新宿駅西口のランドマークである小田急百貨店 新宿店が、再開発のため2022年10月2日をもって解体される。
小田急百貨店自体は、隣の小田急HALC内に10月4日に移転オープンするため、正式には「閉店」ではないそうだ。しかし、入っているテナントのすべてがHALCに移転するわけではない。
しかし建物自体は解体されてしまうので、新宿西口の風景が大きく変わるのは間違いないだろう。解体目前の9月30日、新宿小田急を訪れた。
・「閉店しません」と大きく書かれてはいるけれど…
建物はなくなるが、あくまでも「移転」であるということをアピールするために、各所に「小田急百貨店 新宿店は、閉店しません。」というポスターが貼ってある。
このポスターだけを見ると、ほとんどの店舗が隣のハルクに移転するようなイメージを受ける。
小田急百貨店のHPで、リニューアル後のブランド一覧は見られるものの、閉店する店舗の一覧などはない。
しかし実際に小田急百貨店 新宿店を訪れてみると……「10月2日を持ちまして閉店いたします」という貼り紙をしているテナントが予想以上に多いことが分かる。
小田急が「閉店しません」というポスターを貼っているからなのか、どのテナントも閉店のお知らせは小さい。ザッと見た感じ、半分以上は閉店になるのではなかろうか……。うーん。
・消える名店 トロワグロ
とはいえ、テナントはフランチャイズ展開している店が多いため、小田急新宿にしかないという店はあまりない。
そんな中で、小田急百貨店ユーザーに大きなショックを与えたのが「トロワグロ」の閉店ではないだろうか。
フランスのミシュラン三ツ星レストランの味を楽しめる店として1984年にオープン。フランス国外では小田急百貨店でしか展開していなかったという。その人気店がまさかの閉店である。
地下にあるベーカリー＆デリカテッセンも、9階にある「カフェ・トロワグロ」もどちらも閉店するとのこと。
カフェの方は夕方5時の時点でその日は満席。地下のケーキは完全に売り切れていて、パン売り場は長蛇の列になっていた。
・古き良きデパートの意匠
今回の解体で建物は完全に消えてしまう。個人的に建物の中でもデパートの歴史を強く感じられる部分は階段とエレベーターじゃないかと思う。
エレベーターホールは重厚感のある大理石の壁、金色に輝く扉、クラシカルな文字盤にデパートの誇りが現れているようだ。
特に、解体でなくなってしまうのが惜しいのは、1階のスターバックス前のエレベーターと、13階のエレベーター乗り場。どちらも豪奢な作りになっている。
そして、デパートといえば……の屋上庭園も姿を消してしまう。
スペース自体は広くはないが、小さな子供用の遊具と芝生、サボリーマンたちのオアシスであったあろうベンチ……。デパートの屋上らしいのどかな雰囲気が漂っている。
また、12階のレストランフロアの通路は新宿西口の夜景撮影スポットだったようで、カメラを携えて夜の高層ビル街を撮影する人たちが集まっていた。
・閉店セールも実施中
そのままテナントを撤退する店舗も多いため、各フロアで盛大なセールが開催されている。お買い得なのはリビング用品とキッチン用品のフロア。
普段は安く買えないル・クルーゼの鍋や木屋の包丁といった、一生モノ系のキッチン用品がお買い得に。
そして、オシャレな北欧家具や、カリモクのソファもお安くなっている。家具類は元の価格が高い分、こういう機会に買うのは賢いかもしれない。
デパートのセールでおなじみ、タオルと下着のセールも開催中である。
最後に閉店する洋食レストラン「グリル麦星」で、大人向けのお子様ランチのような「洋食プレートセット」（2200円）を食べた。
こうして、デパートの地下から14階まで見てまわって感じたのは、新宿小田急はまさに古き良きファミリー向けのデパートだった、ということである。新宿の伊勢丹やタカシマヤのような目新しさやラグジュアリー感はないけれど、家族でちょっといい買い物ができる場所。
お母さんはバーゲンの掘り出し物を探し、お父さんはゴルフ用品をチェック、子供はおもちゃ売り場でおねだりする……。最後は家族そろってレストランで食事して帰る。サザエさんに出てきそうなシーンが浮かぶ。
別れを惜しむように、老若男女いろんな人たちが、名残惜しそうに小田急デパートの写真を撮っていた。ここには昭和、平成、令和とたくさんの家族の思い出があるのだろう。
新宿西口の再開発後は48階建ての複合ビルができるという。まるで新宿駅を守る壁のようだった小田急百貨店が消えたあとの景色はどうなるのか。
参考リンク：小田急百貨店 新宿店
執筆：
御花畑マリコ
Photo：RocketNews24.
