芽出し帽をつくりたい

デイリーポータルZ

今、目出し帽が流行っている。

目出し帽が、と言ったが「目出し帽」ではなく「バラクラバ」という中東のフルーツみたいな名前になって、最新トレンドの座に座っている。

私がまだ「バラクラバ」の名前をうろ覚えだった頃、「目出し帽 おしゃれ」で検索しようとしたら「芽出し帽」と誤変換された。

芽出し帽。芽が出ている帽子。

いいなぁそれ、作ってみたい!

バラクラバとは

バラクラバは直訳すると目出し帽だ。

しかし今流行っているバラクラバは、いわゆる目出し帽とは少し違う。

流行りのバラクラバはフードのようにかぶったり、かぶらずにネックウォーマーのようにして使う。

今回は流行りのデザインに合わせて芽出し帽を作っていく。

デザインはこちら。

愛・地球博感。森の精霊だ。

さて、どうやって作ろう。

そういえば、カバンで有名なファッションブランドのロエベが2023春夏コレクションで草を植えた服を発表している。

どうやらロエベは衣服やシューズに本物の草を植えているようだ。

そんな布があるのだろうか。

 

植物を育てる布「活着君」

使えそうな布を探していると「活着君(かっちゃくくん)」という土の代わりとなって植物を育てられる便利な布があった。

これで帽子を作ろう!

 

届いた。苔テラリウムなどに使われるものらしい。

洗えば再利用もできてエコ!​​

表面はマイクロファイバーのようなふわふわの触り心地だ。

ここに植物をぐりぐり押し込むと根や茎が繊維と絡まって固定されるらしい。

そして活着君の保水力のおかげで、絡まった根に水を与え続け、植物が育つのだ。

 

バラクラバを作る

まずは芽出し帽の土台となるバラクラバを作っていこう。

ここ最近流行り始めたバラクラバの型紙は、まだこの世にないだろうと思ったらネットにあった。

ネットはなんでもある。

これで理想の形のバラクラバが作れたら、作業を大幅に短縮できるぞ!

さっそく試しの布で作ってみよう。

完成にぐっと近づけるといいな!

遠すぎ。

一番遠いところに降り立ったようだ。

もしかしてこれって、忍者の絵文字の型紙だった?

つぶらな瞳をしてるじゃん。

とりあえず、忍者から抜け出すために顔の穴を大きくしよう。

バラクラバって直訳すると目出し帽だった。そりゃこうなる。

あと、型紙の説明によく伸びる布で作ってと書いてあったのに、全然伸びない布で作ってしまった。そりゃこうなる。

開いた。

縫ってはかぶりを繰り返し、頭のとんがりがなだらかになるように修正、首周りの丈感を修正して、徐々に理想の形に近づけていく。

最後に、耳のあたりの縫い目をなくすために2つあった型紙を1つに合体させる。

左が分解したもの。右が2つを1つにくっつけた新しい型紙。

これでバラクラバの型紙が完成だ。

 

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活着君でバラクラバ作り

活着君で植物を育てるときは、活着君を常に濡らしておく必要があるらしい。

そのままかぶるとびしょびしょ人間になってしまうので、内側に撥水加工の布をつけて頭が濡れないようにしたい。

 

まず、活着君と撥水加工の布でそれぞれ帽子を作り、

左が撥水加工の布、右が活着君だ。

これらを合体させると、

できた!これで長時間でもかぶれる。

嬉しい。かぶってみよう!

うん!いいどんぐり。

活着君のふわふわ感もあいまって冬のおしゃれアイテムに見える。

編んで作られるバラクラバとは風合いが違うが、形は似せることができた。ピタッと感もかわいくてお気に入りだ。

さらに首元にボタンをつけて完成!

ねこがかぶる帽子…?

 

 

草を植えるのは無理

バラクラバができたら、いよいよ草を植えよう。

まずは活着君をよく洗って糸くずなどを落としてから、水にたっぷりと浸す。

ものすごいスピードで水を吸う活着君。

活着君は幅広い種類の植物が育てられるようだ。

今回は小さめの植物を買ってきた。

よし、植えていこう。

まずは土をきれいに洗い落として、根を出す。

これは多肉植物のセダム。こんなに鮮やかな緑で帽子を覆ったらかわいいに決まっている。

土を落とすのは結構大変だ。

根をちぎらないように優しくゆっくりほどいていく。

 

きれいになったら、根っこと茎のあたりをぐりぐりと布に押し込む。

すると繊維と絡まって固定されるらしいのだが、

全く手応えがない。植えているというか、置いている。

根が短いのか固いのか、活着君に絡まる様子がない。

少しでも揺らしたらポロっと落ちてしまいそうだ。

 

それでも「これは植わっているんだ」と言い自分に聞かせて、慎重に、きれいに、配置を考えて、置く。

葉を盛り付けるシェフ。

とりあえず全部盛り付けた。

ギリギリのところで均衡を保っている。

本当に根付いていくのか不安だが、まだまだ余白があるので次の植物を植えよう。

おそらくさっきのセダムは茎が太すぎた。

もっと細い草でやってみよう。

これはハイランドクリームという植物。素敵なグリーンだ。

根が柔らかくて茎も細いので、くっつきやすそう。

根をぐりぐりと押し込むと繊維の奥へ入っていった。

この感覚か!根と繊維が絡まっていくのが箸先から伝わる。

すべて植えた。いい感じ!

根まできれいにくっついた。ラピュタみたいだ!

とってもいい!!理想のイメージに近づいてきて嬉しい。

床を拭け。

うまくいったハイランドクリームを買い足して、もっともっと植えよう!

このまま活着君の一部を水に浸しておけば、水を吸い上げて植物たちに届けてくれるはずだ。

 

ロエベにならえ!

残念なことになった。

1日置いておいたら、活着君が乾いて、植物がポロッと落ちてしまった。残った植物も元気がない。

大ショック。新しく買った服を初めて洗濯したら色移りしてたぐらい大ショック。

根の絡まりが甘かったのもあるが、マネキンに被せたままだと水が重力に逆らえずに抜けてしまい、活着君の保水力を発揮できなかったのだろう。

必死に水をかけ続けるも、みるみるうちに枯れてしまった。

 

悲しんでいても仕方がない。

ロエベの方法を調べてみると、コートやパンツにチアシードをまき、水をあげて発芽させたと書いてあった。

なるほど、種をまいて帽子の上で発芽させればいいのか。

ロエベにならえだ、やってみよう!

 

すぐにかいわれ大根を買った。

今必要な植物は、おしゃれな草でも映える色でもない。

どんな場所でも水さえあればすぐに芽を出す根性のある植物だ。

頼りにしてます。

水だけで育つしすぐ伸びる。芽が出るところも見れそうだ。

帽子の上に種を置いてみた。本当に芽が出るのだろうか。

マネキンにかぶせたまま発芽が見たかったけれど、やっぱり頭頂部が乾くのと、種が不安定で転がっていくので、マネキンから外して育てることにした。

3日も経たずに発芽した!早い!あっさり芽が出て、芽出し帽ができた!

種を追加してもっと発芽させよう。

ぐんぐん伸びる。成長を見るのが毎日の楽しみになった。朝起きて見て、仕事から帰宅して見て、寝る前に見た。ほんの数時間でも成長しているのだ。

10日でこんなに伸びた。

植える位置間違えたかな。

見たことあるなと思ったら、芝が髪の毛みたいに生えてくるユーモア雑貨のヘアーラボだ。めちゃくちゃ似てる。

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かぶってみよう

やっと芽出し帽をかぶる時が来た!

正直、かいわれ大根を植えたあたりから出来上がりが不安だったが、

あら、意外とかわいい!

撮影者も「なんかかわいい。」と言っていて安心した。

ご当地マスコットみたいな、あかぬけない雑なかわいさがある。

微妙にかわいい、ビミョかわいいだ。

 

中に仕込んだ撥水の布のおかげで、頭は全然濡れない。

表の活着君はちゃんと保水しているので、絞ると結構水が出る。

フォルムが奇妙でいい。キミョかわいいだ。

かいわれがモヒカン。

かいわれはしっかりと根を張っているので、全く落ちてこない。

ただかいわれ大根の香りがふんわりとする。

もっと伸ばしたら髪の毛みたいになるかな。

本当はおしゃれな芽出し帽を作りたかったが、結果全然違うものができた。そういうときもある。

この芽出し帽に合う服って存在してる?

写真を撮っていると、ふと今日の夕陽がとてもきれいなことに気づいた。

続きは夕陽と一緒に撮ろう!

夕陽の力で映えた写真が撮れるかもしれない!

海まで行こう!

夕陽がきれいだと気づいてから、沈むまでの時間はいつも短い。

走れ!間に合え!

血の味するぐらい走った。

堤防に乗る。

芽出し帽をこちらへ!早く早く!
あー、もう沈んじゃう!すぐかぶるね!​​​​​

はい!撮って! 

せっかくの夕陽バックの写真、全部目​​を閉じてた。あと全然映えてない。​​​​

まぁ、夕陽が沈むのが見れたからいいか。

最後にかいわれを収穫しよう。

獲れた!なんかめっちゃ嬉しい!
あー、大根の匂いがするわ。

摘み取ったかいわれはサラダにのせた。

結構辛かった。

 

活着君の可能性

奇妙なアイテムになったが、芽出し帽を実現させることができて良かった。

今回は枯れてしまったが、根を絡ませたときの芽出し帽は見た目も理想的だしおしゃれで良さそうだった。

なにか工夫をすれば、あのまま植物たちを育てられた気がする。

 

ともあれ布に植物を植えられるのがわかった。

まだまだ活着君を使っていろんなアイテムが作り出せそうだ。

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