約30年前のローランドのシンセサイザーのバグを自力で修理した強者現る

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数十年前に発売された製品にバグが見つかった場合、メーカーによる修理を受けられず泣き寝入りになることがほとんど。ところが、約30年前に発売されたローランドのシンセサイザーに存在するバグについて、愛好家のCloudschatze氏が自力で修理した結果を報告しています。

Fixing the Roland CM-500 Vibrato Bug \ VOGONS
https://www.vogons.org/viewtopic.php?t=86257

今回修理成功が報告されたシンセサイザーは、ローランドが1990年代に販売していた音源モジュール「CM-500」です。「CM-500」は発売からすでに約30年が経過していますが、記事作成時点でも中古品が3万円前後で取引されており、愛好家からの一定の支持を得ています。


しかし、「CM-500」には「他の製品と比べてビブラートが速くなる」というバグが存在しています。以下のリンクをクリックして「CM-32LN」で出力した音声(上)と「CM-500」で出力した音声(下)を聴き比べると、「CM-500」の方がビブラートが小刻みになっていることが分かります。

「CM-32LN」のビブラート
「CM-500」のビブラート

上記のバグは2005年に発見されたもので、ローランドも「意図的ではない動作」であることを認めたとのこと。しかし、バグの発見時にはすでに「CM-500」の発売から10年以上が経過していたため、ローランドから正式な修理を受けることはできませんでした。

その後、2020年になってローランド製シンセサイザーをエミュレートするオープンソースプロジェクト「Munt 」が始動し、「CM-500」についても詳細な分析が行われました。その結果、「CM-500」に搭載されているIntel製処理チップ「80C198」では、「CM-32LN」などの「CM-500」登場以前の製品に搭載されていた「8098」と動作クロックが異なっており、動作クロックの違いによってビブラートの速さの違いが生じていることが判明しました。

プロジェクトの成果を元に、「CM-500」でも「CM-32LN」と同様の動作を実現するパッチが作成されました。Cloudschatze氏は「CM-500」に搭載可能なチップを入手してパッチを適用し、「CM-500」のバグを修正することに成功。以下のリンクをクリックして「CM-32LN」の音声(上)と修正後の「CM-500」(下)の音声を聴き比べると、ビブラートの速さが同一になっていることが分かります。

「CM-32LN」のビブラート
修正後「CM-500」のビブラート

修正作業は2つのチップを交換するだけで完了しますが、「CM-500」にはチップが直接ハンダ付けされており、ハンダ付けの経験がない人には作業が困難とのこと。このため、Cloudschatze氏は詳しい人の助けを得るようにアドバイスしています。


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