2023年2月3日から劇場公開されている『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』。これはテレビシリーズ2期の「遊郭編」ラスト2話と3期「刀鍛冶の里編」第1話がパッケージングされた内容だ。
ファンだから観に来たが、席で私(中澤)はこう思わずにいられなかった。「35分は遅刻しても大丈夫だった」と。
・映画の進行スケジュール
なぜなら、冒頭15分は他の映画のティザーで、それがやっと終わったと思ったら曲に乗せて1期からのダイジェストが始まる。宣伝の後にPVみたいなダイジェストが始まった時は正直イラッとした。しかも1期からやるんかい。私は16時25分上映開始の回だったのだが大体の流れをスケジュールに起こすと以下のような感じであった。
16時25分 上映開始
17時くらい 宇随さんの譜面が完成する
17時50分くらい 刀鍛冶の里編開始
・テレビシリーズで感じた遊郭編の見どころ
譜面完成のところはやっぱり凄い。テレビで見ている時から劇場版クオリティーだと思っていたが、実際に劇場で見ても派手だ。じわじわと進む遊郭編において一番の見どころである。善逸もカッコイイし。
とは言え、当然ながら初めて見た時ほどの衝撃はない。1回テレビで見たどころか、このシーンはサブスクでも何度も見返したし。なんなら、1時間25分くらい遅刻しても大丈夫だったのでは……?
・見て良かったと思った点
テレビシリーズの際、一番の見どころだと感じたシーンでそれくらいの温度感だったのだが、遊郭編のエンドロールが流れる頃、私はこう思っていた。「見て良かった」と。拍手さえしたくなった。
派手な闘いは最終話前までで、最終話では敵の鬼で兄妹である妓夫太郎と堕姫の人生が描かれている遊郭編。2人は遊郭に生まれた忌み子なので、週刊少年ジャンプと思えないくらい暗い話なのだが、私が今回の劇場版を見て良かったと思ったのはまさにこのシーンだ。
・最期
醜く性格の歪んでいる妓夫太郎。一方の堕姫は美しく、醜いものをさげすんでおり、思ったこと全てを口に出すある意味ストレートな性格をしている。兄の妓夫太郎も強いから利用している用心棒的な雰囲気があるくらい。
そんな堕姫が最期の瞬間、強さなど関係なく兄を選ぶ。テレビシリーズで見た時はただ不幸な兄妹が少しだけ救われて終わるありがちなラストに見えたのだが、劇場で再度見ていると、ここにあるメッセージ性を感じた。
ルッキズムの権化みたいなキャラであるこの2人。ひょっとしたら、このシーンは一貫してルッキズムに支配されてきた堕姫がルッキズムを捨てるシーンなのではないか? そう考えると、この遊郭という世界設定もSNSやネットみたいに見えてくる。
・見えるものの違い
まあ、この辺の解釈は人によって様々だと思うし、それでいいのだが、少なくとも私はそう感じた。重要なのは、これはテレビシリーズを見た段階では感じ取れてなかった点であるということ。知っていても劇場では全然違う。よりストーリーがダイレクトに訴えかけてくるようで見えるものが変わった。
「いやいや、それくらい気づいてましたよ」という人もきっといるだろうが、そういう細かい部分に気づける人ほど劇場で再度見たらより深いところに気づけるかもしれない。いずれにせよ、こういった再発見のある『鬼滅の刃』は素晴らしい作品であると言える。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.