1日に何度も行くトイレが健康の情報源になったら――この夢をかなえる製品が、ラスベガスで開催されているテクノロジー見本市「CES 2023」で発表された。Withingsの「U-Scan」は、便器に取り付けるだけで、トイレを使うたびに尿を分析してくれるセンサーだ。
提供:Withings
病院で尿検査をしたことのある人なら、尿が健康に関する情報の宝庫だと知っているだろう。尿を調べれば、脱水症、妊娠、感染の可能性はもちろん、臓器の健康状態さえ分かる。Withingsはこうしたバイオマーカーに注目し、2023年前半に2種類のコンシューマー向けU-Scanを欧州で発売する。米食品医薬品局(FDA)の承認が得られれば、米国でも販売を開始する計画だ。
U-Scanには2種類の専用カートリッジが用意されている。「U-Scan Nutri Balance」カートリッジは、尿に含まれるケトン体やビタミンCの濃度を測定し、尿のpHを検査することで栄養や代謝の状態をモニタリングするものだ(pH値の高低により腎臓機能の状態などが分かる)。
もう1つの「U-Scan Cycle Sync」カートリッジは、黄体形成ホルモン(LH)の波を測定することで、女性が月経周期を正確に把握できるようサポートするものだ。LHの分泌量が急激に増えているときは排卵が近く、妊娠の可能性が高いことを意味する。このカートリッジでも尿のpHを測定可能だ。
もちろん、LHの分泌状況やケトン体濃度などを測定できる家庭用尿検査薬はすでにいくつも存在する。Vivooのような尿検査サービスは、検査結果とアプリを組み合わせることで、自分の身体に関する詳細なデータを得られるだけでなく、測定値の意味も教えてくれる。しかし、一度設置すれば勝手に測定してくれるWithingsのセンサーと比べて、こうした検査薬やサービスは手間がかかる。
「センサーのことは考えず、普段通りに生活するだけでいい」と言うのは、Withingsの最高経営責任者(CEO)、Mathieu Letombe氏だ。
提供:Marlene Ford/Getty Images
Withingsによると、U-Scanの性能を最大限に引き出すためには、センサーを便器の前面に取り付ける必要があるという(つまり、普段立って排尿している人は座ってするか、何らかの工夫が必要だ)。尿は小さな採尿口に入るよう設計されている。同社によれば、U-Scanは尿と尿以外の液体、例えばトイレの水を区別できるという。温度センサーが尿を検知すると、尿は試験容器に入り、分析が終わるとU-Scanから放出され、水と共に流される。
分析結果はWi-Fi経由でユーザーのスマートフォンに転送されるため、同社の「Health Mate」アプリで毎日自分の健康状態をチェックできる。
1つのカートリッジで約3カ月分の検査ができる。Letombe氏によれば、U-Scanは「尿が流れる距離と速度」を基に、尿がユーザーのものか、来客のものかを識別できると言う。
まだFDAの承認が得られていないため、米国での販売価格は決まっていないが、欧州では4~6月に、いずれかのカートリッジを内蔵したU-Scanを499.95ユーロ(約7万円)で入手できるようになる。より多くのデータを取得したい場合は、両方のカートリッジを選択することも可能だ。WithingsはU-Scanを皮切りに、次々と新製品を発売する予定だという。同社はすでにスマートウォッチやウェアラブルセンサーなど、健康をデータ化するさまざまなデバイスを扱っているが、今後は医療機器のラインアップも拡大していく計画だ。
【注釈】この記事に含まれる内容は情報提供のみを目的としており、健康や医療に関する助言を目的としたものではありません。健康状態や疾患について懸念がある場合は必ず医療提供者に相談してください。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。