「イーロン・マスクと仕事する時は善良なイーロン・マスクと悪いイーロン・マスクの2人が存在するという心構えが必要」と元SpaceXエンジニアがアドバイス

GIGAZINE
2022年11月07日 21時00分
メモ


by Steve Jurvetson

Twitterを買収してCEOに就任し、従業員の50%をレイオフする施策を取り話題となっている実業家のイーロン・マスク氏は宇宙企業・SpaceXの共同設立者兼CEOでもあります。設立直後のSpaceXで働いていたエンジニアのジム・カントレル氏が、マスク氏の人物像について語っています。

I worked for Elon Musk in the early days of SpaceX | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=33475301

カントレル氏は、SpaceX設立前はユタ州立大学の宇宙工学チームの一員だったとのこと。マスク氏は当時ロシア製のロケットを購入したいと考えていたようで、ロシアの宇宙事業関係者とつながりのあったカントレル氏に白羽の矢を立てたそうです。マスク氏は「自分はインターネットの億万長者で、人間が他の惑星にも居住できる種族である可能性を証明したい」とカントレル氏にスカウトの電話で説明したとのこと。

カントレル氏によれば、まだ20代後半だったマスク氏は身なりが悪く、かなり不器用な人物だったとのこと。そのため、アメリカ人から見ても「宇宙に手を出したい金持ちの子ども」にしか見えなかったそうです。

しかし、マスク氏は非常に頭脳明晰で決断力はあったとのこと。カントレル氏がマスク氏と飛行機に乗って移動した時、マスク氏は「ロケットを自分たちで作ることができると思う」と語り、のちにSpaceX最初のロケットとなるFalcon 1の製造計画を記したスプレッドシートを見せてきたそうです。そのスプレッドシートは、共同創設者で航空宇宙技術者のトム・ミュラー氏やクリス・トンプソン氏も一緒に作成したものでした。

アメリカ政府と進めていた仕事の非効率性にうんざりしていたカントレル氏にとって、そのスプレッドシートは非常に刺激的なものでした。そこで、カントレル氏はSpaceXの設立に参加し、2001年12月から2002年9月まで事業開発担当ヴァイスプレジデントを務めました。このわずか1年足らずの期間について、カントレル氏は「マスク氏と私は衝突しすぎました。彼は何度も私に怒鳴りつけました」「私は多くのことをマスク氏から学びましたが、軽視されているとも感じました。怒鳴られるのにお金を払う必要はないので、会社を辞めました」と述べています。

by NASA Kennedy

カントレル氏は「マスク氏と一緒に仕事するのは『善良なイーロン・マスク』と『悪いイーロン・マスク』という2人の人物と一緒に仕事をするようなものでした」と語っています。

「善良なイーロン・マスク」は非常に面白く魅力的な人物で、次々と披露される大きなアイデアに自分も参加できるとのこと。一方で「悪いイーロン・マスク」はいつもイライラして怒鳴りつけてくる人物で、どんな人や物事でも「悪いイーロン・マスク」を満足させられるものはなかったとカントレル氏。例えば、カントレル氏がSpaceXに在籍していた時、午前3時にマスク氏から「会社にいるからどこにいるか教えてくれ」という電話がかかってきたことがあったとのこと。カントレル氏が「3時間前に寝たばかりだ、もっと寝ないと」と答えると、マスク氏は「仕事があるからすぐにきてくれ」と述べたそうです。

「マスク氏は自分がやらないことを他人にやれとは言いませんが、ここまでやるのは常人ではないでしょう。Twitterでも同じことが起こるのではないでしょうか。マスク氏はその意志の強さから、Twitterの生産性を高めると思います」とカントレル氏は述べています。

by OnInnovation

カントレル氏は、マスク氏のさらなる特徴として「常に何かしらのビジョンを持っていること」を挙げています。例えばSpaceXでは「火星に人を送り込む」というビジョンを掲げていますが、マスク氏は従業員にも全く同じビジョンを持つことを期待していたとのこと。しかし、マスク氏の頭の中には常に明確なビジョンがあるものの、従業員には必ずしも明確に伝わっておらず、共有できていない問題があったそうです。

例えば、カントレル氏はロケット用の燃料タンクを設計した時、自分たちの会社で製造することを前提に予算を見積もりました。しかし、その見積もりを見たマスク氏はあまりにも予算が高すぎるとカントレル氏を怒鳴りつけたとのこと。その後、カントレル氏はトラック用のタンクや地元の製鉄所に足を運んで研究を行い、タンクの製造を外注できないかどうかを確認させられたそうです。カントレル氏は「マスク氏は私の判断を信頼していなかったわけではなく、タンク製造に取り組むには自家製造以外に別の方法があることを知っていたのです」と述べています。

by Daniel Oberhaus

カントレル氏は「Twitterの社員は、自分のビジョンがマスク氏の描いているビジョンと100%一致しているかどうかを判断する必要があります。そのビジョンに一致しない社員がいれば、マスク氏はその社員を叱りつけ、オーナーとしての権利を最悪なやり方で行使するでしょう。もしあなたがマスク氏のビジョンに賛同し、自分の時間や考えに対して非常に厳しい上司に慣れているのであれば、それはとても楽しいものになるでしょう」と述べています。

さらにカントレル氏は「マスク氏のビジョンに参加することは、とてもエキサイティングなことです。マスク氏はSpaceXにおける私たちの仕事がいかに重要なものなのかを会議中にいつも語ってくれましたし、Twitter本社でコーヒーバーを囲んでいた彼の写真を見ましたが、その時もそうしていたのでしょう。これは『善良なイーロン・マスク』で、彼が行うスピーチは仕事を続ける上で役に立ちます。一方、重役を全員クビにした『悪いイーロン・マスク』は非常にたちが悪く、マスク氏がその面を見せる可能性は十分にあります」と述べています。

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