iOSの変更が パフォーマンスマーケティング に及ぼした影響:「いま皆が気にしているのは、ブランディングだ」

DIGIDAY

ブランドマーケティングに向かうトレンドに乗り、サングラスブランドのキーがパフォーマンスマーケティングへの依存から「フルファネル」へと軸足を移している。この動きはiOS14(とそれに続くOSアップデート)で広告の効果測定が難しくなったことを受けたものだ。

ブランドマーケティングに向かうトレンドに乗り、サングラスブランドのキー(Quay)がパフォーマンスマーケティングへの依存から「フルファネル」へと軸足を移している。この動きはiOS14(とそれに続くOSアップデート)で広告の効果測定が難しくなったことを受けたものだ。

「iOSでさまざまな変更があって、当社はフルファネルなアプローチに戻った」と語るのはキーのCEO、ジョディ・ブリッカー氏だ。「小売業に30年携わってきたが、従来の広告手法に完全に戻ってはいないにしても、ファネルが再び復活していると思う。当社はパフォーマンスマーケティングも行っているが、あらゆるプラットフォームで可能性を探り、実験を行うこともしている」。

マーケティングをフルファネルに近づける

iOSの変更前、キーは広告予算の大部分をパフォーマンスマーケティングとインフルエンサーマーケティングに向けていた。現在は「iOSの変更以来、ソーシャル広告への支出を減らした」ため、キーは「よりバランスのとれたアプローチをとっている」とブリッカー氏は語る。具体的には、パフォーマンスマーケティング、検索、アフィリエイトマーケティング、ストリーミング広告、さらには「ラブアイランド(Love Island、英国で放送されている恋愛リアリティーショー)」のような若者に人気の話題の番組との提携などを組み合わせて展開している。

キーのパフォーマンスマーケティングについて、ブリッカー氏は「何かを完全にやめるということはしない」といい、方針変更によって同社が「トップ、ミドル、ボトムの各ファネルにわたってバランスがよくなっている」と述べた。

ブリッカー氏は予算分布や具体的な数字を明かしていないため、キーの広告予算が現在またはiOS変更前にどのように分配されているのかは不明だ。パスマティックス(Pathmatics)の広告トラッキングデータによると、キーの2022年の広告支出は現時点で270万ドル(約3億5100万円)、2021年は通年で470万ドル(約6億1100万円)だった。また、月間広告予算はインスタグラムが約34%、Facebookが17%、Snapchat(スナップチャット)が14%、TikTokが5%、デスクトップ動画が20%、OOHが9%となっている。

広告やマーケティングをフルファネルに近づけるための組み替えに加え、キーではブランド認知向上を図る一環として、店舗拡大にも力を入れている。年末までに総店舗数は24店舗になる予定だ。ブリッカー氏によると、カリフォルニア、アリゾナ、テキサス、フロリダの各州に出店するなど、特に米国の日差しの強い州に重点を置いているそうだ。キーはノードストローム(Nordstrom)、ディラーズ(Dillards)、アンソロポロジー(Anthropologie )の店舗でも販売されている。

景気後退時にこそブランド育成に集中する

「アイウェアの80%以上は実店舗で購入される」とブリッカー氏は話す。「自分の顔の形や自分に似合うアイウェアについてどう考えればいいのかを、誰もがわかっているわけではない。実際に来店し、商品を手に取って試着できる場所で大きな存在感があることは助けになる。各人の顔に合った商品やスタイルを判断できる素晴らしいセンスを持ったスタイリストたちは当社の秘密兵器であり、店舗に彼らを配置することで差別化を図ることができる」。

パフォーマンスマーケティングエージェンシーの幹部たちは、フルファネルなアプローチへのシフトが広がっていると話す。

「いま皆が気にしているのは、ブランディングだ」と説明するパフォーマンスマーケティングエージェンシーのテイク・サム・リスク(Take Some Risk)創業者のドウェイン・ブラウン氏。「2023年に景気後退が深まることが予想されるなか、成功し生き残るのはブランド力を高め、広告展開を続けるブランドだ。景気後退時にブランド育成に集中するブランドは、有利な立場で景気後退を脱することができるだろう」という。

「皆がこわがっているときこそ、どん欲になって全力でまい進すべきだ」。

[原文:How sunglasses brand Quay retooled its advertising to be less reliant on performance marketing following iOS changes

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)


Source