書き出し小説大賞第247回秀作発表

秋の約束は逆光の中だった。

タカタカコッタ

息の根を止めた感触が生々しく残る両手で、煙草に火をつけた。

まひろ

いくつか知らない人の夢を横断して、キミに逢えたのが午前三時。

otomi

破損したヒグラシが朝焼けを勘違いしている。

蚕

半チャーハンは俺の予想より大きく、妻の予想より小さかった。

いそうろう

走馬燈に現れた知らないおっさんが気になって、俺は意識を取り戻した。

げたのにつけ

悪党も悪党なりの正義を振りかざして襲ってきた。その光景はまるで鏡を見ているようだった。

あの

旦那様が六角レンチをお探しの時すぐにお渡しする。それが私の役目でございます。

哲ロマ

今日もいつかの3年前

走るランドリー

命の恩人に体験人数を聞く。

Ｓ.虚無

星も月も夕焼けも虹も、あの子の瞳の中にある。

葱山紫蘇子

彼は二択をすべて誤って今に至っている。

節度亜図夢

地鎮祭に誘われた。

井沢

秋の交通安全セミナーが、好き。

忍者ラン

雨だれ、死にゆくキミの静脈の上を這う。

さくさく

ウズラは生涯同じ模様の卵を産む。よってこいつはキリストの顔に見える柄の卵を産み続けるという事だ。

prefab

気温が乱高下している。私の体は地面を通り抜けて空から落ちてくるあのバグの真っ最中だ。

さわぎる

毎晩1時、君の好みをアップデートする。

ころころどんぐり

庭も、畑も、ボイラーも、お風呂も、どこに行ってもじーちゃんとの思い出が蘇る。

桃とペンギン

何の根拠もない言葉だけが、今日も私を生かしてくれた。

早百合

この物語は、僕たちを必要としていない。

はらけん

給水塔の影がくっきり伸びて、月しか僕らを見ていなかった。

みよおぶ

水中で涙をこぼしたみたいだ。誰も気づかない。

寂寥

深夜の大通りは満月へ続く轍だ。

のら

薄曇りの空、冷めきったコーヒーと何度も読み返した小説を携えて月の裏を夢見る

suzurei

二匹の遠吠えに合わせて鎖骨をなぞる。

モンゴノグノム

お互いの短所を笑い合えたその時に二人だけの惑星が生まれた。

節度亜図夢

君がまた嘘をついた。僕らは付き合っていなかった。君は誰？

タクタクさん

いい天気の日は、魔法がとけてしまう。

suzukishika

ドレスの女がまたがった隕石はバイパスに墜ちた。

mono-less

外はゾンビでいっぱいだ。エイリアンズを聴いて時間をつぶそう。

いそうろう

両足が宙に浮く。地球へのエレベーターはのんびりと速い。

ろっさん

クレーターでの作業は寒くて辛い。彼女は今何をしてるんだろうか。

腹話術のショータ

背中にエンドロールを感じながら、歩き続ける。

正夢の3人目

妻を見送った空港の帰り、フェアレディは呆気なく大破した。真夜中の国道で深くため息をつく。

g-udon

「後悔してるのか？ボクらの中のかみさまに従っただけだろ」
夕陽が消えゆくホームセンター駐輪場で、同級生はぬるくなったファンタオレンジを喉に流し込んで微笑んだ。

パチリパンダ

まるでわてらエイリアンズでんなあ。

たこフェリー