ヤマザキと言えばパン。私(中澤)は、黄色に赤いラインの入った看板を見るだけでパンが食べたくなる。ゆえに、小売店であるヤマザキショップも、いつも入る時はパンを食べる気満々の口になっているわけだが……
なんと、パンよりレコードの方が充実しているヤマザキショップがあるらしい。え! ヤマザキショップってレコード売っても良かったの!? イメージがかけ離れすぎているため、半信半疑でその店があるという東京都は日本橋の浜町に向かった。
・まさかのワード
浜町公園の南東の太い通りに面しているこのヤマザキショップ。パンを食べたくなる色合いの看板はもちろん、外観は完全にヤマザキショップであるが、よく見ると……
確かにレコードが並んでいる! しかも……
レコード買取強化中……!!
ディスクユニオンかよォォォオオオ! 今もバンドでギターを弾いている現役ミュージシャンの私。見慣れた貼り紙ではあるが、まさかヤマザキショップでこのワードを目にすることになろうとは。我慢できずに店内に入ったところ、ヤマザキショップの一画にレコードが置かれている感じであった。
とはいえ、レコードコーナーはかなり充実している。邦楽、洋楽、ブラック、HR/HMと揃っており、Tシャツなどのグッズもあってエレキギターまで飾られていた。ここ本当にヤマザキショップかよ。
・家族
レジにいるのはおじいちゃんとおばあちゃんの2人。そこでレコードを買ったついでに話を聞いてみたところ、店長である息子さんがやっているのだそうな。「もうすぐ来るんじゃないかしら」とおばあちゃんが言うので、軒先に設置された机でコーヒーを飲みながら待つことに。
晴れた空。ポツポツと来る客。軽食を買う人の中に、たまにレコードを物色する人も。レコードって結構売れるんだな。それともレコードを買いにここに来てるのかな? やたらとほのぼのした空気の中、道行く人を眺めていると、コーヒーを飲み終わる頃に店長が降りてきた。
・カッケエ
まずは、名刺を渡してみたところ店長も名刺をくれた。ヤマザキショップの店長で名刺を持ってるって珍しい気がする。そう思ったため名刺をよく見てみたところ……
_人人人人人人人人人人人人_
> 店長 オーガナイザー <
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なんか肩書がカッコ良かった。ちなみに、オーガナイザーは企画やイベントの主催者とかがよく名乗る肩書である。オーガナイズしてるんですか?
進藤康隆さん「してます。普段は週1回くらい店内でDJイベントしたりとか。今週末(10月29日、30日)は、浜町船着場で開催される『堤防DJフェス』がありますし、来週はコレド日本橋の日本酒イベントにDJで呼ばれているので、ちょっと外でやる感じが続いてますが、やる時はTwitterとかInstagramで告知したりしてます」
──DJなんですね!
進藤康隆さん「ギタリストとしてバンドを組んでたこともあって、その時は渋谷のライブハウスとかに出てましたね。クロコダイルとか……渋谷屋根裏も」
──実は僕もギタリストでバンドやってまして。老舗ですね。渋谷屋根裏はなくなっちゃったけど。
進藤康隆さん「ギター教室もやってたんですよ」
──え!? 教えてたってことですか?
進藤康隆さん「いえいえ、先生を呼んで、地下のスペースを使って開催してました。むしろ俺が教わりたかったんで」
──このヤマザキショップの地下にそんなスペースが?
進藤康隆さん「ちょっと見てみます?」
・ヤマザキショップの地下には
そう言うと、店の奥へと先導してくれる進藤さん。そして、ジュースの什器の奥に隠れた扉に手をかけた。そこトイレでは? と思いきや……
\ガチャ/
えっ
SUGEEEEEEEEEE!!!
トイレのように事務的な扉の先には階段があり、地下は部屋になっていた。DJブースもあるし、ギターアンプやギターなどの機材もあってちょっとした個人スタジオのようである。秘密の部屋的なドラえもんとかスタジオジブリ的なワクワク感があるなココ。
進藤康隆さん「ちなみに、今日もDJ教室があったりします」
──これは入ってみたくなる空間ですね。
進藤康隆さん「元は倉庫だったんですけど、広かったので半分使ってスタジオみたいにしてみました」
──中村一義みたいなことしますね。しかし、倉庫だったということは、在庫はどこにいったんですか?
進藤康隆さん「今は奥の壁の向こう側を倉庫として使ってます」
──店内でイベントをする場合もここでやるんですか?
進藤康隆さん「コロナ禍中はここで配信イベントとかもやりましたね。でも、普段のDJイベントは1階の奥にあるDJブースが多いかな。大体はそこでDJがプレイして店内に流す感じです」
──なるほど、レコードのルーツはよく分かりました。でも、なぜヤマザキショップに置こうと思ったんですか?
・レコードを置くようになったキッカケ
進藤康隆さん「元は、あのレコード棚はイートインスペースだったんですが、常連さんとか軒先にたむろしてたお客さんと話してたら、フリーマーケットしたいって話になって。それでこのヤマザキショップを使ってまずフリーマーケットを開催したんですね。
その時にレコードを出したら結構売れて。『レコードって売れるんだな』と思ったんです。そこから店でも売ってみようかなと思い、今に至ります」
──買取もするってほぼレコード屋みたいになってますよね。
進藤康隆さん「そうですね。そのために古物商許可も取得しました」
──そこまでして……! それにしても、ヤマザキ的にアリなんですか? やりたい放題すぎません?
進藤康隆さん「そうですね。そこはヤマザキの懐の広さと言えるかも。もともと、ウチは90年くらい続いた酒屋で、俺は三代目なんですが、時代の流れで酒屋だけじゃ厳しいってことで1999年にコンビニに業態を変えようということになったんです。
その時に、やっぱりローソンとかファミマとかも考えたんですが、こちらの自由にやらせてくれるのってヤマザキだけだったんですよね。ボランタリーなんとかって契約。さすがにちょっと言われたこともありましたが、社長は喜んでるらしいです(笑)」
──店長も最高だが、ヤマザキも最高だった。なお、進藤さんが言おうとしたのはボランタリーチェーン方式かと思われる。調べたところ、ヤマザキショップは全部これで、フランチャイズとは契約が違うのだとか。へー!
なお、24時間営業をするかどうかもオーナーにゆだねられているようで、進藤さんに営業時間を聞いたところ、「朝7時から今んとこ23時まで開けてます」との回答。定休日は日曜日だが、イベントをやっている時はヤマザキショップで商品を買うこともできるという。なるほど、自由だ。
なんとなく悠々自適な空気が漂っている進藤さん。それもまたミュージシャンの生き方か。日々、追い立てられるように生きている私からするとちょっとうらやましく感じたのであった。
・今回紹介した店舗の情報
店名 Yショップ上総屋店
住所 東京都中央区日本橋浜町2-55-5
営業時間 月~土7:00~23:00
定休日 日曜・祝日
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.