世界のキーボード入力事情調査~中国語・繁体字編~

デイリーポータルZ

繁体字のキーボードをゲットした

前回、韓国語の入力について調べた。その記事を読んだライターの西村さんから、「うちに繁体字のキーボードあるけど要る?」と提案があり、送られてきた。

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あやしい箱の中にキーボードが入っている。

繁体字は主に台湾、香港、マカオで使われている字体である。同じ中国語でも簡体字と違って画数が多い。

ところどころ漢字の複雑さが違う。

さっそくこの繁体字の入力事情を調べてみよう。前回同様、次の手順で調べる。

単純に調べるだけだとおもしろくないので、予想してから検証するという手順で進める。

中国語の発音を理解する

まずは繁体字の文字体系を調べ、キーボード入力事情を予想する。といっても、使われているのは我々にも馴染み深い漢字だ。

わからないのは発音である。(ここからは中国語を全く知らない筆者がゼロから調べながら書いているので、多少の至らぬ点は大目に見てください。)

中国語の発音についてざっくり言うと、21の子音、7の母音、4の声調がある。

これを知ったときの筆者の脳内は次のとおりである。

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脳にたくさんのハテナが並んでいく。

その後ちゃんと調べたら解決した。次の図をみてほしい。

同じ「まー」でもイントネーションによって漢字が変わってくる。このイントネーションのことを声調というようだ。

オレンジの文字は発音記号である。子音「m」、母音「a」、声調「-」といった具合に組み合わせて発音を表現するようだ。

ちなみに、全く同じ発音の字もふつうにある。

子音・母音・声調ぜんぶ同じだ。

いわゆる同音異字だ。キーボード入力では同音異字を考慮する必要がありそうだ。 

繁体字のキーボード入力事情予想

ここまで調べてわかったことがある。発音と文字が1対1に対応していないのは日本の漢字と同じだ。また、発音をアルファベットで表すことができるのも日本語と同じだ。

……ということは日本のローマ字入力のように、ある程度発音をアルファベットで入力して最後に変換するのではないか?

【繁体字のキーボード入力事情予想】
・日本語のローマ字入力のように、子音や母音を表すアルファベットを入力する
・声調や同音異字のバリエーションは、変換ボタンによって指定する

こんなイメージ。

ふふふ。いい感じに予想できた。っていうかこれ以外に何があるというのだろう。

しかし、気がかりな点もある。この入力方式なら英語圏で使われるUS配列キーボードで十分ではないか。わざわざ繁体字のキーボードが送られてきたのはどういうことだろう。

こういうので良くない?

謎は深まるばかり……。

繁体字のキーボードを見てみる

さて、次はいよいよ繁体字のキーボードを見て、そのうえで再度予想をしたい。

この箱を開けます。

これが、繁体字のキーボードだ。

じゃーーーん。

見た瞬間に笑ってしまった。漢字がびっしり書かれている。

日本だと小1で習いそうな漢字が多い。
と思いきや、わりと複雑な漢字も出てくる。

まさかとは思うけど……漢字を1個1個キーに割り当てている?

「街」と入力したいとき専用のキーってこと?何万種類も漢字がある中でキーの使い方がぜいたくすぎないか?

よく見ると漢字になっていないものもある。 

キーの右上に書かれているのは、漢字の一部分だ。

ということは、この文字の赤ちゃんみたいなパーツを組み合わせて文字を作るという線もあるな……。

が作れる。そういうことか?そういうことなのか?

いや、漢字のパーツの種類の多さに対してキーが少なすぎる。「始」はたまたま作れたけど、うまく作れない漢字がほとんだ。

同じ漢字も出てくる。やっぱりキーの使い方がぜいたくすぎるのよ。

ここで、方針を変えてキーに書かれた漢字の意味を考えてみる。すると、自然や動物を表す漢字が多いことに気が付いた。

山や牛など、自然や動物を表す漢字が多い。そして下の方をよく見ると…
金の鹿。かっこよすぎる。伝説上の生き物感がつよい。(画像はAIで生成しました。)

もう少しちゃんと考えたい。

曜日を表す漢字をコンプリートしていることに気がついた。謎解きか?

古代中国の自然哲学に五行説という思想がある。万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなるという説だ。ひょっとして、キーボード上で元素を組み合わせて万物を表現しようとしている?

万物を再構築しようとしている?

こわくなってきた。繁体字のキーボードは、けっして我々が面白がるような代物ではなかったのだ。そこには森羅万象があり、宇宙がある。当然、日本人には想像さえも困難な次元だ。もはや水の使い手とか火の使い手とか、そういう次元の話になってきている。

予想はあきらめて、パソコンにつないでみよう。

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