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はじめに
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会員限定メルマガに「無人島には持っていかない、大切にしまっておく自慢の品」と題して、ライターコラムを掲載。今回は、ナミノリさん「自慢の品」を紹介します。
うさぎの毛布(ナミノリ)
生まれた時からずっと使っている毛布がある。
通称「うさぎの毛布」だ。
大変年季の入った毛布で、見た目は発掘された弥生時代の布ぐらいボロボロである。
「うさぎの毛布」と呼んでいるけれど、ふわふわではない。素材はおそらく綿で、触り心地は少し固い。
長年連れ添ったわりに、なんという種類の寝具なのかわからない。毛布でもタオルケットでもない。
母に聞いてみたところ「たぶん西川の寝具です!」と返信が来た。そういうことではないのだが、まぁそうなのか。
たぶん西川のうさぎの毛布の真ん中には、2匹のうさぎが乳母車に乗っているアップリケが施されている。
その下には見えるか見えないかの文字で「Baby’s memories」と書いてある。
廃遊園地のような趣である。
毛布は裂けて穴が開き、刺繍の糸がビロビロに伸びている。他人が見ればゴミだと思うだろう。
私としても、とても自慢できる品ではないのだが、大切にしまっているものはこれくらいである。
幼いころからずっと一緒に寝ていた。
匂いを嗅ぐと落ち着くのだ。
家出の時は必ずうさぎの毛布をリュックに入れた。お守りのような存在だった。
しかしうさぎの毛布がなくても普通に眠れた。
昔、虫がいっぱい出る田舎のおばあちゃんの家に毎週泊まりにいっていたのだが、その時は毛布を持っていかなかった。
大切なうさぎの毛布におばあちゃんの家の匂いと虫がつくのが嫌だったのだ。
だからおそらく無人島にも持っていかない。
洗濯を繰り返すうちにボロボロになるのが心苦しくなり、だんだんと使わなくなった。
しかし大人になった今でもまだ捨てずに持っている。
先日、うさぎの毛布のことを知人に話したら「そんなボロボロになっても無理やり捨てなかった両親やさしいね。」と言われた。
たしかに。
ボロボロになって穴が開き、毛布としての機能をほぼなくしても、誰にも捨てられずに今日まできたのである。
それは私の愛着だけではないような気がする
終わってふたたび解説です
「大切だからこそ持っていかない」という逆の理由もあるのだということに気づきました。おばあちゃんの家の匂いと虫がつくのが嫌で持っていかなかったエピソードも最高です。それだけ大切にしているということですよね。(はげます会担当 橋田)
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