2022年、物議を醸したファッション界の7つの話題

DIGIDAY

バレンシアガ(Balenciaga)の騒動が記憶に新しいため、これが2022年最大のファッションスキャンダルのように思うかもしれないが、実際には2022年にファッションブランドはさまざまなことで問題を起こしている。カニエ・ウェスト氏のファッション帝国が内部崩壊し、ドキュメンタリー映画『Victoria’s Secret: Angels and Demons(原題)』が公開されるあいだにも、ブランドは文化の盗用、ホワイトウォッシュ、無神経なコメント、集団万引きの呼びかけなどで大きな議論を引き起こした。

以下では、2022年にファッション界で物議を醸した話題を紹介する。

プロエンザスクーラー、文化の盗用で非難される

2月、プロエンザスクーラー(Proenza Schouler)は、ハワイのレイから着想を得たアクセサリーを1500ドル(約20万円)近くで販売し、大きな批判を浴びた。同ブランドのソーシャルメディアのコメント欄には、ハワイアンやそのほかの人々が、プロエンザスクーラーが伝統的なレイの制作技術を流用し、しかもそのような法外な価格で販売するのは非倫理的だと厳しく非難した。

同ブランドの名誉のために記しておくと、プロエンザスクーラーはハワイのアーティストであるパティ・ハンナ氏やハワイの職人チームと協働しており、全員に「適切な報酬」を与えていると、同ブランドの担当者は述べている。それでも担当者は「我々は失敗した」と認め、このレイの販売は中止された。

ヴォーグがパレスチナを削除

2月にロシアがウクライナに侵攻したあと、スーパーモデルのジジ・ハディッド氏が自身のインスタグラムに、ウクライナとパレスチナ両方の人道支援活動に寄付をすると投稿、最後に「ウウライナに手を出すな、パレスチナに手を出すな、平和、平和、平和(HANDS OFF UKRAINE. hands off palestine. PEACE. PEACE. PEACE)」というメッセージで締めくくった。

『ヴォーグ(Vogue)』がこの投稿に関する記事を書いた際、当初はパレスチナに対する言及を含むすべての文脈について触れていた。だが翌日、その記事からパレスチナの箇所が編集で削除されており、ハディッド氏がウクライナに関してだけ話したと誤解を招いていると、『ゴーカー(Gawker』が報じる。ソーシャルメディア上で多くの批判を受けた後、パレスチナへの言及が記事に復活し、それ以上の説明はない状態で、3日間の論争に終止符が打たれた。

ディオールがヴァレンティノに賠償を要求

7月、ヴァレンティノ(Valentino)はローマのスペイン階段のすぐそばでクチュールショーを開催した。だが、ここでひとつ問題が起きた。このショーのせいでディオール(Dior)の旗艦店へのアクセスが1日中遮断されてしまったのだ。

このため、ディオールからやや奇妙なオープンレターが出され、収益の損失と混乱を「補償」するか、さもなければ法的措置に訴えるという要求があった。この要求はのちに撤回されたが、関係者は両ブランド間の「友好的な関係」をその理由に挙げている。

ヴィクトリアズ・シークレットとアバクロンビーに関する暴露

物議を醸した要素は厳密には2022年に「起きた」わけではないが、7月にHuluで『Victoria’s Secret: Angels and Demons(原題)』、3月にNetflixで『White Hot: The Rise & Fall of Abercrombie & Fitch(原題)』というドキュメンタリーが公開され、その主題となる内容が脚光を浴びた。同時に、このふたつのブランドが長年にわたって有害な美の基準を浸透させてきたことや、かつて両ブランドの親会社だったLブランズ(L Brands)の創業者レス・ウェクスナー氏とジェフリー・エプスタイン氏との関係も浮き彫りとなった。

どちらのブランドも多様性への新たなコミットメントを強調し、過去の過ちからは距離を置くという声明を発表、事態の収拾を試みている。

カニエ・ウエスト氏の終焉

2022年のもうひとつの大きな話題は、カニエ・ウェスト氏が数カ月で自らのレガシーとキャリアを破壊したことである。アディダス(Adidas)やGAPのブランドパートナーと公に衝突したことから始まったこの件は、彼の暴言がますます過激になるなかで、どちらのプロジェクトもキャンセルされる運びとなった。ウェスト氏は、大手ファッション企業の後ろ盾なしに自身の独立したブランドを立ち上げてソロでやっていくと宣言した。

だが、その後、アドルフ・ヒトラーやナチスを本格的に賞賛する主張を含む反ユダヤ的な発言があり、メディアやかつてのファンの目には、ウェスト氏が残したレガシーが何にせよ、もはやずたずたになっているように映った。この記事を書いている時点で、彼はネオナチだと公言する人々とつるんでおり、事実上ファッション界全体から見捨てられ、非難されている。

バンクシー VS ゲス

11月、悪名高い(そして匿名の)ストリートアーティストであるバンクシー氏が、ロンドンのリージェントストリートにあるゲス(Guess)の店に行って万引きすべきだと、約1200万人のフォロワーがいるインスタグラムに投稿した。

その理由は、同店がバンクシー氏の作品画像を使用したストリートアートを専門に販売する会社ブランダライズド(Brandalized)とコラボレーションしたコレクションを販売していたからだ。ゲスはこのコレクションに関するインスタグラムの投稿を削除したが、商品の販売は中止しなかった。ブランダライズドは議論の応酬として、盗みの倫理に関するバンクシー氏の有名な言葉をもじってインスタグラムに投稿している(※公共スペースの広告はどう使おうが君のものだ、という趣旨のバンクシー氏の文章から「広告」の部分が線で消され、「グラフィティ」に書き換えられている)。

バレンシアガが大炎上

2022年最後に巻き起こった議論は、おそらく最大の物議を醸している。それはバレンシアガ(Balenciaga)が感謝祭の頃に発表したふたつの破滅的な広告キャンペーンだ。ひとつは子どものモデルがBDSMにインスパイアされたハンドバッグを持ってポーズを取っている広告、もうひとつは児童ポルノに関する法的文書が目に見える形で掲載された広告である。どちらのキャンペーンも非常に大きな騒動を引き起こし、バレンシアガとクリエイティブディレクターのデムナ氏は何度も謝罪することになっただけでなく、両キャンペーンを中止し、訴訟を起こし(のちに取り下げた)、ブランドの強力な味方であるキム・カーダシアン氏を失う可能性も出てきている。

12月初旬の時点でも、タッカー・カールソン氏やセバスチャン・ゴルカ氏といった右派の著名人がこの話題に目をつけ、彼らの支持者からさらなる怒りの声が上がっており、怒りはいまも続いている。

[原文:The year in fashion controversies]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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