不正抗議か完全敗北か、さて真相はいかに!?
ノルウェー出身のチェスの世界王者でグランドマスター、マグヌス・カールセン氏が、無名の19歳ハンス・ニーマン氏との対戦中に突然棄権するという事件が起きました。しかもたった二手目で。
一体なにが起こったのでしょう? chess24.comのツイッターにその時の様子がアップされています。一手目、先手ニーマン氏が動かし、後手カールセン氏が動かします。二手目、先手ニーマン氏が動かした後、それまで解説をしていた司会者が急に「ワット!? ノー、ノー!」と愕然とし始めます。よく見るとカールセン氏の名前の横に「Lost」の文字が。まだ二手目なので、自ら投了したという意味を理解をするのに追いつかず、あたふたしているうちにカールソン氏が画面から消えてしまったというのが一連の流れ。
お尻に電波を送って不正行為!?
果たしてなぜ世界王者カールソン氏はたった一手動かしただけで投了してしまったのか。これはどうやら理由があったようです。実はこの二人、9月4日からミズーリ州で開催されていた世界大会の決勝でも対戦していました。なんとその対局で、無名の19歳ニーマン氏が53連勝中の世界王者カールソン氏に番狂わせの勝利。その後カールソン氏は大会を棄権しています。
大勝利をおさめたニーマン氏でしたが、過去にAIを使って不正を行なっていたことが判明し、ソーシャルメディア探偵たちによって今回も不正していたんじゃないかという疑惑が浮上。しかもお尻にバイブレーションを入れて、そこに遠隔で電波を送りAIチェスの手を教えてもらっていたという疑惑が広がり始めました。これをおもしろがってさらにTwitterで拡散したのがイーロン・マスク。これでお尻疑惑がさらに加熱したというわけです。
またカールソン氏はこの大会を棄権したあとTwitterで「話せば大きな問題になる」と匂わせたツイートをしたことから、やはり不正があったのでは? と勘繰る人が増え、日本生まれのチェスグランドマスター、ヒカル・ナカムラ氏もニーマン氏は外部からの助けがあったのではないかと示唆。今回二手目で投了したのは、そんな不正疑惑に対する抗議なのでは? と噂されています。
一方ニーマン氏は不正を否定。「電波が届かない箱の中でプレイしろって言われてもやる。僕は勝つためにここにいるだけ」とかつてAIチェスを使って不正をした過去を認めつつも、それ以来していないと主張。それを裏付けるようにバッファロー大学の教授でチェスの研究家でもあるKenneth Regan氏は、ニーマン氏がその対局ではこれまでのプレイ統計分析よりよいプレイをしているのは確かだけれど、不正をした証拠はどこにもないと話しています。また大会本部も不正はなかったと声明を発表していて、ニーマン氏のお尻バイブ疑惑を払拭しています。
最近はコンピュータ対局やAI技術も進み、AIの最初の手を覚えて対局に臨む若いチェスプレイヤーも増えているそうですが、チェスの醍醐味はやはりAI対戦にはない心理合戦ですよね。今回の事件とも呼べる世界王者の投了、抗議だったのか二手で負けを認めざるしかない動きだったのか未だ不明ですが、こういった疑惑が増えていく不正やAIを上手に使うようなことがないように、やっぱり電波の届かない箱の中で対戦なんてことになってくるのでしょうか。