楽天の求めるプラチナバンドは今でも空いている(アーカイブ記事)

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10月1日に施行された改正電波法で、総務省が「有効に利用されていない」と判断した帯域は、新規参入の事業者に割り当てることも可能になりました。これは楽天に「プラチナバンド」を割り当てるための改正といわれ、フィルターなどの技術的検討が進んでいます。

しかしプラチナバンド(470~710MHz)の大部分は未利用のホワイトスペースであり、「再配分」などしなくても、テレビ局のスイッチだけで今すぐ使えます。オークションで公平に割り当てるべきです。2021年4月5日の記事の再掲です。

不合理な楽天の「再配分策」

総務省有識者会議の楽天モバイル資料より

楽天が既存キャリアの帯域をよこせと要求して紛糾しているが、誰も損しないで楽天が新しい電波を得る方法がある。プラチナバンドにはテレビ局の占有している電波が約200MHzもあいているのだ。これについてNHKは次のような資料を出して「デジタル放送に240MHz使い、使用しない周波数は他の無線システムに開放した」と主張したが、このうち200MHzは使っていない。

総務省有識者会議のNHK資料より

ホワイトスペースは電波オークションで配分すべきだ

それがここに小さく書いてある「ホワイトスペース」である。たとえば茨城県では、教育テレビ(E)は水戸では13チャンネル、高萩では39チャンネルというようにバラバラのチャンネルを使っているが、これをすべて13チャンネルに集約すれば、教育・総合それぞれ1チャンネルでいいので、7チャンネル(42MHz)で今と変わらない放送ができる。

規制改革推進会議資料より

同じように関東1都6県でもNHKはすべての中継局の周波数を2波に集約すれば、東京MXまで入れて8チャンネルで足りる。それが私が規制改革推進会議に提案したホワイトスペースの区画整理で、ほとんどコストなしで32チャンネル以上あけることができる。

これは虫食い状にあいている帯域を区画整理するだけだから、既存キャリアもテレビ局も損しない。問題があるとすれば、200MHzという帯域は大きすぎるので、楽天1社に割り当てるわけにはいかないことだろう。これは5スロットぐらいにわけて既存キャリアも含めてオークションするか、半分の100MHzはWi-Fiなどの免許不要帯にすることも考えられる。

こういう区画整理は、欧米では時間がかかる。UHF帯でテレビ局がデジタル放送しているので、それを立ち退かせないと放送波との干渉が起こるからだ。アメリカではこれを10年かけて(逆オークションで)立ち退かせ、600MHz帯のオークションで200億ドルで売却した。

しかし日本の地デジはOFDMという新しい方式なので、立ち退きは必要ない。同じ周波数を複数の中継局で使っても、干渉が起こらないからだ。中継局の周波数は親局のスイッチで変更できるので、物理的な基地局は変えなくても県域ごとに1波に集約できる。現実に神奈川県の中継局の97%は1波に集約されている。

視聴者の側では、テレビのリモコンでチャンネルスキャンをやれば、図のように新しいチャンネルに変更できる。引っ越したときにやった人がいるだろう。

これによって今40チャンネル占有しているテレビ局の電波は7~8局に整理でき、残り32~33チャンネルは新規事業者に割り当てることができる。これは規制改革推進会議で総務省もNHKも「技術的には可能だ」と認めた。

これは楽天モバイルのスタッフも知っているはずなので、まず技術的な問題を整理し、ホワイトスペースで何MHzあけられるか検討すべきだ。これによって誰も損せず、競争は促進できる。損するのは、密室の接待で独占利潤を得てきた業者だけである。