フェアユースと文化の発展について議論されているアンディ・ウォーホル事件とは?

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by Andy Warhol: 32 Campbell’s Soup Cans

実在するスープ缶を描いた芸術作品「キャンベルのスープ缶」などの作品で知られる芸術家のアンディ・ウォーホル氏は、他人の撮影した写真を用いた芸術作品も残していない。ウォーホル氏が残した作品の中には写真家のリン・ゴールドスミス氏が撮影した写真を用いたものも存在していたのですが、そのうち1作品がゴールドスミス氏の許可を得ずに作成されたとして、アンディ・ウォーホル美術財団とゴールドスミス氏の間で訴訟が行われています。

The Andy Warhol Case That Could Wreck American Art – The Atlantic
https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2022/10/warhol-copyright-fair-use-supreme-court-prince/671599/

問題となっているのは、ウォーホル氏が「ゴールドスミス氏が1981年に撮影したプリンスの写真」を元に制作したシルクスクリーン作品です。ゴールドスミス氏は、ウォーホル氏が許可を得ることなく作品を制作したと主張していますが、アンディ・ウォーホル美術財団は作品の権利がウォーホル氏にあることを確定するために2017年に訴訟を起こしました。

by Scott Penner

訴訟の結果、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は「ウォーホル氏の作品はフェアユースによって保護されている」という判決を下しましたが、ゴールドスミス氏は判決を不服として控訴。そして、控訴審では「ウォーホル氏の作品は元となった作品(ゴールドスミス氏が撮影した写真)の本質的な要素を保持している」「(ゴールドスミス氏の写真が)認識可能な基盤であることには変わりがない」としてゴールドスミス氏の主張を認める判決が下りました。その後、アンディ・ウォーホル美術財団は最高裁での審理を求める手続きを進め、2022年10月には最高裁での審理が始まっています。

上記の裁判では、ウォーホル氏の作品におけるゴールドスミス氏の写真利用がフェアユースとして認められるか否かが焦点となっています。フェアユースとは「一定の条件を満たすならば、著作権者の許可を得ることなく著作物を再利用できる」というもので、アメリカの裁判で著作権侵害の抗弁事由として広く扱われています。海外メディアのThe Atlanticは「フェアユースは、既存のクリップを映画の素材として利用することや、Google検索における画像のサムネイル表示を可能とするものです。フェアユースがなければ、私たちの文化体験は著しく異なったものになるでしょう」と述べ、フェアユースが文化の発展に不可欠な概念であると論じています。


The Atlanticは今回の訴訟で問題となっている作品について、「ゴールドスミス氏が撮影した写真とウォーホル氏の作品は、どちらもわずかな悲しみを感じさせるものです。しかし、ウォーホル氏の作品には実質的な表現が含まれています」と述べ、アンディ・ウォーホル美術財団の主張を支持。一方で「ゴールドスミス氏には不満を抱く正当な理由があります。彼女の作品は他のすべてクリエイターの作品と同様に認められるに値します」と、ゴールドスミス氏の主張にも理解を示しています。その上で、The Atlanticは「法的な立証を求めるゴールドスミス氏の主張は度を超えています。(訴訟の結果は)クリエイティブ表現に必要不可欠な理念を矮小(わいしょう)化してしまう可能性があります」と語り、文化の発展におけるフェアユースの重要性を強調しています。

なお、The Atlanticによると、今回の訴訟で問題となっている作品の被写体となったプリンスは、YouTubeに投稿された「子どもがプリンスの楽曲を再生しながらダンスするムービー」の削除を要請するほど著作権に厳格な人物であったとのことです。

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2022年11月06日 13時00分00秒 in アート, Posted by log1o_hf

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