KDDIは11月18日、アイロック、VIE STYLE、レーシングヒーローの3社と、「みんなの夢をのせるeレーサープロジェクト」を7月20日から9月26日の期間で実施したと発表した。
同プロジェクトでは、将来カーレーサーを目指したい方が、環境や経済的な問題で諦めることを無くす道のりをつくる技術を開発している。SUBARUとSUBARU Driving Academy(SDA)をはじめとする、実車トレーニングのサポートやPCの提供など各業界の知見を有している11社の協力のもと、脳科学とITを組み合わせたブレインテックとeスポーツを活用したトレーニングを通じ、脳の認知能力を高め、実車でのドライビングテクニックの向上につなげる技術の開発に取り組む。
プロジェクトに参加するパートナー
2021年度に実施した実証実験を拡大。一般から公募したeレーサー20人とSDAドライバー13人の計33人で実車などによる走行タイムを測定後、脳トレーニングの対象者として約4週間の脳トレーニングを実施する“トレーニー” と、脳トレーニングを実施しない比較対象者“コントロール”に振り分け、脳トレーニング実施後に再度走行タイム測定。レースパフォーマンスが向上するか、またその短縮率などを分析したという。
2021年度と同様のカリキュラムを実施して脳トレーニング(ニューロフィードバックトレーニング+認知トレーニング)がドライビングシミュレーター上での走行タイム向上につながるかを確認する「2021年度の検証結果の信頼性確認」と、脳トレーニングがどの運転操作に作用しているかを実車走行の実証実験で確認する「脳トレーニングの内容がどの運転操作に作用しているかの確認」の2つのプログラムを同時に実施。
SDAのドライバーについても、SUBARU所有のトレーニング車両でeレーサーと同様のプログラムを実施。SUBARU技術研究所と共同で、車両に取り付けたロガーで取得した各種データ、インカ―カメラ映像、高精度GNSSを活用した走行ライン、アイトラッキングで取得した目線などの情報を総合的に分析し、eレーサーの検証結果との差分を確認している。
結果としてトレーニングを受けた10人のeレーサーはトレーニングをしなかった10人と比べて、実車走行で約2.2倍タイムが向上。脳トレーニングの効果を確認できたとしている。
レーサーになるには一般的に、幼少期からレーシングカートなどで練習を始め、本人の成長とともに実車での経験を積み、専門の育成チームに参加するなどのステップを経ている。そのため、レーサーになる夢を叶えるためには、本人の努力に加えて家族のサポートや多額の費用も必要な、険しい道のりになるといわれている。
KDDIが行った調査では、カーレーサーに憧れたことがある人のうち、93.6%の人が「職業として叶わなかった」、99.0%の人が「カーレーサーになることはハードルが高いと思う」と回答しているという。諦めた理由として70.5%の人が「お金がかかるから」、49.5%が「何から始めたらよいかわからなかったから」、42.5%が「練習場がなかったから」との回答があり、レーサーは「環境的な要因で叶えにくい夢」の代表的なものだといえる。
そこで、実車の運転で必要とされるドライビングテクニックをドライビングシミュレーターとブレインテックで伸ばすトレーニング手法に着目。同手法が完成すれば、レースゲームなどのeスポーツで実績を重ね、ドライビングシミュレーターで脳トレーニングの効果を確認しながら練習を繰り返すことで、成長の効率を高めることができるようになる。実車での練習にかかる時間や費用を大幅に抑えてプロレーサーを目指すことが可能になり、レーサーになるために必要だと思われていたこれまでの常識を変えることができるとしている。
なお、同プロジェクトの2021年度の実証実験に参加したeレーサーの佐々木唯人選手が、11月19日と20日に岡山国際サーキットで行われる「トヨタガズーレーシング ヤリスカップ西日本シリーズ」に出場する。また、2022年度の実証に参加したeレーサー2人は、11月19日に日本自動車連盟が主催するモータースポーツジャパン2022で行われるEVカートのエキシビジョンレースに参加。同プロジェクトがeレーサーからリアルレーサーへの入り口になることで、夢への挑戦もサポートしていくとしている。