「Linux 6.2」が登場、初のApple M1チップ正式対応のLinuxに「セクシー」との称賛も機能不足には不満の声

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Linuxの生みの親として知られているリーナス・トーバルズ氏が2023年2月19日に、初めてAppleのM1チップに正式対応したLinuxカーネルのバージョン6.2のリリースを発表しました。新しいAppleデバイスで動くLinuxを待望していたユーザーからは歓声が上がっている一方、まだ実装されていない機能が多いとの指摘もなされています。

LKML: Linus Torvalds: Linux 6.2
https://lkml.org/lkml/2023/2/19/309

Linux 6.2 includes M1 Mac support, but it’s not fully ready to use | AppleInsider
https://appleinsider.com/articles/23/02/21/linux-62-includes-m1-mac-support-but-its-not-fully-ready-to-use

M1 Mac Linux 6.2 support for M1, M1 Pro, M1 Max, and M1 Ultra
https://9to5mac.com/2023/02/21/m1-mac-linux/

Linux 6.2 is up and running on M1 Macs but still missing many key features | Macworld
https://www.macworld.com/article/1519181/linux-6-2-apple-silicon-m1-macs.html

トーバルズ氏は、Linux 6.2のリリースを告知するメーリングリストへの投稿で、「延期されながらも予定通り6.2がリリースされました。6.1のようなセクシーな長期サポート(LTS)リリースではないかもしれませんが、こうした地道なカーネルにも『テスト愛』が必要です」と述べて、Linux 6.2は魅力に欠けるものだとしつつ積極的なテストを要請しました。

トーバルス氏の評価とは対照的に、IT系ニュースサイト・ZDNetのライターであるSteven Vaughan-Nichols氏は記事の中で「今回ばかりは、トーバルズ氏には同意できません。Apple M1 Pro、M1 Max、M1 Ultraチップに対応するアップストリームサポートの追加により、新型MacのオーナーはM1を搭載したマシンでLinuxを動かすことが期待できるようになります。これは、技術者にとってはセクシーです」と、Linuxの最新ビルドを歓迎しています。

Linux 6.2: The first mainstream Linux kernel for Apple M1 chips arrives https://t.co/X4ExMyzi5J via @ZDNET & @sjvn

People who pushed the envelope could run #Linux on @Apple M1-powered #Macs for a while. Now, the day is closer to when almost any Linux user can run it.

— Steven J. Vaughan-Nichols (@sjvn)


Vaughan-Nichols氏が述べたように、LinuxをM1チップに対応させることは多くのLinuxコミュニティのメンバーにとって悲願でした。他ならぬトーバルズ氏自身も、2020年に「もしLinuxが動くなら、M1チップ搭載Macが絶対欲しい」と発言したことがあります。

「M1チップ搭載Macが絶対欲しい」とLinuxの生みの親リーナス・トーバルズが絶賛 – GIGAZINE

by Linux Foundation

こうしたニーズの高まりを受けて、2021年1月にApple Silicon対応Linux開発プロジェクト「Asahi Linux」が発足し、4月にはM1チップへのイニシャルサポートを含んだarm/apple-m1ブランチがマージされ、LinuxがM1をサポートする下地が作られていきました。

プロジェクトが進められる中では、GPU関連のドライバー開発が難航するなどの困難がありましたが、Asahi Linuxのソフトウェアエンジニアであるアリッサ・ローゼンツヴァイク氏らの尽力により、2022年3月にはパブリックアルファ版のリリースにこぎ着けています。

M1チップ搭載Macで動作するLinux「Asahi Linux」のパブリックアルファ版が登場 – GIGAZINE


このような経緯を経て、今回リリースされたLinux 6.2でM1チップが公式にサポートされることになりましたが、ニュースサイトのMacworldによるとApple Siliconの機能を完全に引き出せているとは言いがたいとのこと。例えば、Asahi Linuxのサポートドキュメントにはスピーカーやマイクなどの機能がWIP(作業中)とされているほか、ウェブカメラやTouch IDなどの機能がTBA(未定)となっています。


こうした点から、Vaughan-Nichols氏の記事を取り上げたソーシャルニュースサイト・Hacker Newsのスレッドには、「記事ではLinux 6.2が順調であるかのような表現がされていますが、実際はそうではありません。さまざまな機能がまだ作業中である以上、記事にあるような魅力はないように思えます。これはAsahi Linuxをくさしているのではありません。彼らは地道な進歩を遂げているのです。要するに、この記事がよくないということです」といった書き込みが投稿されていました。

もっとも、Vaughan-Nichols氏も「ようやくM1のサポートがメインラインのLinuxユーザーにも提供されるようになりましたが、もちろん今のところすべてが実験的なものです」と認めています。その一方で、現行の対応状況が長引くことはないだろうとした上で、「Linux 6.2はUbuntu 23.04のデフォルトカーネルになる予定で、Linux 6.3が4月下旬にリリースされるより前にFedora 38に含まれるでしょう」と述べて、Linux 6.2は今後複数のLinuxディストリビューションに採用されていくだろうとの見通しを示しました。

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