中高年が見る「悪夢」は認知症のサインかもしれない

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誰だって寝ている時に悪夢を見てうなされたり、嫌な汗をかいて飛び起きたりしたくはないものです。イギリス・バーミンガム大学の研究者が発表した研究結果によると、中年期に悪夢を頻繁に見る人は認知症を発症するリスクが高いことがわかりました。

Distressing dreams, cognitive decline, and risk of dementia: A prospective study of three population-based cohorts – eClinicalMedicine
https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2022.101640

Bad dreams in middle age could be sign of dementia risk, study suggests | Dementia | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2022/sep/21/bad-dreams-in-middle-age-could-be-sign-of-dementia-risk-study-suggests

悪夢をまったく見ないという人はいないかもしれませんが、少なくとも週に1度のペースで「飛び起きてしまうほどの悪夢」を見る人は、成人の約5%ほどだとのこと。悪夢を見る原因にはストレス・不安・睡眠不足などが挙げられますが、パーキンソン病患者を対象にした以前の研究では、悪夢を見ることが将来的な認知機能低下のスピードや認知症発症リスクに関連していることが示唆されています。

そこでバーミンガム大学のAbidemi I. Otaiku博士は、同じ関連が健康な成人でも当てはまるのかどうかを調べるため、人々の睡眠の質や認知機能について追跡した3つの研究データを用いた分析を行いました。データには35~64歳の中年成人が600人と、79歳以上の高齢者2600人が含まれており、Otaiku氏は統計ソフトウェアで悪夢を見た頻度や認知機能低下、認知症と診断されたかどうかについて調べました。

分析の結果、少なくとも週に1回は悪夢を見た中年の人々は悪夢をほとんど見ない人と比較して、その後の10年間で認知機能の低下を経験する可能性が4倍も高いことが判明。さらに79歳以上の高齢者においては、悪夢を頻繁に見た人はその後の数年間における認知症発症リスクが2倍高いこともわかりました。


悪夢を頻繁に見ることが認知機能低下や認知症発症リスクに関連している理由については、「質の悪い睡眠によって徐々に認知症の原因となるタンパク質が蓄積する」というものや、「悪夢と認知機能低下に同じ遺伝的要因が存在する」といったものが挙げられます。

しかしOtaiku氏は、脳の右前頭葉における神経変性が生じることで、夢を見ている時の感情コントロールが難しくなり、悪夢を見るようになるという仮説を提唱しています。Otaiku氏は「パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患は、診断される何年も前に発症していることが多いとわかっています。すでに発症している人において、悪夢が最も早い兆候の1つである可能性があります」と述べでいます。

もちろん、悪夢を見ているすべての人が認知症を発症するわけではありませんが、悪夢と認知症に関連性があるならば高リスクの個人を特定する役に立つ可能性があります。「認知症への最善の対処は認知症を予防することです。食生活の乱れ・運動不足・喫煙・過度の飲酒など、いくつかの修正可能な危険因子があることがわかっています。認知症リスクの高い人を数年、数十年前に特定できれば、発症を遅らせたり完全に予防できたりするかもしれません」と、Otaiku氏は主張しました。


奇妙なことに、悪夢と認知症リスクの関連性は女性よりも男性の方が強いこともわかっています。毎週悪夢を見ている高齢男性は、悪夢を見ない高齢男性と比較して認知症発症リスクが5倍もあるものの、女性ではリスク増加が41%にとどまっていました。過去の研究では、「女性の方が男性よりたくさん悪夢を見る」ことが示されており、この性差が関係している可能性もあるとのことです。

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2022年10月08日 09時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1h_ik

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