【Hothotレビュー】65Wで扱いやすくなっても高性能なRyzen 7000新モデル

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 AMD最新のデスクトップ向けCPU「Ryzen 7000シリーズ」に、TDPを65Wに抑えた省電力モデル3製品が追加される。

 今回は新たに発売される3製品であるRyzen 9 7900、Ryzen 7 7700、Ryzen 5 7600をテストする機会が得られたので、先に発売されているX付きモデルとの比較を通して、そのパフォーマンスを確かめてみた。

 ちなみに国内での販売は1月13日11時を予定しており、価格はRyzen 9 7900が6万9,800円、Ryzen 7 7700が5万3,800円、Ryzen 5 7600が3万7,500円前後を予定している。Xがつくモデルの実売価格と比較すると同等かやや高めなのだが、CPUクーラーが付属するため別途出費の必要がないのもポイントだ。

65W版Ryzen 7000をライブ配信でも解説!性能は冷やしやすさは?【1月9日(月)23時より】

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 65W版Ryzen 7000(Ryzen 9 7900、Ryzen 7 7700、Ryzen 5 7600)をライブ配信にて解説します。製品仕様・特徴の解説、ベンチマーク結果の寸評、実動デモなど盛りだくさんの内容でお届け。解説を務めるのはKTU・加藤勝明氏。MCは改造バカ・高橋敏也氏です。今回も日本AMD公式配信AMD HEROES WORLDとコラボレーション。同番組から日本AMDの佐藤美明氏、鈴木咲さんをお迎えします。

12コア以下で展開される65W版Ryzen 7000シリーズ

 最初に発売されるTDP 65W版Ryzen 7000シリーズは、12コア/24スレッドCPUのRyzen 9 7900、8コア/16スレッドのRyzen 7 7700、6コア/12スレッドのRyzen 5 7600の3モデル。

 既存のデスクトップ向けRyzen 7000シリーズと同じSocket AM5対応CPUであり、Zen 4アーキテクチャに基づいて5nmプロセスで製造されたCCDと、6nmプロセスで製造されたIODで構成されている。各製品の主な仕様は以下の通り。

【表1】65W版Ryzen 7000シリーズの主な仕様
モデルナンバー Ryzen 9 7900 Ryzen 7 7700 Ryzen 5 7600
CPUアーキテクチャ Zen 4 Zen 4 Zen 4
製造プロセス 5nm CCD + 6nm IOD 5nm CCD + 6nm IOD 5nm CCD + 6nm IOD
CPUコア数 12 8 6
CPUスレッド数 24 16 12
L2キャッシュ 12MB 8MB 6MB
L3キャッシュ 64MB 32MB 32MB
ベースクロック 3.7GHz 3.8GHz 3.8GHz
ブーストクロック 5.4GHz 5.3GHz 5.1GHz
CPU内蔵GPU (iGPU) Radeon Graphics Radeon Graphics Radeon Graphics
GPUコア数 2 2 2
ストリーミングプロセッサ 128基 128基 128基
対応メモリ DDR5-5200(2ch) DDR5-5200(2ch) DDR5-5200(2ch)
PCI Express PCIe 5.0 PCIe 5.0 PCIe 5.0
TDP 65W 65W 65W
PPT 88W 88W 88W
TDC/EDC 75A/150A 75A/150A 75A/150A
TjMAX 95℃ 95℃ 95℃
付属CPUクーラー Wraith Prism Wraith Prism Wraith Stealth
対応ソケット Socket AM5 Socket AM5 Socket AM5
市場予想価格 429ドル 329ドル 229ドル

 65W版Ryzen 7000シリーズの3製品のパッケージにはAMD純正クーラーが付属している。同梱されているクーラーは、Ryzen 9 7900とRyzen 7 7700が「Wraith Prism」で、Ryzen 5 7600が「Wraith Stealth」。どちらのクーラーもSocket AM4製品に付属していた同名クーラーと同じデザインを採用しているようだ。

Ryzen 9 7900とRyzen 7 7700に付属する「Wraith Prism」

Wraith Prismのベース面。銅製かつヒートパイプが直接CPUに接触する仕様で、サーマルグリスが塗布されている

Ryzen 5 7600に付属する「Wraith Stealth」

Wraith Prismのベース面。接触面を含めてヒートシンクはすべてアルミで構成されている

テスト機材と比較環境

 65W版Ryzen 7000シリーズの比較機材として、先に発売されているX付きRyzen 7000シリーズから「Ryzen 9 7900X」、「Ryzen 7 7700X」、「Ryzen 5 7600X」を用意した。

 マザーボードとメモリについては、X付きRyzen 7000シリーズのレビュアーズキットから、AMD X690Eチップセット搭載マザーボード「ASRock X670E Taichi」と、DDR5-6000動作の16GBメモリ2枚組「G.Skill F5-6000J3038F16GX2-TZ5N」を流用した。

 マザーボードのBIOSはAMD推奨の「1.11.AS06」を使用し、メモリの動作クロックについてはEXPO設定を適用した上で、CPUの定格最大メモリクロックであるDDR5-5200に設定している。そのほかの機材や設定については以下の通り。

【表2】テスト機材
CPU Ryzen 9 7900 Ryzen 7 7700 Ryzen 5 7600 Ryzen 9 7900X Ryzen 7 7700X Ryzen 5 7600X
コア数/スレッド数 12C/24T 8C/16T 6C/12T 12C/24T 8C/16T 6C/12T
CPU電力リミット PPT=88W PPT=88W PPT=88W PPT=230W PPT=142W PPT=142W
CPU電流リミット TDC=75A、EDC=150A TDC=75A、EDC=150A TDC=75A、EDC=150A TDC=160A、EDC=225A TDC=95A、EDC=140A TDC=95A、EDC=140A
CPU温度リミット 95℃ 95℃ 95℃ 95℃ 95℃ 95℃
マザーボード ASRock X670E Taichi [UEFI=1.11.AS06]
メモリ DDR5-5200 16GB×2 (2ch、30-38-38-96、1.35V)
CPUクーラー ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB (ファンスピード=100%)
ビデオカード Radeon RX 7900 XTX (24GB)
GPUドライバ 22.12.2 (31.0.14000.61002)、Resizable BAR=有効
システム用SSD Samsung SSD 980 PRO 500GB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSD CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps)
電源 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1,200W/80PLUS Platinum)
OS Windows 11 Pro 22H2 (build 22621.963、VBS有効)

12コア/24スレッドCPU「Ryzen 9 7900X」

8コア/16スレッド「Ryzen 7 7700X」

6コア/12スレッド「Ryzen 5 7600X」

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマークテストの結果をみていこう。

 実施したベンチマークテストは、「CINEBENCH R23」、「Blender Benchmark」、「やねうら王」、「Adobe Photoshop」、「DaVinci Resolve 18」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra」、「3DMark」、「VRMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Forza Horizon 5」、「オーバーウォッチ 2」、「フォートナイト」、「エーペックスレジェンズ」、「サイバーパンク2077」、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」、「Microsoft Flight Simulator」。

CINEBENCH

 CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCINEBENCH R23では、Multi CoreとSingle Coreを実行した。

 Multi Coreでは、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を約31%、Ryzen 5 7600Xを約73%上回っており、65W版Ryzen同士の比較では順当に差がついている。一方、65W版Ryzenが記録したスコアを同じモデルナンバーのX付きモデル比で見た場合、Ryzen 9 7900は約83%、Ryzen 7 7700は約94%、Ryzen 5 7600は約95%となっており、Ryzen 9 7900がもっともX付きモデルとの差が大きかった。

 Single Coreでは、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を約2%、Ryzen 5 7600Xを約6%上回った。各CPUのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は約98%、Ryzen 7 7700は約98%、Ryzen 5 7600は約95%。1スレッドしか稼働しないSingle Coreでは電力リミットが作動しないため、各CPUのブーストクロックの差が反映されている。

【グラフ01】CINEBENCH R23 (R23.200)「Multi Core」

【グラフ02】CINEBENCH R23 (R23.200)「Single Core」

3DMark「CPU Profile」

 3DMarkの「CPU Profile」では、16スレッド以上でRyzen 9 7900がRyzen 7 7700を20~27%、Ryzen 5 7600を55~64%上回っているが、8スレッドでRyzen 7 7700、4スレッド以下ではRyzen 5 7600との差がそれぞれ1割未満となっている。

 65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は82~99%、Ryzen 7 7700は92~97%、Ryzen 5 7600は89~95%。Ryzen 9 7900はスレッド数が多いほどXモデルとの差も大きいが、1~2スレッドではほぼ同等のパフォーマンスを発揮している。

【グラフ03】3DMark v2.25.8056「CPU Profile」(1/2)

【グラフ04】3DMark v2.25.8056「CPU Profile」(2/2)

Blender Benchmark

 Blender Benchmarkでは、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を32~39%、Ryzen 5 7600を72~82%上回っている。

 65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は82~87%、Ryzen 7 7700は92~97%、Ryzen 5 7600は89~95%。

【グラフ05】Blender Benchmark 3.1.0 (Blender v3.4.0)

将棋ソフト「やねうら王」

 将棋ソフトの「やねうら王」では、ベンチマーク機能を利用してマルチスレッドテストとシングルスレッドテストを実行した。

 マルチスレッドテストでは、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を約28%、Ryzen 5 7600を約66%上回った。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は約78%、Ryzen 7 7700は約92%、Ryzen 5 7600は約93%。

 シングルスレッドテストでは、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を約1%、Ryzen 5 7600を約5%上回った。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は約98%、Ryzen 7 7700は約97%、Ryzen 5 7600は約96%。

【グラフ06】やねうら王 v7.61「マルチスレッド (bench 128 nT 19)」

【グラフ07】やねうら王 v7.61「シングルスレッド (bench 128 1 19)」

Adobe Photoshop(Camera RAW)

 Adobe Photoshopでは、プラグインのCamera RAWを使用して2,400万画素のRAWファイル×100枚を最高画質のJPEGファイルに変換するのにかかった時間から、その変換速度を比較した。

 Ryzen 9 7900の変換速度は2.94fpsで、これはRyzen 7 7700を約32%、Ryzen 5 7600を約53%上回る速度だ。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は約97%、Ryzen 7 7700は約97%、Ryzen 5 7600は約96%。

【グラフ08】Adobe Photoshop v24.1.0/Camera RAW 15.1「RAW→JPEG変換」

DaVinci Resolve 18

 DaVinci Resolve 18では、カメラで撮影した2160p60(4K60p)動画に字幕を追加したものを、YouTube向けプリセットでレンダリングしたさいの処理速度を比較した。

 Ryzen 9 7900はRyzen 7 7700を15~27%、Ryzen 5 7600を53~62%上回った。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は約92%、Ryzen 7 7700は94~95%、Ryzen 5 7600は93~95%。

【グラフ09】DaVinci Resolve 18 (v18.1.2 BUILD 6)

動画エンコードソフト「HandBrake」

 オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードして、その処理速度を比較した。

 Ryzen 9 7900はRyzen 7 7700を16~27%、Ryzen 5 7600を37~62%上回った。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は85~92%、Ryzen 7 7700は92~95%、Ryzen 5 7600は94~95%。

【グラフ10】HandBrake v1.5.1

動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」

 動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHD(1080p)と4K(2160p)のソース動画をH.264形式とH.265形式に変換した際のエンコード速度を計測した。

 H.264形式への変換では、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を2~29%、Ryzen 5 7600を13~66%上回った。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は84~89%、Ryzen 7 7700は94~95%、Ryzen 5 7600は94~96%。

 H.265形式への変換では、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を8~28%、Ryzen 5 7600を27~53%上回った。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は84~88%、Ryzen 7 7700は約93%、Ryzen 5 7600は94~96%。

【グラフ11】TMPGEnc Video Mastering Works 7 (v7.0.25.28)「H.264形式へのエンコード」

【グラフ12】TMPGEnc Video Mastering Works 7 (v7.0.25.28)「H.265形式へのエンコード」

PCMark 10

 PCMark 10では、もっとも詳細なテストである「PCMark 10 Extended」を実行した。

 Ryzen 9 7900の総合スコアは、Ryzen 5 7600を約3%上回る一方で、Ryzen 7 7700を約2%下回っている。これは特にGamingでのスコア差が影響した結果のようで、X付きモデルでも同じようにGamingのスコア差が原因でRyzen 9 7900XがRyzen 7 7700Xの総合スコアをわずかかに下回っている。

 65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は94~98%、Ryzen 7 7700は97~99%、Ryzen 5 7600は94~97%。

【グラフ13】PCMark 10 Extended (v2.1.2574)

SiSoftware Sandra 「CPUベンチマーク」

 SiSoftware SandraのCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の結果を紹介する。

 CPUの演算性能を測定するArithmeticでは、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を31~37%、Ryzen 5 7600を70~78%上回った。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は83~88%、Ryzen 7 7700は94~95%、Ryzen 5 7600は95~96%。

 マルチメディア性能を測定するMulti-Mediaでは、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を33~40%、Ryzen 5 7600を76~114%上回った。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は83~90%、Ryzen 7 7700は94~100%、Ryzen 5 7600は93~95%。

 画像処理性能を計測するImage ProcessingではDiffusion以外の項目で、Ryzen 9 7900がRyzen 7 7700を22~39%、Ryzen 5 7600を48~82%上回っているが、DiffusionではRyzen 7 7700を約22%、Ryzen 5 7600を約14%下回っている。DiffusionについてはRyzen 9 7900XもRyzen 7 7700XやRyzen 5 7600Xを下回っていることから、2CCD構成のボトルネックが生じているものと考えられる。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は78~96%、Ryzen 7 7700は92~98%、Ryzen 5 7600は93~99%。

SiSoftware Sandra「メモリベンチマーク」

 SiSoftware Sandraで、メインメモリの帯域幅とレイテンシの計測を行なった。

 メモリクロックはすべてのCPUでDDR5-5200に設定されているため、メモリ帯域幅については50~51GB/sの範囲で横並びとなっている。メモリレイテンシについてはRyzen 5 7600が65.6nsと、ほかのCPUよりやや大きな数値となっているが、ほかのCPUも63ns前後なので誤差の範囲内と言って差し支えない結果だ。

【グラフ19】SiSoftware Sandra v31.112 「Memory Bandwidth (メモリ帯域幅)」

【グラフ20】SiSoftware Sandra v31.112 「Cache & Memory Latency (メモリレイテンシ)」

SiSoftware Sandra「キャッシュベンチマーク」

 CPU内蔵キャッシュのレイテンシや帯域幅を測定した結果が以下のグラフだ。

 レイテンシについては、32MBでRyzen 5 7600がやや高い数値となっているものの、キャッシュの構造や特性の違いを感じるような大きな変化はみられない。一方、キャッシュの帯域幅についてはコア数や動作クロックの影響を受けるため、65W版RyzenはXモデルよりやや低い数値となっていることが確認できる。

【グラフ21】SiSoftware Sandra v31.112 「Cache & Memory Latency (レイテンシ)」

【グラフ22】SiSoftware Sandra v31.112 「Cache & Memory Latency (クロック)」

【グラフ23】SiSoftware Sandra v31.112 「Cache Bandwidth」

3DMark

 3DMarkでは、「Speed Way」、「Port Royal」、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」を実行した。

 GPU負荷の高いSpeed WayやPort Royalでは、すべてのCPUのスコアがほぼ横並びと言える結果となっている一方、Time Spyではコア数の多いCPUが有利な結果、Fire Strikeでは2CCD構成のRyzen 9 7900とRyzen 9 7900Xのスコアが伸びていない。

 Wild Lifeについては、負荷の軽い無印版Wild LifeではFire Strike同様2CCD構成のCPUがスコアを伸ばせていない一方、Wild Life Extremeではなぜか65W版がX付きモデルを2%ほど上回るスコアで横並びとなっている。前者は3DMarkのレガシーなテストと2CCD構成の相性によるものだと思われるが、後者については複数回実行しても同様の結果が得られたものの、その理由は不明だ。

VRMark

 VRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」を実行した。

 5K解像度で実行されるBlue Roomについては、GPUがボトルネックとなるためCPU性能の差がスコアに反映されていない。

 Orange RoomやCyan Roomについては、2CCD構成のRyzen 9 7900とRyzen 9 7900Xが明らかに低いスコアとなっている。2CCD構成のCPUが性能を発揮できないことは既知の現象であり、先に紹介した3DMarkのFire StrikeやWild Life同様テストとの相性だ。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は約97%、Ryzen 7 7700は97~99%、Ryzen 5 7600は92~97%。

【グラフ29】VRMark v1.3.2020「スコア」

【グラフ30】VRMark v1.3.2020「平均フレームレート」

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」にして、3種類の画面解像度でテストを実行した。

 4KではCPU性能の差がスコアに反映されていないが、WQHD以下では8コアCPUのRyzen 7 7700XとRyzen 7 7700がほかのCPUよりやや高いスコアを記録している。WQHD以下の画面解像度における65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は約99%、Ryzen 7 7700は97~99%、Ryzen 5 7600は97~98%。

【グラフ31】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「スコア」

【グラフ32】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「平均フレームレート」

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画品質を「高品質」にして、3種類の画面解像度でテストを実行した。

 条件によってCPUの優劣は分かれているが、WQHD以上では各CPUの差は僅差となっており、ある程度差が目立つフルHDではRyzen 7 7700XとRyzen 7 7700がほかのCPUを上回るスコアを記録している。

【グラフ33】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.3

Forza Horizon 5

 Forza Horizon 5では、描画品質を「エクストリーム」に設定したフルHD~4Kの画面解像度と、フルHD解像度で描画品質を「中」に引き下げた高fps設定で、ゲーム内ベンチマークモードを実行した。

 描画品質「エクストリーム」設定では各CPUのフレームレートが横並びとなっている。高fps設定ではRyzen 7 7700とRyzen 5 7600Xが232fpsで並んでおり、Ryzen 7 7700Xがそれに次ぐ231fpsを記録した。これらのCPUと最下位だったRyzen 9 7900の間には約10fpsの差がついている。

【グラフ34】Forza Horizon 5 (v1.538.198.0.HV)

オーバーウォッチ 2

 オーバーウォッチ 2では、描画品質を「エピック」に設定したフルHD~4Kの画面解像度でフレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは600fps。

 フルHDでRyzen 9 7900がほかのCPUよりやや低いフレームレートとなっているが、それを除けば全体的に横並びに近い結果となっている。計測の都合上オーバーウォッチ 2ではフレームレートのブレが生じやすいので、この程度の差であれば各CPUはほぼ同等のパフォーマンスを発揮していると考えて良さそうだ。

【グラフ35】オーバーウォッチ 2 (v2.2.0.2.107804)

フォートナイト

 フォートナイトでは、グラフィックプリセット「最高」をベースにNaniteやLumenを無効化した設定で、フルHD~4Kの画面解像度と、アンチエイリアスを「TAA」と「TSR最高」に設定した場合のフレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12。

 アンチエリアス「TAA」では、WQHDで210fps前後、4Kで124fps前後で横並びとなっており、CPUの違いがはっきり反映されているのはフルHDのみとなっている。フルHDでは、65W版でもX付きでも8コアCPUのRyzen 7がRyzen 9とRyzen 5を上回っている。

 アンチエリアス「TSR最高」では、4Kで198fps前後で横並びとなっている。WQHD以下ではTAA設定と同じくRyzen 7 7700がRyzen 9 7900とRyzen 5 7600を上回っている。WQHD以下の画面解像度における65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は96~98%、Ryzen 7 7700は98~99%、Ryzen 5 7600は約98%。

【グラフ36】フォートナイト (v23.10)「アンチエイリアス=TAA」

【グラフ37】フォートナイト (v23.10)「アンチエイリアス=TSR最高」

エーペックスレジェンズ

 エーペックスレジェンズでは、描画品質を可能な限り高く設定して、フルHD~4Kの画面解像度でフレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは300fps。

 このタイトルではCPU性能の差がフレームレートにほとんど反映されていない。フルHD時に上限である300fpsに近い293fpsに近い平均フレームレートを出せていることを考えると、いずれのCPUも上限フレームレートを引き出すのに十分なCPU性能を備えていると考えて良さそうだ。

【グラフ38】エーペックスレジェンズ (v3.0.21.51)

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077では、グラフィックプリセットを「レイトレーシング:ウルトラ」にして、フルHD~4Kの画面解像度でベンチマークモードを実行した。

 ここでも各CPUが記録した平均フレームレートはほぼ横並びだった。この時のGPU使用率はほぼ100%なので、Radeon RX 7900 XTXの性能を最大限に引き出した結果であると言える。

【グラフ39】サイバーパンク2077 (v1.61)

モンスターハンターライズ:サンブレイク

 モンスターハンターライズ:サンブレイク では、描画品質を「高」にして、フルHD~4Kの画面解像度でフレームレートを計測した。

 4KではすべてのCPUが153fps前後で横並びとなっているが、WQHD以下ではCPUの違いでフレームレートに差が生じており、Ryzen 9 7900はRyzen 7 7700を8~10%、Ryzen 5 7600を12~13%上回った。これはおそらくキャッシュ容量の差が効いているものと思われ、XモデルもRyzen 9がRyzen 7やRyzen 5を大きく上回っている。

 WQHD以下の画面解像度における65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は91~92%、Ryzen 7 7700は約96%、Ryzen 5 7600は96~97%。

【グラフ40】モンスターハンターライズ:サンブレイク (v13.0.0.1)

Microsoft Flight Simulator

 Microsoft Flight Simulatorでは、描画設定を「ウルトラ」にしたフルHD~4Kの画面解像度と、フルHD解像度で描画品質を「ミドル」に引き下げた高fps設定でフレームレートを測定した。グラフィックスAPIは「DirectX 12」で、羽田空港から関西国際空港へのルートをエアバスA320neoでAIに飛行させ、離陸から3分間の平均フレームレートを計測している。

 65W版Ryzenで最も高いフレームレートを記録したのはRyzen 7 7700で、Ryzen 9 7900を0~7%、Ryzen 5 7600を2~8%上回っている。65W版RyzenのXモデル比でのパフォーマンスは、Ryzen 9 7900は97~99%、Ryzen 7 7700は98~103%、Ryzen 5 7600は94~97%。

【グラフ41】Microsoft Flight Simulator (v1.29.30.0)

CPUベンチマーク実行中のシステム消費電力と電力効率

 ワットチェッカーを使ってシステムの消費電力を測定し、アイドル時の最小消費電力と、CPUベンチマーク実行中の平均消費電力および最大消費電力をグラフ化した。

 アイドル時消費電力がもっとも低かったのは96.2WのRyzen 5 7600で、98.7WのRyzen 7 7700がそれに続いている。2CCD構成のRyzen 9 7900は105.1Wとなっており、これはRyzen 9 7900Xの105.2Wとほぼ同じで、1CCD構成のRyzen 7以下のCPUよりやや高い数値となっている。

 65W版RyzenのCPUベンチマーク実行中の平均システム消費電力は、180~200W未満の範囲で近い数値となっており、Xモデルでもっとも省電力なRyzen 5 7600Xの217.0~235.2Wよりも低い値となっている。これは、65W版Ryzenの電力リミットであるPPTがすべて88Wに設定されていることにより、電力リミットスロットリングによって消費電力が抑制されるためだろう。

【グラフ42】CPUベンチマーク実行中とアイドル時のシステムの消費電力(平均/最大)

 CPUベンチマークのスコアを平均消費電力で割ったワットパフォーマンスを比較したグラフと、Ryzen 5 7600Xを基準に指数化したグラフを用意した。なお、PhotoshopとTMPGEnc Video Mastering Works 7については数値が小さくなりすぎるため、数値を1,000倍にしてグラフ化している。

 CPUベンチマークにおいて、最もワットパフォーマンスに優れたCPUはRyzen 9 7900で、Ryzen 7 7600X比で1.72~1.91倍の電力効率を実現している。それに次ぐのがRyzen 7 7700の1.33~1.53倍で、1.13~1.18倍のRyzen 5 7600はRyzen 7 7700Xに近い電力効率となっている。

【グラフ43】CPUベンチマークのワットパフォーマンス(スコア/平均消費電力)

【グラフ44】CPUベンチマークのワットパフォーマンス(Ryzen 5 7600X比)

ゲームベンチマーク実行中のシステム消費電力と電力効率

 ワットチェッカーを使って計測した、ゲームベンチマーク実行中の平均消費電力および最大消費電力をグラフ化した。

 65W版RyzenのXモデル比での平均消費電力は、Ryzen 9 7900は94~98%、Ryzen 7 7700は97~98%、Ryzen 5 7600は98~99%となっており、システム全体ではXモデルと大差ない電力を消費している。

【グラフ45】ゲームベンチマーク実行中のシステムの消費電力(平均/最大)

 ゲームベンチマークのスコアを平均消費電力で割ったワットパフォーマンスを比較したグラフと、Ryzen 5 7600Xを基準に指数化したグラフを見ると、Ryzen 5とRyzen 7はTDPに関係なく近い電力効率となっているのに対し、Ryzen 9はやや電力効率が低い。

 Ryzen 9については、ベンチマークスコア自体が振るわなかったものがあることに加え、2CCD構成のせいか消費電力的にもやや高い数値となっているものがあり、結果的にシステムの電力効率としては1CCD構成の下位モデルを下回ることになったようだ。

【グラフ46】ゲームベンチマークのワットパフォーマンス(スコア/平均消費電力)

【グラフ47】ゲームベンチマークのワットパフォーマンス(Ryzen 5 7600X比)

CPU温度とモニタリングデータ(CINEBENCH R23)

 モニタリングソフトのHWiNFO64 Proを使って取得した、CINEBENCH R23のMulti Coreテスト実行中のモニタリングデータをまとめてみた。

 ベンチマーク実行中のCPU温度は、Ryzen 9 7900が最大49.0℃(平均45.9℃)で、Ryzen 7 7700は最大60.8℃(平均60.3℃)、Ryzen 5 7600は最大67.9℃(平均68.8℃)となっており、サーマルスロットリングが作動する温度リミット(TjMAX)の95℃を大きく下回っている。これらは90℃前後に達するXモデルより明らかに低い温度であり、65W版Ryzenは冷却が容易なCPUであると言える。

 一方、65W版RyzenのCPU消費電力はリミット値である88Wに張り付いており、テスト中は常に電力リミットスロットリングが作動していたことが伺える。結果的に、平均CPUクロックはRyzen 9 7900が4,187MHz、Ryzen 7 7700は4,755MHz、Ryzen 5 7600は4,916MHzとなっており、いずれも5,100MHz以上で推移しているXモデルより低いCPUクロックとなっている。

CPU温度とモニタリングデータ(ファイナルファンタジーXIVベンチマーク)

 CINEBENCH R23と同じように、ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークを「フルHD/最高品質」設定で実行したさいのモニタリングデータをまとめてみた。

 65W版RyzenのCPU温度は、Ryzen 9 7900が最大55.8℃(平均49.1℃)で、Ryzen 7 7700は最大57.8℃(平均49.1℃)、Ryzen 5 7600は最大52.8℃(平均47.0℃)で、サーマルスロットリングは作動していない。CPU消費電力についてはRyzen 9 7900のみ最大値がリミットの88Wに達しているが、Ryzen 7 7700とRyzen 5 7600はリミット値に達していないので、電力リミットスロットリングが作動したのはRyzen 9 7900のみとなっている。

 CPUクロックについてはRyzen 9 7900が平均4,863MHzで、Ryzen 7 7700は平均4,694MHz、Ryzen 5 7600は平均4,601MHzとなっており、Ryzen 9 7900がもっとも高いCPUクロックで動作していた。

いつの間にかパフォーマンスが向上していた内蔵GPU「Radeon Graphics」

 最後に、IODに統合されたRDNA 2ベースのGPUコア「Radeon Graphics」のパフォーマンスを確認してみよう。

 テスト環境は以下の通りで、GPUドライバには「22.20.42」を導入している。

【表3】内蔵GPUテスト機材
【表3】内蔵GPUテスト機材
CPU Ryzen 9 7900 Ryzen 7 7700 Ryzen 5 7600 Ryzen 9 7900X Ryzen 7 7700X Ryzen 5 7600X
コア数/スレッド数 12C/24T 8C/16T 6C/12T 12C/24T 8C/16T 6C/12T
CPU電力リミット PPT=88W PPT=88W PPT=88W PPT=230W PPT=142W PPT=142W
CPU電流リミット TDC=75A、EDC=150A TDC=75A、EDC=150A TDC=75A、EDC=150A TDC=160A、EDC=225A TDC=95A、EDC=140A TDC=95A、EDC=140A
CPU温度リミット 95℃ 95℃ 95℃ 95℃ 95℃ 95℃
内蔵GPU Radeon Graphics Radeon Graphics Radeon Graphics Radeon Graphics Radeon Graphics Radeon Graphics
GPUドライバ 22.20.42 (31.0.12042.4)
マザーボード ASRock X670E Taichi [UEFI=1.11.AS06]
メモリ DDR5-5200 16GB×2 (2ch、30-38-38-96、1.35V)
CPUクーラー ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB (ファンスピード=100%)
システム用SSD Samsung SSD 980 PRO 500GB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSD CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps)
電源 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1,200W/80PLUS Platinum)
OS Windows 11 Pro 22H2 (build 22621.963、VBS有効)
電源プラン バランス
室温 約24℃

 今回テストしたCPUに統合されているGPUコアは、いずれも2基のコンピュートユニット(CU)を備えたRDNA2ベースのGPUコアであり、どのCPUでも同程度のパフォーマンスを発揮している。

 ここで注目したいのは、Ryzen 7000シリーズ発売直後にテストした時よりも内蔵GPUの性能が大きく向上している点だ。例えば、最初期にRyzen 9 7950Xで計測した3DMark PortRoyalのスコアは「97」だったが、今回は「300」以上のスコアが出ているので、最初期に比べ3倍以上ものパフォーマンスを発揮している。

 ほかのテストやゲームでもパフォーマンスが向上しており、GPU負荷の軽いゲーム程度であれば動かせる程度にはなっている。注目に値するほどGPU性能を備えているわけではないが、最初期のベンチマーク結果とはだいぶ印象が変わるはずだ。

省電力かつ低発熱で扱いやすい65W版Ryzen 7000シリーズ

 TDPが65WになったRyzen 7000シリーズは、電力リミットのPPTが88Wに制限されたことによって低消費電力と低発熱を実現しており、大電力の消費が許容されている105W版や170W版のX付きRyzen 7000シリーズより扱いやすいCPUとなっている。

 X付きのRyzen 7000シリーズもRyzen MasterでEcoモードを利用するなどすれば、同様の動作を実現することは可能だが、こうしたチューニングを行なわずとも、扱いやすい動作設定でZen 4のパフォーマンスを得られるのが65W版Ryzen 7000シリーズの魅力である。

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