パパ活で中年男性が誘拐される暴力事件が爆増中、マッチングアプリを駆使した「Tinder強盗」の実態とは?

GIGAZINE



「出会い系アプリでデートの約束したら乱暴された」というと、若い女性が被害に遭う場面をイメージしてしまう人は多いはず。しかし、ブラジルではマッチングアプリのTinderなどを使って恋を探す男性が暴力事件のターゲットにされる事例が急激に増えているとのことで、その実態に海外ニュースメディアのRest of Worldが迫りました。

“Tinder robberies” combine fear and dating for men in Brazil – Rest of World
https://restofworld.org/2023/tinder-robberies-dating-apps-brazil/

「私よりずっと若くて薄着の女性から積極的なメッセージが来ると、思わず疑ってしまいます。51歳の私に23歳の女性から連絡が入ったら、それはもう強盗に狙われていると思うしかありません」と話すのは、サンパウロ在住のジョアン・エレウテリオ・ダ・シルバ氏です。

ダ・シルバ氏が警戒心を強めているのには、れっきとした理由があります。ブラジル警察の統計によると、サンパウロで立件された誘拐事件10件のうち9件が、Tinderなどのアプリでデートの約束をした後に発生したものとのこと。警察は、ダ・シルバ氏のような30歳から65歳の男性が主なターゲットになっていると指摘します。


このように、マッチングアプリを使用している男性を狙った誘拐や振り込め詐欺が急増しており、強盗や殺人に発展することも少なくないため、男性たちは慎重にならざるを得ません。Rest of Worldが取材をした3人の出会い系アプリユーザーは、口をそろえて「ここ数カ月間でアプリの使い方が大きく変わりました」と話し、最近では相手の身元はしっかりと確認し、人前で会うことにこだわり、危険を感じたら会話を切り上げるようにしていることを打ち明けました。

この問題の背景には、出会い系アプリとモバイル決済という、2つのテクノロジーの普及があります。主な手口は次の通り。加害者はまず出会い系アプリで偽のプロフィールを作り、ターゲットをプライベートな場所に誘い出します。その後、不用心にも指定の場所に現れた男性を脅迫したりだましたりして、ブラジル人の67%が使っているQRコード決済サービス「Pix」でお金を奪い取ります。

サンパウロ警察誘拐対策課のエドゥアルド・ベルナルド・ペレイラ氏は、「詐欺が誘惑で始まる場合、その目的の多くは被害者候補を人目のつかない場所に誘い込むことです」と述べました。

この手口はニュースなどで「Tinder強盗」と呼ばれていますが、サンパウロの教育機関・Faculdade de Informática e Administração Paulistでサイバーセキュリティを教えているグスターボ・トレンテ氏によると、LGBTQ+コミュニティ向けアプリのGrindrなどのユーザーの間でも懸念が広がっているとのこと。


犯罪のターゲット層は、さまざまな年齢や性的指向の男性で構成されており、手口も被害者にゆすりをかけた直後に短時間で解放する「電光石火の誘拐(lightning kidnappings)」だけにとどまりません。

サンパウロ在住のGrindrのユーザーであるロドリゴ・ソウザ氏は、Rest of Worldに「最近、警察官になりすました犯罪者が、『未成年の少年と関係を持った証拠がある』と言って、お金をたかろうとしたことがあります」と明かしました。ソウザ氏によると、この詐欺はGrindrでマッチした相手と電話番号を交換した直後に起きたもので、相手は告訴されたくないなら金銭を払えと強要してきたとのこと。ただし、ソウザ氏は何事も疑ってかかるようにしているため、相手の口車に乗らずに済んだそうです。

このように、多くの男性が警戒心を持つようになっている一方で、基本的な支援と実情との間にはまだ大きなギャップがあるため、「犯罪に対して無防備な人も少なくない」と警察当局は危機感を募らせています。

ブラジル南東部のジュイス・デ・フォラに住むTinderユーザーであるフランコ・リベイロ氏は、「このアプリを使うリスクは大きすぎます。いい出会いを得るのがとにかく難しいという事実もありますが、こういうリスクもあるので、身の安全のためにも有望な相手を諦めざるを得ません」と述べて、プラットフォームや警察を頼れず自己責任で安全を確保しなければならないことに失望しているとの心情を吐露しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました