改正大綱から見えてくるもの」と題したプレスセミナーを開催した。
今回のセミナーでは、「MJS税経システム研究所」顧問・税務システム研究会の座長を務め、日本税理士会連合会常務理事・調査研究部長等を歴任した植田 卓氏を招き、法人や個人へのアドバイスを行っている税理士の立場から、令和5年度税制改正大綱の各ポイントと今後の流れについて説明があった。
■中小企業の経営の改革や改善をすることを目的として活動
セミナーは、株式会社ミロク情報サービス 取締役 MJS税経システム研究所 所長代行 大久保 利治氏の挨拶から始まった。
同研究所は1999年、ミロク情報サービスのシンクタンクとして設立された。昨今のめまぐるしい税制改正や会社法改正、会計制度や各種制度の変更にスピーディーに対応した、さまざまな情報やサービスを提供することを目的として活動している。
具体的には、税務・商事法・会計・経営システム等の各研究会に分かれ、それぞれの分野での専門家を顧問・客員研究員として招き、研究活動を行っている。その成果はセミナーやウェブコンテンツとして、さまざまなかたちで情報発信をおこなっている。
本セミナーは、研究所の情報発信活動の一環として毎年開催しており、対面での開催は3年ぶりとなる。
大久保所長代行は「日本企業の大多数を占める中小企業の経営の改革や改善をすることを目的として活動しております。今後とも当研究所の情報を何かの参考にしていただけたら幸いに存じます。」と語った。
■令和5年度税制改正大綱の各ポイントを解説
MJS税経システム研究所の顧問ならびに税務システム研究会の座長を務め、日本税理士会連合会常務理事・調査研究部長等を歴任した植田 卓氏が登壇し、法人や個人へのアドバイスを行っている税理士の立場から、令和5年度税制改正大綱の各ポイントと今後の流れについて説明した。
岸田内閣も2期目を迎え、令和5年度税制改正大綱では、わが国が世界経済の中で埋没していくという危機感を背景に、これまで不十分だったと言わざるを得ない分野に大胆に資金を巡らせることにより、個人や企業、そして地域に眠るポテンシャルを最大限引き出すとのメッセージを税制において具現化したとうたっている。
他方、防衛費の対GDP比2%化に対する増税については閣内からも批判が上がり、その影響でその実施時期を決められないまま、大綱の公表が例年よりも遅くなった。
税制面における大胆な資金フローとして具体的には、NISAの抜本的拡充と恒久化、スタートアップ・エコシステムの抜本的強化、研究開発税制におけるインセンティブの強化、企業による先導的人材投資等を挙げられる。
このほか、相続税における相続時精算課税制度と暦年課税制度の改正は、今後の相続税への対応を抜本的に変える可能性が大きいとのこと。
また本年10月から実施されるインボイス制度を前にして、特に免税事業者が適格請求書発行事業者になる場合の軽減措置をはじめ、さまざまな対応が掲げられた。ただ、制度の内容に複雑な面があり間違いなく対応できるのか懸念される面もある。
植田氏によれば、令和5年度税制改正大綱にて岸田内閣は、わが国が世界経済の中で埋没していくという危機感を背景に、これまで不十分だったと言わざるを得ない分野に大胆に資金を巡らせることにより、個人や企業、そして地域に眠るポテンシャルを最大限引き出すとのメッセージを税制において具現化した、としている。
たとえば、NISA(少額投資非課税制度)は、資産形成においてよく取り上げられる制度であり、2024年からは新NISA制度に移行する。
新NISA制度は、「資産所得倍増プラン」の実現に向け、「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、中間層を中心に、生活者が幅広く資本市場に参加し、資産形成できる環境を整備することをねらって、恒久的な措置とし、非課税保有期間が無期限、口座開設可能期間についても期限がなくなる。
従来の「一般NISA」は、「成長投資枠」として再編成され、年間に積み立てることができる上限額は従来の120万円の2倍となる240万円となる。
従来の「つみたてNISA」は「つみたて投資枠」として再編成され、年間に積み立てる上限額は従来の40万円の3倍となる120万円となる。
この「成長投資枠」と「つみたて投資枠」は併用できるようになるため、合計360万円までの年間投資が可能となる。これにより、今まで「つみたてNISA」を選択していた方は9倍に、「一般NISA」を選択していた方は3倍の投資枠が増えることとなる。
生涯の積立上限額は、老後等に備えた十分な資産形成を可能とする観点から、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」との総額で1,800万円となる。なお、「成長投資枠」の積立上限額は1,200万円とされる。
生涯の積立上限額に比して、年間の投資上限額が大きく設定されている趣旨は、個人のライフステージに応じて、資金に余裕があるときに 短期間で集中的な投資を行うニーズにも対応できることが念頭に置かれているようだ。
インボイス制度(消費税の適格請求書等保存方式)については、2023年10月から導入される新しい仕入税額控除の方式であり、インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)でない請求書では、仕入税額控除が受けられなくなる。免税事業者からインボイス発行事業者になった場合の税負担や事務負担を軽減するため、売上税額の2割を納税額とする3年間の負担軽減措置が設けられている。
相続税については、相続時精算課税と暦年課税についての詳しい解説があった。相続時精算課税では、特定贈与者が60歳以上で、かつ推定相続人が18歳以上を要件に、生前贈与では2,500万円までは特別控除されるが(2,500万円を越える金額には20%の贈与税が掛かる)、相続時点では相続税の課税価格に取り込まれる。今回の改正で各年の基礎控除額110万円の累積額が相続税の課税価格から除外されることとなった。
歴年課税では、贈与者も受贈者も年齢制限はないが、今回の改正により、相続開始前3年間から7年間分の贈与額が相続税の課税価格に取り込まれる。ただ、高額な資産を保有する場合には資産を分割して贈与することで、累進税率の適用を軽減することも可能だ。どちらが有利か、将来を見据えて長い期間で考える必要がある。
MJS税経システム研究所 植田 卓氏が語る!令和5年度税制改正大綱から見えてくるもの
YouTube:https://youtu.be/BmuK07Nd7nc
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