話題のバンドアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』がバンドマンに受け入れられている理由

ロケットニュース24

2022年秋アニメのダークホースと言えば『ぼっち・ざ・ろっく!』だろう。実は、1話目を見た段階で書いたオススメ7選の記事でもオススメしていたのだが、ここまで盛り上がるとは。私(中澤)は、今や、『チェンソーマン』よりも最新話配信を楽しみにしている

そんな『ぼっち・ざ・ろっく!』は、ミュージシャンうけがかなり良いことも特徴だ。私はバンドマンでもあるのだが、普段アニメの話をしない音楽仲間から本作の話を振られたりするのである。バンドマンにも受け入れられる本作の魅力とは?

・バンドマンがバンドマンガを見て思うこと

前述の通り、バンドマンにしてアニメ好きである私。ちなみに、アニメは毎クール公開される作品の1話は全部チェックしているし、バンド活動も17年くらいやってる。どっちも結構筋金入りなのではないだろうか。

となれば、当然、バンドがテーマのアニメなんて大好物だと思うかもしれないが、これが案外逆である。リアルを知りすぎているがゆえか、「違うんだよなー」と思う部分が気になってしまうのだ。

・違和感

で、私はギタリストなので、そんな違和感の1つにギタリストの人間性がある。バンドマンガでは、大体の場合、ギタリストは無口でミステリアスで苦悩を抱えたセクシーなキャラだ。

『NANA』のレン、『Desperado』の黒須くん、『特攻の拓』の天羽“セロニアス”時貞……比較的、バンドマンに好まれているマンガ『BECK』の竜介でさえもそう。しかし、これは極めてファン目線に寄った見方だと思う。現実はこうだ


無口 → シンプルにコミュ力が低い
苦悩 →「客呼ばなきゃいけないのに友達いないどうしよう」「下手だと思われてるんじゃないか」「明日バイト行きたくねえな」


──私はライブハウスの対バンでこれまで100人以上のギタリストに会ったが9割9分が根暗だった。もちろん、私も例外ではない。ライブの打ち上げなどでも、ドラマー同士は仲良くなるけど、ギタリスト同士はあんまり話さないのはあるあるだ。

意味の分からないことでキレだすのもコミュ障ゆえ。そういった圧倒的なコミュ力不足が、外見によって、ミステリアスに見えたり、セクシーに見えたりしているだけなのだと思う。ゆえに、レンとか竜介みたいに、無口&ミステリアスなギタリストが、話し始めたら他人とフラットに話せることが違和感でしかないのだ。

・一方

私が『ぼっち・ざ・ろっく!』の何が凄いと思ったかって、描かれるギタリスト像にその類の違和感がないこと。主人公の後藤ひとりは、まさにこちら側から見たギタリスト像そのものである。

カリスマでもなければスターでもない。人を前にすると頭が真っ白になる。絞り出した言葉は流れに乗れず、嫌われてるんじゃないかと被害妄想に自己嫌悪。ギタリストってそんなもんだ。

・なぜギタリストはそんな人が多いのか

では、なぜギタリストにそんな人が多いのか。個人的な見解を言うなら、それはギターが難しいからだと思う。有名なのは「Fの壁」というもの。Fコードを押さえられなくてやめる人はめちゃくちゃ多い。

しかし、Fを押さえられたと思ったらBにも壁があって、さらには、コードを押さえられたところで、ソロは全くの別スキル。さらにさらに、ソロを弾き始めると抜ける音作りをしなきゃいけないし、レコーディングし始めると、押弦の強さでピッチがベンドして音痴に聞こえるなどの細かい問題も気になってくる。

老舗ギターブランド・フェンダーのデータでは、初心者が1年以内にギターを辞める確率は実に90パーセントなのだとか。

ほとんどの人がスムーズに奏でられるようになる前にやめる楽器なのである。楽しいだけでは続かない。そんなギターを弾き続けているだけでなくステージにまで立つというのは、何か強固な動機を持っていないと無理だと思う。

例えば、私の場合は、自分を変えたいからだった。友達もいない、面白くもない、やりたいことも何もできないどうしようもない人生を変えたかった。どうやっても周りのようにうまくできなかったからこそギターを手に取ったのである。

結局は、そういった強固な動機を持つ人しか残らないから、会う人みんな素は根暗なのかもしれない。強引に言うと、自分を変えられた一握り以外は、全員変えたい自分がある人なのだ。

・ステージに立つことに筋が通ってる

『ぼっち・ざ・ろっく!』の後藤ひとりは、そういった動機の面でも非常にリアル。ゆえに、「友達が死んだから」とか「楽しいから」とかよりも、怖くてもステージに立つことに筋が通っている。ギタリストって本当にこんなもんなのだ。


もちろん、『NANA』とか『BECK』は作品としては大好きだし、なんならああいうバンドマンガの世界観に憧れてバンドを始めたまであるんだけど。これまでのバンドマンガでよくあったギタリスト像が理想だとすると、『ぼっち・ざ・ろっく!』は現実という感じ。

バンドマンガやアニメを全部見ているわけではないから断言はできないが、ギタリスト像をここまでリアルに描いている作品って初めてなのではないだろうか。バンドマンは楽しめる作品だと思うので1度見てみて欲しい。

参考リンク:ぼっち・ざ・ろっく!
執筆:中澤星児
画像:©はまじあき/芳文社・アニプレックス

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