カロリーゼロの人工甘味料「エリスリトール」が血液の粘性を増し脳卒中のリスクを高めることが判明

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カロリーゼロの人工甘味料「エリスリトール」が、血液の粘性を増し、脳卒中のリスクを高めるという研究結果が発表されました。エリスリトールはカロリーゼロの糖類であるため、人工甘味料としての砂糖の代用品として使用されるものです。

The artificial sweetener erythritol and cardiovascular event risk | Nature Medicine
https://www.nature.com/articles/s41591-023-02223-9

Popular Artificial Sweetener Appears to Make Blood ‘Stickier’, Linked to Stroke Risk : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/popular-artificial-sweetener-appears-to-make-blood-stickier-linked-to-stroke-risk

三菱ケミカルによると、エリスリトールは発酵食品に含まれる糖質で、果実・キノコ・ワイン・清酒・醤油・味噌といった発酵食品に含まれている糖質だそうです。カロリーゼロという以外に、「さわやかな甘味」「虫歯の原因になる酸を作らない」「糖代謝に影響を与えない」「緩下作用が弱い(下痢を起こしにくい)」といった特長があります。

特長|エリスリトール|三菱ケミカル ライフソリューション事業部
https://www.mfc.co.jp/product/tourui/erisuri/merit.html


学術医療センターであるクリーブランドクリニックのラーナー研究所で働くスタンリー・ヘイゼン氏ら研究チームが、エリスリトールをはじめとする人工甘味料を摂取することで心臓発作や脳卒中のリスクが高まる可能性があるという研究結果を発表しました。

研究チームはクリーブランドクリニックの心血管クリニックで検査を受けている1157人の患者の中から、血中のエリスリトールの濃度が高い患者は、その後の3年間で心血管に関する症状を発症するリスクおよび、症状を発症して死亡するリスクが2倍に高まることを発見しました。なお、エリストールの血中濃度が高いと心臓発作や脳卒中を発症するリスクが高まるという結果は、アメリカとデンマークの合計約3000人を対象とした調査データを分析してもみられたそうです。

研究チームはこの結果を受け、8人の健康な被験者から血液サンプルを採取し、エリスリトールの摂取がどのようにしてリスクを高めるのかを調査。その結果、血中エリスリトール濃度が最も高くなるのは被験者が甘い飲み物を飲んだ後であることが判明。さらに、この血中エリスリトール濃度が正常に戻るまでに2~3日もかかることが明らかになっています。加えて、血中エリスリトール濃度が高いタイミングでは血液の粘着性や血液凝固に関する測定値が上昇していることが明らかになりました。別の動物実験でも同様の結果が見られたそうです。つまり、エリスリトールを大量に摂取すると血液の粘性が増し、心血管関連の症状を発症するリスクが高まることが明らかになったというわけ。

学術誌のNature Medicineで発表された同研究結果には、「我々の調査結果によると、人工甘味料全般、特にエリスリトールが心臓発作や脳卒中のリスクにおよぼす長期的な影響を調べるさらなる安全性研究の必要性を示唆しています。特に、脳血管障害のリスクが高い患者で影響が顕著です」と記されています。


エリスリトールは前述の通り野菜や果物といった食材にも含まれますが、加工食品ではその濃度が1000倍以上高くなることがあるとのこと。研究チームは人工甘味料を摂取しすぎると、腸内の微生物に影響が生じ、体重増加や糖尿病を引き起こし、がんの発症リスクを高める可能性があるとしています。

また、人工甘味料はカロリーが少ないため、砂糖の摂取量を減らすのに役立つものの、摂取を続けると人体がより甘味を求めるようになってしまうという点も問題視されています。研究チームは「人工甘味料の安全性については議論が続いています。一部の研究では、特にソフトドリンクで人工甘味料を摂取していると、慢性疾患のリスクが高まる可能性が示されています」と指摘しています。

研究チームは被験者が摂取したエリスリトールの量について、「イギリスのお店で販売されている飲み物で許可されている量をはるかに超えていますが、一部のアメリカ人が日頃摂取しているエリスリトールの量を正確に反映しています」と主張しています。

なお、2022年に発表された研究でも、人工甘味料の摂取量が増えるほど心臓病発症のリスクが高まることが示されました。


ケンブリッジ大学の栄養疫学者であるニタ・フォロウヒ氏は、最新の研究は人工甘味料の潜在的な健康被害に関する過去の研究結果を拡張しており、その発見はさらなる調査を必要としていると語っています。

一方で、今回の研究の被験対象となった患者はすでに多くの心血管系の危険因子を持っているため、研究結果が健康な集団にも当てはまると考えるのは難しいという指摘もあります。実際、今回の研究の被験対象となった患者の4分の3が高血圧あるいは冠動脈疾患を患っており、5分の1がすでに糖尿病を患っていました。

エリスリトールを含む人工甘味料がおよぼす長期的な健康への影響について、科学系メディアのScienceAlertは「恐らく、一般的に健康に良いと言われているような『砂糖の摂取量を減らし、加糖飲料や高度に加工された食品の摂取量を減らすこと』が最善でしょう」と指摘しています。

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