ソフトバンク社長、スマホと衛星の直接通信に見解–「当面はOneWeb優先」

CNET Japan

 ソフトバンクで代表取締役社長執行役員兼CEOを務める宮川潤一氏は11月4日の決算会見で、スマートフォンと衛星の直接通信についてコメントした。

ソフトバンクで代表取締役社長執行役員兼CEOを務める宮川潤一氏
ソフトバンクで代表取締役社長執行役員兼CEOを務める宮川潤一氏

 スマートフォンと衛星を直接通信させる構想は、Space Exploration Technologies(SpaceX)が手掛ける衛星通信「Starlink」と米通信大手「T-Mobile」が共同で「Coverage Above & Beyond」として発表済。また、楽天が出資する「AST SpaceMobile」も実現を目指している。また、用途は緊急通報のみと限定的ではあるが「iPhone 14」も衛星通信に対応した。

 宮川氏によると、スマートフォンと衛星の直接通信は「周波数の問題を除けば、物理的には不可能ではない」という。しかし、下り通信は容易なものの、上り通信は端末側の出力に左右されるため、遠い距離にある衛星との双方向通信は難しいと話す。

 「私も10年ほど前に米国でいくつかの衛星通信を実験したが、下りはできるが上りは難しかった」(宮川氏)

宇宙ではなく成層圏からスマホに通信提供

 そこでソフトバンクは、地表から遠い衛星ではなく、ソーラー発電で成層圏に長期間滞空する電気飛行機や係留気球に着目。そこからスマートフォンに通信を提供する「成層圏通信プラットフォーム」(HAPS)構想を推進してきた。



 「HAPSの通信実験をやってみると、地上の基地局よりも見通しが効く分、見通しの良い場所の通信は非常にクオリティが高い。いずれはHAPSを商品化したいと思っている」(宮川氏)

 しかし、実験を重ねる中で、HAPSの課題が見えてきたという。

「コストを地上の基地局以下にする必要がある。HAPSは発展途上国から引き合いが強いが、それら地域でサービスを展開するには、通信料金を日本よりさらに安くしなければならない」(宮川氏)

 コスト削減のためには、ソーラーパネルを現在用いている衛星用のパネルから、シリコン系の一般的なパネルに置き換える必要があるという。さらに「プロペラの効率をもっと高めないと1カ月はフライトできても、半年は無理とか、蓄電池の性能を高めないと夜間のフライトが無理とか、さまざまな課題がある」と宮川氏は打ち明ける。

 ただ、これらは解決できない課題ではないという。「今はいろいろな基礎テクノロジーを見直している段階」と宮川氏は話す。

当面はOneWeb優先

 宮川氏は「HAPSを諦めたつもりはありません」と前置きしつつ、当面はSpaceXのStarlinkと同様の低軌道ブロードバンドサービス「OneWeb」に注力するという。ソフトバンクとOneWebは衛星通信サービスの展開に向けた協業に合意している。

 「短期的にはOneWeb衛星がようやく(地球低軌道に)浮かび始めてきたので、これを2023年度中に仕上げる。スマートフォンとの直接通信ではないが、衛星からブロードバンドを落とせる環境を2023年度中にサービスインしていこうと考えている」(宮川氏)

(この記事はUchuBizからの転載です)

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