今年4月、統一地方選挙が行われる。
オリンピック同様に4年に1度行われるこのイベントは、地方政治に関心が集まる貴重な機会と言ってもいい。
皆さんの地元の「議員」たちは一体いくらぐらいの報酬をもらっているのだろうか?
今回あらためて全国815市区を調べ直したところ、平均年額はちょうど700万円だった。
自治体議員の報酬は、自治体ごとに決められており、人口規模の大きい自治体が報酬も多いという傾向にはあるが、業界では「西高東低」などと揶揄されるように西の自治体の方が高い傾向もあると言われたりもする。
統一地方選挙が行われるタイミングで、果たしてこれまでの議員たちは、この報酬に見合う仕事をしてきたのかとチェックをするとともに、次はこの報酬に見合う議員を選ばなければと考えていただくキッカケにしてもらいたい。
今回は、全国815自治体(市・区)の2021年12月31日現在の最新データから報酬月額の12ヶ月分と、支給割合、加算率から割り出した期末手当の額を足したものを報酬年額としてランキングにしてみた。
結果、最も報酬年額が高かったのは、横浜市(神奈川県)の1,635万円だった。
次いで2位が神戸市(兵庫県)の1,590万円、3位は広島市(広島県)で1,486万円だった。
報酬年額の上位15位までは全て政令指定都市(以下、政令市)が占めており、あらためて自治体規模と議員の報酬年額との相関関係がうかがえる。
あらためて政令市についても確認しておくと、法定人口が50万人以上で、なおかつ政令で指定された市であり、都道府県の事務権限の一部を移譲する日本の大都市制度の一つである。
今回、報酬年額で1位となった横浜市は、人口が376万人と日本最大の基礎自治体となる。
47都道府県の人口と比較しても、横浜市より人口が多いのは、東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県、千葉県、兵庫県、北海道、福岡県、静岡県の10都道府県しかない。
全国に政令市は20自治体しかないが、その政令指定都市を報酬年額で並べると、ワースト3の新潟市は86位、静岡市は44位、熊本市は42位と、一方で全ての政令市の年額報酬が高いわけではないことも分かる。
今回の記事では金額が高い順でランキングをしているので、ワーストという表現をしているが、勿論、地方議員の報酬年額が安いから悪いということではない。
ちなみに私は、単に安ければいいとも思っておらず、その額にふさわしい仕事をしてもらえているかが重要だと思っている。
そのため、報酬年額が高いから悪いというわけではないということは、あえてお伝えしておきたい。
報酬年額上位を見ると、もう一つ目立つのが、県庁所在地だ。
政令指定都市ほどではないが、トップ15自治体のうち12自治体が県庁所在地であり、トップ25自治体には政令市と同数の16自治体が入る。
上位は政令市と同じ自治体が並ぶのであえて触れないが、政令市ではない県庁所在地で最も報酬年額が高かったのは、18位 金沢市(石川県)の1,168万円だった。
金沢市は後述する中核市なので、一般市も触れておくと、一般市の県庁所在地で最も報酬年額が高かったのは、110位 徳島市(徳島県)の960万円だった。
県庁所在地は47あるわけだが、東京を除いた46自治体全体を見ると、ワースト3は、284位 山口市(山口県)、209位 松江市(島根県)、201位 鳥取市(鳥取県)と、815自治体の中でも必ずしも上位ではない。
人口規模との相関関係という意味では中核市も上位に並ぶ。
中核市とは、政令市同様、都道府県の事務権限の一部を移譲する日本の大都市制度の一つであり、現在、法定人口が20万人以上となっている。
政令市に次いで人口規模の多い自治体の多くがこの中核市に並ぶわけだが、今回の地方議員の報酬年額についても、16位以降に一気に並んだ。
この中核市で最も報酬年額が高かったのは、16位 西宮市(兵庫県)の1,191万円だった。
次いで、2位が全体順位17位 姫路市(兵庫県)の1,188万円、3位が全体18位 金沢市(石川県)の1,168万円と並んだ。
逆に中核市の報酬年額ワースト3は、県庁所在地のワースト3で紹介した209位 松江市(島根県)の786万円と201位 鳥取市(鳥取県)の801万円、それに178位 松本市(長野県)の831万円となった。
報酬年額のトップ25の中で、中核市の次辺りから多くランクインしているのが特別区である東京23区である。
23区で最も報酬年額が高かったのは、34位 渋谷区(東京都)の1,092万円だった。
2位が、全体順位35位 大田区(東京都)の1,092万円、次いで3位が37位 千代田区の1,082万円と続く。
23区の特徴は、これまで伝えていたような人口規模の大きな自治体では必ずしもないことがあげられる。報酬年額が23区で最も高く、全体34位の渋谷区も人口規模では120位、全体37位の千代田区にいたっては人口規模が414位と、今回調査した815自治体のちょうど真ん中の自治体でしかない。
逆に人口が14位で東京都最多の92万人の世田谷区(東京都)の議員の報酬年額は23区内で9位と中位になっている。
ちなみに23区で最も地方議員の報酬年額が低いのは、92位 新宿区(東京都)の993万円で、次いで、90位 文京区(東京都)の995万円、81位 目黒区(東京都)の1,018万円と続く。
ここまで、全国815市区の議員の報酬年額を上位から見てきたが、県庁所在地や政令市、中核市、23区ばかりが並び、「結局メジャーな大規模自治体だけじゃねーか・・・」という声が聞こえてきそうである。これ以外のいわゆる「一般市」についても紹介していきたい。
一般市で報酬年額が最も高かったのは、20位 茨木市(大阪府)の1,147万円である。
次いで、ふるさと納税で話題にあがることも多かった22位 泉佐野市(大阪府)の1,139万円、40位 松原市(大阪府)の1,075万円と続く。
冒頭で業界では「西高東低」などと揶揄されるように西の自治体の方が高い傾向があることを紹介したが、一般市のトップ10のうち大阪府内の自治体が8市、トップ15の中でも12市が大阪の自治体となっているのも特徴と言える。
筆者、高橋亮平の住む市川市(千葉県)の議員の報酬年額は、5位の1,047万円。大阪の自治体を除けば全国で最も報酬年額が高い一般市ということになる。
ちなみに一般市でトップ15に入っている大阪以外の自治体は、この市川市と64位(一般市5位)小松市(石川県)の1,042万円、76位(一般市13位)芦屋市(兵庫県)の1,025万円の3市だけだ。
「加賀百万石」で知られる加賀藩の小松市と、関西の高級住宅地として知られる芦屋市と、筆者地元の市川市かぁ・・・などと色々と考えさせられる結果ではあった。
ちなみに今回調査した全国815市区で最も議員の報酬年額が低かったのは、夕張市(北海道)の260万円だった。
夕張市と言えば、自治体で唯一、2007年 財政再生団体に指定された自治体であり、人口も今回の815自治体で2番目に少ない7,000人ということを考えれば、ある意味納得だ。
ワースト2と3が、814位 室戸市(高知県)の387万円、813位 にかほ市(秋田県)ということを考えても夕張市の報酬年額だけが極端に低いことも分かる。
議員の報酬年額は大枠では人口との相関関係があることが見えてきたと思う。そのため、あらためて人口規模の順に上位50自治体を並べてみた。
大阪府内の市の議員の報酬年額は高い傾向にある先述したが、人口規模では2位の大阪市(大阪府)は、議員報酬では13位 1,282万円とむしろ人口規模との比較では高くない印象を持つ。これもいわゆる「身を切る改革」ということなのだろうか。
人口と比較して報酬年額が低い印象を受けるのは、前述した世田谷区(東京都)も人口では14位でありながら報酬年額は49位 1,067万円、練馬区(東京都)も人口18位の一方、報酬年額は69位 1,037万円など23区でも人口の多い区はむしろ人口比較では高くない印象だ。
人口18位でありながら報酬年額が86位 1,002万円の新潟市なども報酬が低めの自治体と言えるように感じる。
こうしたことから、自治体を人口規模の順位の方が議員の報酬年額順で並べた順位の方が大きいほど、自治体規模に対して議員報酬年額が他の自治体との比較で高めの自治体と位置づけて調べてみた。
この人口との比較で議員報酬年額が高いと思われる自治体を調べるための「人口順位-報酬年額順」が最も大きかったのは、議員報酬年額707万円の有田市(和歌山県)だった。
有田市は、人口は2万7千人程で全国735位と、今回の調査対象815市区の中でもかなり下位の人口規模にも関わらず、議員報酬年額は全国303位と815市区の中で中間よりもかなり高い所にあり、815市区の平均年額700万円よりも高かった。
次いで2位が五條市(奈良県)、こちらも人口は2万9千人程で715位であるのに対して、 報酬年額は702万円で313位、こちらも平均年額より高かった。3位が御所市(奈良県)で人口2万5千人程で757位に対して、報酬年額は655万円で374位と、上位には関西の自治体が続いた。
このランキングを象徴的に表していて読者にもイメージしやすいのは5位の千代田区だろうか。言わずとしれた国会議事堂も含め永田町や霞が関、丸の内や大手町など、「あれもそうなんだと!」という日本の政治経済の中心と言える自治体だが、人口は6万7千人と23区で最も少なく、都内の全ての市区の中でも3番目に少ない千代田区。
議員報酬が23区で渋谷区と大田区に次ぐ3位であることは前述した通りだが、人口規模に比べて議員の報酬年額が高い自治体の分かりやすい事例と言えるのではないか。
一方で逆に、自治体規模に対して議員報酬年額が他の自治体との比較で低めの自治体を、人口規模の順位の方が議員の報酬年額順で並べた順位の方が小さいほどと位置づけて調べてもみた。
この人口との比較で議員報酬年額が低いと思われる自治体を調べるための「人口順位-報酬年額順」が最も小さかったのは、議員報酬年額480万円の姶良市(鹿児島県)だった。
姶良市は、人口は7万8千人程で全国358位と、今回の調査対象815市区の中でも半部よりもかなり上位の人口規模にも関わらず、議員報酬年額は全国748位と815市区の中でもかなり低くされており、815市区の平均年額700万円と比較しても非常に低い。
次いで2位が花巻市(岩手県)、こちらも人口は9万3千人程で301位であるのに対して、 報酬年額は539万円で660位。3位が奥州市(岩手県)で人口11万3千人程で252位に対して、報酬年額は567万円で589位と、どちら平均年額より低かった。
こちらのランキングでは、2位から4位までに岩手県の自治体が並び、5位から7位までに新潟県の自治体が並ぶなど、地域性もあるように感じた。
一方で、関西の自治体は比較的議員報酬が高いという形で紹介してきたが、9位に木津川市(京都府) 、10位に長浜市(滋賀県)が入るなど、関西の自治体の中にも、むしろ人口規模と比較して議員の報酬年額が低くされている自治体もあることが分かった。
ここであらためて、議員報酬などで「西高東低」などと言われその象徴のように挙げられる大阪府内自治体は本当に高い傾向にあるのか、大阪府内の自治体だけピックアップしてランキングを作成してみた。
先程と同様、自治体を人口規模の順位の方が議員の報酬年額順で並べた順位の方が大きいほど、自治体規模に対して議員報酬年額が他の自治体との比較で高めの自治体と位置づけて調べてみた。
すると今回調査した33の大阪府内の市の中で、29もの自治体が人口の順位よりも、報酬年額の順位の方が上の、いわゆる「報酬年額が人口規模と比較して高めの自治体」であることが分かった。
中でも「人口順位-報酬年額順」が最も大きかったのは、議員報酬年額916万円の四條畷市(大阪府)だった。
次いで、895万円の高石市(大阪府)、781万円の阪南市(大阪府)と並ぶ。
逆に今回、「人口順位-報酬年額順」がマイナスになった「報酬年額が人口規模と比較して低めの自治体」と位置づけられる自治体も4市あった。
1つは先述した大阪市だが、「人口順位-報酬年額順」が大阪府内で最も小さかったのは、報酬年額が942万円の八尾市(大阪府)。
次いで、1,035万円の豊中市(大阪府)、1,051万円の東大阪市(大阪府)と中核市が並んだ。
皆さんにも地元の議員について考えてもらうため、参考までに、大阪府内自治体と同じことを筆者、高橋亮平の住む千葉県内自治体でもやってみた。
大阪と同様、自治体を人口規模の順位の方が議員の報酬年額順で並べた順位の方が大きいほど、自治体規模に対して議員報酬年額が他の自治体との比較で高めの自治体と位置づけて調べた。
「人口順位-報酬年額順」が最も大きかったのは、議員報酬年額734万円の富津市(千葉県)だった。
次いで、929万円の鎌ケ谷市(千葉県)、753万円の君津市(千葉県)と並ぶ。
千葉県の場合は、大阪と逆で、今回、「人口順位-報酬年額順」がプラスのいわゆる「報酬年額が人口規模と比較して高めの自治体」は、37自治体中12自治体しかない。
ちなみに「人口順位-報酬年額順」が千葉県内で最も小さかったのは、報酬年額が512万円の白井市(千葉県)。
次いで、505万円の富里市(千葉県)、496万円の大網白里市(千葉県)となった。
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今回の記事はどうだっただろうか。
あらためて、「地方議員ってこんなに報酬をもらっているのか」と思われた方もいるかも知れない。
ただ、こうした記事を書くと、「議員の報酬なんて少なければ少ないほどいいので下げろ」という論調になっていくことがあるが、筆者はそうは思わない。
民主主義とはコストがかかるもので、むしろ適正なコストはかけてでも市民の意見や思いが反映した地方政治が創られていくべきだと思う。
ただ一方で、現状の地方議員を見ると、これだけの額の報酬に見合う仕事をしているのだろうか?と疑問を感じる議員が圧倒的に多い。
ぜひ、読者の皆さんには、こうした視点から、次の4年間を報酬に見合った仕事ができる議員を選んでもらう4年に1度の限られたチャンスを生かしてもらいたいと思う。