2022年9月21日、東京・松屋銀座8階のイベントスクエアで「大ベルセルク展 ~三浦建太郎 画業32年の軌跡~ 銀座Edition」が始まった。それに先立って行われた報道向けのプレス取材で、私(佐藤)は少しだけ早くその展示内容を確認することができた。
2021年5月に急逝した作者、三浦建太郎先生が原画を見ると、いまだキャラクターに込めた魂は衰えることなくありありと息づいている。そして今回初展示となった作品を目の当たりにして、感動に胸が熱くなってしまった……。
・あの日のこと
三浦先生の訃報に接したあの日のことを忘れることができない。あの日、私は取材で恵比寿を訪ねていた。取材先を出て、ふとスマホアプリのニュース速報を目にしてその場で立ち尽くしてしまった。
「三浦建太郎氏 死去 54歳 漫画「ベルセルク」の作者」
「そんな……」、思わず漏れた声はまるで自分のモノではない気がした。あの瞬間、時が止まって、自分の意識だけがこの現実から切り離されてしまった気がした。20年以上も読み続けていた愛すべき作品が突然終わる。ショックで何も考えられなかった。
2021年5月に他界した先生はその年の9月に池袋で初開催となる、大ベルセルク展の開催を見届けることはなかった。
・完成された絵画のよう
あれから1年半、大ベルセルク展はすでに4回目を迎えている。先に挙げた池袋の後に、同年12月大阪、22年8月名古屋。そして今回銀座エディションとして松屋にやってきた。会場入り口には、主人公ガッツを象徴する大剣「ドラゴン殺し」のレプリカが飾られている。正に鉄塊と呼ぶにふさわしいデカさだ。
会場には作品世界を忠実に再現したスタチュー(立像)が何体も展示されている。これは、謙信・プライム1スタジオの制作によるもので、今にも動き出しそうなリアリテと迫力がハンパない。自宅に飾っていたら時間を忘れてずーっと眺めてしまいそうだ。
迫力といえば、クラウドファンディングを経て制作が実現した、「実寸大のゾッド像」がすごかった。ガッツの好敵手であるゾッドが実在したらこんなスケールになるのか! ほんとに遭遇したら一瞬で死を覚悟するに違いない。
1人の作品ファンとして目に焼き付けておきたかったのが先生直筆の原画だ。場内には、連載時の原稿とカラー原画が作品の時系列に合わせて多数展示されている。これが1番見たかったんだよ!
コミックのカバーアートコレクションも必見だ。
何度も何度もコミックを読み返しているから、その画のすべてを覚えているはずなのに、肉筆の作品は全然違う。それまで見て来たものとは、異なる世界を描いているみたいだ。
1つひとつが1枚の絵画として完成されており、描かれたキャラの息遣いが聞こえてくるようだ。
・これまでと、これからと
実は今回初めて展示されるものが12点用あり、その半分が三浦先生が最後に制作に携わった作品だ。最新(2022年9月現在)41巻の最後の場面、ガッツの宿敵グリフィスが一筋の涙を流すシーンは、先生の遺稿とされている。
残りの6点は三浦先生の漫画制作スタジオ「スタジオ我画」による作品だ。
三浦先生の描いていないベルセルク。しかしながら、これらの新しい6点はそれまでの画と並んでも遜色なく、しっかりとそれまでの作品を見事に継承している。これが連載を再開したベルセルクなのか。
あの日、自分の中で止まった時がまた動き出した感動を覚え、私はこみ上げてくるものを抑えられなかった。
連載を再開するにあたって出版元の白泉社も、三浦先生の親友で監修を務める森恒二先生も、先生のお弟子さんたちスタジオ我画の皆さんも、きっと並大抵の覚悟ではなかったはず。その重圧は計り知れないものがあるはずだ。
それを押しのけて、連載再開を決意して描き始めた気概がこの6点に宿している。この先、作品がどう続いていくのかはわからないけど、そのすべてを最後まで見届けたい。新しい6点を前にして私も決意した。
ちなみにこの展示は10月4日まで。当日チケットの販売も行っているが、日時指定券の販売を行っている日もあるので、あらかじめ確認の上、チケットを購入して来場することをオススメする。
これまでのベルセルクと、そしてこれからのベルセルクをその目に焼き付けて欲しい。
・今回のイベントの詳細
名称 大ベルセルク展 ~三浦建太郎 画業32年の軌跡~ 銀座Edition
会場 松屋銀座 8階イベントスクエア
住所 東京都中央区銀座3-6-1
会期 2022年9月21日~10月4日
時間 10:00~20:00
9月25日、10月2日は19:30、最終日は17:00閉場、入場は閉場の1時間半前まで
参考リンク:大ベルセルク展、チケット販売(ローチケ)、白泉社、PRTIMES
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24