記事の数と読んでもらうための内容のバランス ~デイリーポータルZ先月のがんばり

デイリーポータルZ

記事の本数でたくさんの人に来てもらう、まずはそこから。たくさん書いているライターなら「書けなさ」もネタになる。会員限定の記事をどう作っていくか……。

2022年12月のデイリーポータルZの試行錯誤を、ウェブマスターの林、はげます会担当の橋田、編集部の古賀の3人でかたりあいました。(編集:古賀及子)

※途中まで一般公開の、「はげます会」会員限定記事です。会員の方はこちらからどうぞ!

「とにかく記事の数が必要」らしい

橋田:
年があけました!

古賀:
今年もよろしくお願いしま~す!イェイイェイ~!

林:
よろしくお願いします!

橋田:
先月の12月、デイリーポータルZで新しく試したこととか、力を入れていること、振り返って行きましょうか。最初は林さんからお願いします。

林:
編集部のみんなに協力してもらって「こたつ記事プロジェクト」というのを進めてました。これからのインターネットはこたつ記事だって思いはじめまして。
橋田:
こたつ記事……。取材をしないで書く記事ですよね。体を動かして、外に出てというデイリーポータルZの記事作りのモットーとは真逆ですね。

林:
そう、こたつ記事を“再発明”できないかなと。消極的でよくない記事作りの姿勢だって思ってたんですけど、実は面白いかもしれないなと最近になって考えがすこし変わって。

古賀:
うんうん。

林:
こたつ記事以前に、最近のインターネットのメディアの作り方の説で、「とにかく記事の数が必要」らしいというのが定説であって。

確かにそう思うと、BuzzFeedとかねとらぼって、こたつ記事的なライトな記事がたくさんあるんですよね。で、別にちゃんと読み応えのある取材記事も載ってる。それが最近のサイトの作り方らしいんですよ。

橋田:
本数が大事なんだ。

林:
とにかく数がないと人が来ないってことなんですよね。

古賀:
数を打って当てるんじゃなくて、数を打って人を呼ぶんですね……。

林:
そうそう、たくさん載せてサイトに訪問する習慣を付けてもらうというのがセオリーだって。

橋田:
へ~~っ。

林:
それがないといい記事を載せたところで誰も読んでくれないって。

そう思って周りを見まわすと、どこもそういう戦略でサイトを運営しているなと思いまして。それで記事を出しまくったのが、2020年の5月と、翌年2021年の5月でした。「ばかばかしい記事100連発」、「役に立つ記事100連発」。どちらもゴールデンウイークの特集です。ここでドーンと記事を増やした。そうしたら、そのあとPVが増えてるんです。

林:
来訪者が増えてるんです。単純に。

橋田:
そうだ、そうでしたね。

それで「こたつ記事」だ! となった

林:
こんなに短くてくだらない記事ばっかりを増やしてどうするんだって思うんだけど、実は質より量が大事だってことなんです。それで18時に短くてさくっと読めるタイプの記事を増やしたのが2021年の11月。そこからぐーっと訪問者数が増えて。

古賀:
ベースアップしましたよね。

もういちどこちらをどうぞ

林:
そしたらちょっと意外なことがわかったんです。これ見てください。

林:
一本の棒が各記事のPV数です。右が短い記事がない時代の11月と12月で、左が同時期の短い記事を入れたあと。短い記事で本数を増やすわけだから、あまり読まれない記事が増えるかなと思ったんですよ。それでも人が来ればいいと。でもそうじゃなくてPVは意外に全体に上がっています。
あとグラフが青い線だけじゃなくなってるでしょう、ちょっと見にくいんですが、青にオレンジ色が混ざってて、このオレンジの線は短い記事なんですよ。

橋田:
短い記事がPVも取ってる。

林:
そうなんです。短い記事は本数を増やすための施策と思っていたら、意外にPVを稼いじゃった。で、考えてみたらデイリーポータルの短い記事って、コンテンツに力があるんですよ。

古賀:
ちゃんと書いてありますね。思ったことが自分のことばで書いてある。

橋田:
長い記事だと例えば5個ぐらいためして発見を紹介するけど、短い記事はそこが1個。でもちゃんと1個発見があるんですよね。

林:
デイリーの記事は短い記事も戦力だなと思って。なのでこれはもう遠慮なくどんどん記事を増やすぞと。それで「こたつ記事」だ! となったわけです。

橋田:
ここでこたつ記事につながった!

林:
12月は古賀さんに過去公開した高級品食べくらべ動画の文字起こし版を作ってもらって。1月からは西村さんにも毎週日曜日にお願いすることになりました。

動画コンテンツの文字起こしを情報を補完しつつ記事化したシリーズ。
「粉のコーンスープの高級版を発見! あきらかな違いに飲む者に品格をも与える!」 

 

いきなり大好評、毎週日曜日11時に連載開始した西村さんの記事。
第1回「函館そっくりさん」選手権

古賀:
西村さんって、国語辞典とか地図とか、すでにあるものを面白がる天才だから完全に向いてますよね

林:
それにこたつ記事は文章がうまくないと難しいから。

古賀:
西村さんはぴったりです。

林:
実は体を動かすとか、どっか行って記事を書くというのは、それで許されるじゃないですか。下手くそでも。文章がうまくなくても。

橋田:
外に出れば写真も充実するから、文章がびしっと決まってなくても面白くできますもんね。いろいろ面白いことが起きたり。エピソードが書ける。

林:
それが、取材のない記事は自分の頭から文章をひねり出してしっかり書かないといけないわけですね。

古賀:
デイリーポータルは素人集団、だから体を動かして記事作ろう! ってそういうのがこれまでだったんですよね。

林:
そうそう。とはいえ上手い人はちゃんといるわけで。それでこたつ記事作りに取り組んでいた、という話でした。

編集部から石川くんにやってもらってるライターに聞くベスト3とか、藤原くんにやってもらっている検索流入キーワード、これもこの取り組みの記事です。

「面白すぎて電車を乗り過ごしたアクションゲーム ベスト3を発表します(選者:江ノ島茂道)」 
「アカマンボウ・ニット 毛玉・猫 20歳 化け猫~今週の検索ワード」

林:
ただ、はげます会のみんな、デイリーポータルZの読者はそういうこたつ記事は好きなんじゃないかなというのも、同時に思っているんです。当たり前の記事じゃない記事を読みたいと思ってくれてるんじゃないかと。こういう記事ですね。

「ボアの服で茂みを歩いたらビッグフット」

 

江戸川乱歩「モノグラム」第1回

林:
これがまあ、ほんとにびっくりするぐらい広くは読まれないわけなんだけど(笑)。

古賀:
これはでも大事な記事たちで、宝ですよね。キャラクターの立った人が出て、デイリーポータルのカラーが出る記事として。うける記事っていまこの3路線あって全部大事だと思うんですよね。

  1. Googleディスカバー(Chromeやアンドロイドのレコメンド画面)に取り上げられる記事
  2. SNSで拡散する記事
  3. ハイコンテクストで読まれにくいけどはまるとずっと面白い記事

林さんが上で取り上げたのが(3)。
(1)がこたつ記事とか、レビュー記事。
(2)が最近苦戦してましたが、高瀬さんの兎の記事とか、まいしろさんのポイズンリングとか年明け早々ドーンと出て。この3軸でやっていく感じですよね。

「二兎を追って二兎を得る方法を飼育員さんに聞いた」
「中世の毒殺アイテムを使ってからあげにこっそりレモンをかける」

古賀:
林さんは(3)を臆せずやってもらって。

林:
そうですよね。これからも難解記事を担当します。

 

 

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