Appleは10月26日に、2022年モデルとなるiPad Proシリーズを発売する。11インチのWi-Fiモデルは12万4800円(税込)~、12.9インチのWi-Fiモデルは17万2800円(税込)~。先行レビューをするモデルは、スペースグレイの12.9インチ1TB Wi-Fi+Cellularモデル、30万8800円(税込)だ。
12.9インチ1TB Wi-Fi+Cellularモデル、30万8800円のパッケージ
M2搭載で処理性能向上
2022年モデルのiPad Proの最も大きなトピックは、M2チップを搭載した点だ。6月のWWDCで第二世代となるMac向けAppleシリコン「M2」を発表し、MacBook Airと13インチMacBook Proを発売したが、今回はこれらのMacに搭載されたM2チップが搭載される。
128GB・256GB・512GBの各モデルにはメモリ8GBのM2チップが、また1TB・2TBの2モデルには16GBのM2チップが備わる。チップの高速化についてはMacと同様で、CPUで15%、GPUで35%の高速化を実現しながら、バッテリー消費を低く抑え、連続使用時間に影響が出ない10時間のバッテリーライフをうたっている。
キーボードと接続するSmart Connector
個人的にM1チップ搭載のiPad Pro 12.9インチにMagic Keyboardを装着して原稿執筆やコミュニケーションなどに活用してきたが、A12X BionicやA12Z Bionicを搭載するiPadに比べて、バッテリー持続時間が短くなる経験をしてきた。これに対して、M2チップ搭載のiPad Pro 12.9インチは、M1搭載モデルに比べて、10%程度持続時間に余裕が生まれており、新チップの省電力性の恩恵がでていると考えている。
12.9インチ用の「Magic Keyboard」(税込:5万3800円)は、iPad Pro(第3世代、第4世代、第5世代、第6世代)で使える
M1とM2では5nmプロセスから4nmプロセスへと微細化が進み、ゆえに同じ設計でも高速化、省電力化が進んでいるが、より大きく異なる点は、次世代Neural Engineへと進化した点だ。16コアは共通だが、40%高速化されており、機械学習を伴うアプリの実行でより高いパフォーマンスを発揮する。
たとえば、iPad ProのカメラにはLiDARスキャナが搭載されており、カメラとLiDAR、加速度センサーなどを用いた空間スキャンや3Dモデルの作成を、より高速かつ高精細な演算で実現できるようになる。この点は、iPhoneシリーズに比べても優位性があるといえる。
12MP広角カメラと10MP超広角カメラを搭載
ディスプレイとApple Pencilにも進化のポイント
iPad Proシリーズを選ぶなら、12.9インチモデルが特別だ。それはディスプレイにある。iPad Pro 12.9インチには、14インチ・16インチMacBook Proと同様のLiquid Retina XDRディスプレイが搭載されており、通常の輝度1000ニト、HDRコンテンツ表示時のピーク輝度は1600ニトに達する。液晶ディスプレイながら、ミニLEDバックライトを備え、黒を表示する際にライトを消灯して真っ暗にできる。コントラスト比100万:1は有機ELディスプレイに匹敵する。
Apple Pencilにも進化のポイント
iOS 16では、新たに「リファレンスモード」を用意し、Macと連携させることで、正しい色再現を確認するための外部ディスプレイとして活用することができるようになった。
たとえばLiquid Retina XDRディスプレイを持たないMacBook Airを使いながら、HDRの写真やDolby Visionのビデオを確認するといった使い方ができるようになった。また、Apple Pencilの機能も向上している。これまでApple Pencilは、画面に触れていなければ認識しなかったが、最新のiPad Proでは、最大で12mmまでペン先が離れていても、画面上でApple Pencilの位置を認識できるようになった。この点は、より精密な描画作業を行いたい場合に非常に役に立つ。ペン先を画面上に落とす前に、どこにペン先があるかが画面上に分かるため、ペン先を落としてみてからズレていてやり直す、というストレスがなくなるのだ。
Apple Pencil第2世代はこれまでの製品と同じものだ。しかし2022年モデルのiPad Proに搭載されているM2チップによって、離れたペン先の電磁波を読み取る処理を行っているという。
この点は、Microsoft Surfaceやペンタブレット、液晶ペンタブレットが有利だった点だけに、iPad Proがその穴を埋めた格好となった。
M2チップ、何に使う?
M2チップのパフォーマンス、ディスプレイの活用の拡大、Apple Pencilの機能向上と、小幅ながら非常にクリティカルな進化を遂げたiPad Pro。あとはアプリでの活用がターゲットとなる。
スペースグレイのiPad Pro
すでにAdobeはPhotoshopやIllustratorといった主要アプリをiPadでも利用できるようにしており、Apple Pencilによる描画や編集をMac-iPad環境でも取り入れられるようになった。加えて、Affinity PublisherやOctane X、uMakeといった2D、3Dの編集アプリが充実し、ついにビデオ編集アプリのBlackmagic design DaVinci ResolveがiPad向けにリリースされた。
残念ながらiPad Proのカメラでは、Dolby Visionのビデオを撮影することはできないが、iPhoneと組み合わせることで、高ダイナミックレンジのビデオを直接編集する環境が整った。DaVinci Resolveは無料ダウンロードができ、アプリ内購入で「iPad用DaVinci Resolve Studio」にアップグレード可能だ。MacやPCでの編集ファイルの編集や、USB-Cポート経由での素材読み込みにも対応し、iPad Proを編集マシンとして活用する可能性が広がりそうだ。