デンマークで銀行強盗の発生件数が年間0件を記録し、2022年はデンマークの銀行にとって強盗が1度も来なかった初めての年になっていたことが分かりました。背景には、キャッシュレス化の浸透に伴い現金需要が大幅に減少している実態があると分析されています。
For første gang: Et helt år uden bankrøverier
https://www.finansforbundet.dk/dk/nyheder/2022/for-forste-gang-et-helt-ar-uden-bankroverier/
Danish Banks Celebrate Heist-Free 2022 | PYMNTS.com
https://www.pymnts.com/emea/2023/danish-banks-celebrate-heist-free-2022-amid-surge-in-online-fraud/
Bank Robberies in Denmark Fall to Zero for First Time as Cash Disappears – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-01-03/bank-robberies-fall-to-zero-for-first-time-in-cashless-denmark
デンマークの銀行員らが組織する労働組合・Finansforbundetが2023年1月2日に、前年の銀行強盗の発生件数が初めてゼロだったと発表しました。
発表の中で、Finansforbundetの副代表であるスティーン・ルンド・オルセン氏は「素晴らしい、の一言に尽きます。なぜなら、強盗が発生する度に行員に極度の負担がかかるからです。自分でそういう目に遭ってみなければ、その苦難の深さは分からないものです」とコメントしています。
Finansforbundetの調べによると、デンマークにおける2000年の銀行強盗発生件数は221件だったとのこと。しかし、2017年から徐々に減少し始め、2021年には年間1件になっていました。また、ATM強盗の発生件数も減少しており、2016年に18件あったATM強盗は2021年から2年連続でゼロを記録しています。
デンマークで銀行強盗がなくなった理由は、電子決済の普及と現金の需要低下が主因です。デンマークの中央銀行の調べによると、同国では2017年における総支払額の23%が現金だったのに対し、2021年にはわずか12%とほぼ半減しているとのこと。特に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機に不特定多数の人々が触る現金を持たないようにした人が増えたことが、キャッシュレス化に寄与しているとみられています。
これに伴い、2020年にはデンマーク国内に流通する現金がGDPの約3%にまで減少しました。EUでの現金流通額がGDPの12.5%、アメリカでは9%であることを踏まえると、デンマークがいかにキャッシュレス化を進めているかが分かります。
なお、日本ではGDPに対する現金流通高の割合が2020年には約20%に達していることが、海外メディア・Bloombergのデータを元に国際通貨研究所がまとめた(PDFファイル)資料により判明しています。とはいえ、「現金大国」と言われる日本でも強盗が減っている点はデンマークと同じです。日本防災通信協会の調べによると、2021年の銀行強盗発生件数は9件で、ピークだった2000年に比べて96%も減少しているとのこと。
強盗が銀行員を直接脅迫するケースは減った一方で、暴力は形を変えてデンマーク社会にまん延しています。ルンド・オルセン氏は「特に顧客と接する立場の労働者が、電子メールや電話で罵倒されるケースが依然として存在します」と話しました。
銀行員への暴力がデジタル化されたのと同様に、物理的な銀行強盗もオンラインでの詐欺へと移行しました。デンマークの金融事業者が組織する業界団体であるFinans Danmarkの調べによると、同国におけるオンラインバンキング詐欺の発生率は2020年の1970件から2021年には2581件と、25%以上も急増したとのこと。
特に女性や高齢者が標的となっており、デンマーク警察の推計ではオンラインバンキング詐欺の被害者のうち65%が女性で、最も被害者が多い年齢層は70代以上とのことでした。
この記事のタイトルとURLをコピーする