ドイツ連邦国防省所有のITサービスプロバイダーであるBWIはオープンソースメッセンジャーである「Element」を修正したドイツの行政機関向けの「BundesMessenger」のベータ版をリリースし、テストを行っています。
BWI – IT für Deutschland – BundesMessenger
https://messenger.bwi.de/bundesmessenger
BundesMessenger shows Germany’s embrace of open standard messaging
https://element.io/blog/bundesmessenger-is-a-milestone-in-germanys-ground-breaking-vision/
BWIが開発したBundessMessengerは、分散型でオープンソースのメッセージプロトコル「Matrix」を採用したチャットアプリのElementを、行政機関向けに改良したものです。BWIとElementが共同で開発・保守を行っています。
無料&広告なし&時間制限なしでビデオ会議・音声通話・ファイル共有できてセキュアなチャットアプリ「Element」 – GIGAZINE
SlackやMicrosoft Teamsといったメッセンジャーアプリは、ツール内でメッセージのやり取りを行うため、別のメッセンジャーアプリとメッセージのやり取りを行うことはできません。
一方でMatrixをベースにしたBundesMessengerはGmailやOutlookのような相手のクライアントに関わらず誰にでもメッセージが安全に送信できる、電子メールクライアントに近い仕組みになっているため、別のメッセンジャーアプリとリアルタイムで通信を行うことが可能です。
政府間で安全な通信を確立するには相互運用性が不可欠です。一例としてフランスの行政機関ではMatrixベースのプラットフォーム「Tchap」を採用しており、これにより政府機関同士での安全なメッセージのやり取りが可能となっているとのこと。こういった方針をドイツでも採用するべく、BWIはBundesMessengerの開発を続けているというわけ。なお、ドイツの開発するBundesMessengerは、フランスのTchapと簡単に連携できるようになる予定です。
また、BundesMessengerのデータはクラウド上に保存されることはなく、ローカルに保存されるため、ユーザーが常に管理することが可能です。
BundesMessengerではElementでも可能だった永続的なエンドツーエンド暗号化だけでなく、受信した添付ファイルを自動的にチェックするウィルススキャナーが搭載され、セキュリティが強化されます。さらに、BundesMessengerのシステムはそれぞれの行政機関によって運営されるため、送受信されるデータがサービスプロバイダに不正に閲覧される危険性もありません。
また、BundesMessengerはオープンソースで、すべてのソースコードが公開されることからBundesMessengerの透明性が高くなり、その結果ソフトウェアの開発元による秘密裏のデータの読み取りやトラッキングが不可能になるとアピールされています。
BWIはアプリのシステムメンテナンスとさらなる開発を担当し、BundesMessengerは毎月無料で更新されるそうです。
BWIはBundesMessengerの目標として「ドイツ政府のニーズに適応できるオープンソースに基づく最新かつ安全なElementとのコラボレーションプラットフォームを作成することです」と述べています。
また、ドイツの行政機関は全国的なリアルタイム通信インフラを構築している過程にあり、「各組織間の簡単な接続を可能にする」「堅牢で回復力のある分散型通信ネットワークの構築」「エンドツーエンド暗号化によって保護される」などの実現が目標として掲げられており、BundesMessengerもこれらを準拠する仕様となります。
BundesMessengerはすべての一般的なスマートフォン、タブレットおよびコンピューターで使用でき、Apple、Androidなどのアプリストアから無料でダウンロードが可能ですが、記事作成時点では日本からのダウンロードは不可能でした。
BundesMessenger – App Store
BundesMessenger – Google Play のアプリ
BundesMessengerはベータテストを行った後、2023年の第1四半期にアプリのすべての機能を簡単に試すことができるデモ環境が提供され、2023年の第3四半期に製品版のリリースが行われる予定です。
この記事のタイトルとURLをコピーする