こんにちは、編集部 石川です。
毎月1回、当サイトのライターに専門分野や得意分野の話を聞いています。今回は、ファンクバンドのギタリストである、まこまこまこっちゃん。
バンドマンってライブ以外何やってるの?ファンクって何?メンバー6人もいたらギャラはどうするの!?などいろいろ聞きました。
石川:
まこっちゃんさんは、働きながらライター業もしつつ、「踊る!ディスコ室町」という京都のファンクバンドのギタリストをされています。
[embedded content]
ぜひ聴きながらお読みください
まこまこまこっちゃん(以下、まこ):
僕は途中から入ったので8年目ぐらいですけど、バンド自体は今年10周年になります。
石川:
すごくいいんですよ。僕めちゃくちゃ好きで。知り合いがやってるバンドだからとかじゃなくて、普通に愛聴してます。
まこ:
それはめっちゃ嬉しい!
バンド活動はさながら運送業
石川:
僕たち先日会ったんですよね。まこっちゃんさんがライブのために京都から東京に来てて。
まこ:
車で。当日の朝6時半ぐらいに高速に乗って、到着したのが13時ぐらいやったかな。
石川:
でかいバンみたいな車に、楽器とメンバー全員乗せて?
まこ:
そう。ギュウギュウですよ。本当に。ギュウギュウですね。
石川:
楽器って何を載せるんですか?
まこ:
僕ら、人数の割には荷物少ないほうだと思うんですけど。ギター2人いるので2本と、ベースと、あとドラムはスネアドラムとか、シンバルとかですね。
石川:
ドラム載せるんだ。ライブハウスで借りるのかと思ってました。
まこ:
持っていかない人もいるんですけど、うちの人は持っていきますね。
石川:
6人+荷物ですよね。そんなに積めるんですか?
まこ:
3列シートのステップワゴンみたいな車で行くんですけど、まず1列目に運転席、助手席で2人。2列目に3人座るんですよ。3列目に片方1人座って、片方のシートを格納して荷物を積むっていうのが最近のスタイルですね。
石川:
想像するとほんとギュウギュウですね。
まこ:
2列目の真ん中に座るときがけっこう嫌なんですよ。
石川:
あはは、大変。京都から、距離的にはどのへんまでそれで行くんですか?
まこ:
福岡にもそれで行きました。
石川:
もし仙台とか…札幌に呼ばれたら?
まこ:
札幌だったら飛行機ですね。仙台も飛行機かもしれない…行ける自信がない。
石川:
東京が北限ですかね。
まこ:
そうですね。1回フジロックフェスティバルに出演したことがあるんですけど、新潟県の苗場村というところですごい山の中なんですよ。あのときはホンマに運転めっちゃしんどかったですね。ドライバーになると席の狭さからは開放されるんですけど、こんどは運転がめちゃ疲れるんです。
石川:
京都から新潟は遠いなー。
まこ:
体力的にはギリギリ行けるけど、すごいイライラしてました。途中でメンバーが「着いたら酒飲もうや」とか盛り上がり出して、「帰りも僕が運転するんですか!」ってブチギレた記憶が(笑)。長時間運転はよくないですよ。適度な交代が必要。
石川:
フジロックは新幹線代出ないんですか?
まこ:
オーディションの枠が毎年あって、それで行ったんです。ジョー・ストラマー財団という若手ミュージシャン基金があって、そこからいくらかいただけるんですけど、メンバーも多いので新幹線までは。
石川:
そういう枠があるんですね。今までで一番大変だったのはそのときですか?
まこ:
1回GWに東京に行かないといけないときがあって。
石川:
それはダメだ…!
まこ:
すごかったですね。8時に出て、8時半に着きましたね。
石川:
30分で?(笑)
まこ:
午後です!12時間30分かかりましたね。20時45分から出番だったんですよ。
石川:
出番15分前じゃないですか。
まこ:
15分前で。30分演奏して終わったらお疲れさまでしたって、また10時間かけて。これなにやってるのかなってそういう疑問がありました。
石川:
ミュージシャンというより運送業みたいな。
「粉になってもいいので乗せてください!」
石川:
夜行バスっていう手は?
まこ:
試してた時代もあったんですけど、楽器載せるのがすごい厳しかったんです。楽器とか精密機器とか、壊れるものは乗せないでくださいって感じで。
石川:
あー、その制限があるんだ。
まこ:
1回怒られましたね。乗せんなってホームページに書いてるでしょ!ってすごい怒られて、「粉になってもいいので乗せてください!」みたいな謎のお願いをして。
実際壊れるんですよ。広島にバスで行ったときに機材がぶっ壊れてて。リハーサルで音が出ないぞって。バスの振動が良くないみたいですね。
石川:
楽器壊れるのは致命的!
まこ:
あと、なんだかんだ車のほうが気が楽です。ギュウギュウとは言え、気心知れたメンバーで、音楽聴いてこの曲いいなーとか、そういうのが楽しいので。しんどいしんどい言ってますけどけっこう僕は好きなんですよ。移動するのは。
石川:
音楽の趣味はもうバッチリ合うわけですもんね。
まこ:
共演者の音源を聴いて、これはすごいなーとか言って。行きはやっぱりライブが楽しみな気持ちがあるから。
石川:
いいですね。楽しそうだな。
いやしかし、いいバンドだから東京どんどん来てほしいなって思うけど、だいぶ大変なんですね。
まこ:
遠くから来ているバンドを見たら交通安全を祈っていただけるとありがたいですね。
石川:
それはあまりいままで考えたことがなかったな。今度からそう思うようにします。
まこ:
演奏も違って聴こえるかもしれないですね。6時間も東名高速乗ってきたのかって思うと、ありがたみが増していい音に聴こえるかもしれない。
石川:
あはは。
バンドの人数とギャラ
石川:
下世話な話なんですけど、バンドの人数多いじゃないですか。
まこ:
6人いますね。
石川:
ギャラをどうするのかなと思って。
まこ:
僕らだとそんなにめちゃくちゃ収入があるわけではないので。プールしておいて次の制作費にまわす感じが多いですね。
石川:
そっか。人数で割っちゃうと少なくなりそうとか思ったけど、それなら喧嘩にならないですね。
まこ:
むしろ人数多いと、経費がかかるときに分散していい感じになります。
石川:
共演者とかでソロでやってるシンガーソングライターもいるわけじゃないですか。出演料って、人数で変動するんですか?
まこ:
しないんじゃないですかね。他人のギャラをあまり知らないですけど。
石川:
ギャラの話とかしないですよね。
まこ:
ただ、それこそ東京とか行くと、車で大変だったでしょうみたいな感じで、考えていただけるところはありますね。ありがたい話で。
石川:
突っ込んだ話で失礼しました。
[embedded content]
そろそろ次の曲どうぞ
曲は「いい感じにしていこうぜ」をやるとできる
石川:
そういうライブとかレコーディングはわかるけど、それ以外の活動って何があるんですか?
まこ:
曲を作ったり練習したり?僕は曲を作ってないですけど、他のメンバーが作って、そこに、ギターはこう弾きましょうかね、みたいな編曲作業とか。
石川:
曲ってどうやってできるんですか?バンドの曲というのは、ベートーヴェンみたいに作曲者が最初から全パート完成したスコア(楽譜)をバーンて書いてくるわけじゃないんですよね?
まこ:
違いますね。
石川:
じゃあどうやって?
まこ:
うちはまずボーカルの人がデモ音源を作ってて、パソコンで打ち込みしたり、ベースを自分で弾いたりして最初からラフに全パート入ってることが多いですね。それをもとに、スタジオでみんなで「いい感じにしていこうぜ」ってやります。
石川:
「いい感じにしていこうぜ」?
まこ:
送られてきたデモを聴いてから、土日にスタジオに入るんです。そこで実際演奏してみて、ここ変やからこうしておこかとか、こうしたほうが良さそうとか、各自のクセとか弾きやすい形に寄せたり。
石川:
それは「踊る!ディスコ室町が考えるファンク」みたいな共通イメージが一個あって、それに近づけていく感じ?
まこ:
それもありますし、あとは作った人がしっくりこなかったら、「もうちょっと宇宙みたいなギター弾いて」みたいな。
ほかには参考音源というか、ジェームス・ブラウンのこの曲のここがかっこいいからこういう感じにしようとか言われるときもあります。
石川:
作曲者の意図に寄せていくんだ。
まこ:
そう。曲を作った人が持ってるイメージを一発で感じるのって難しいので、探り探りでだんだん近づけていくみたいな。
石川:
そっかー。共同作業なんですね。バンドって。あたりまえですけど。
まこ:
共同作業ですね。お世話になってますって感じですよ。メンバーのみなさん。
石川:
練習はどのくらいするんですか?
まこ:
バンド練習は毎週やってますね。週1回ぐらいがレベルをキープできるギリギリのラインで、それ以上間隔を開けると難しいですね。
石川:
それはスタジオに何時間か、こもって?
まこ:
そうですね。3時間ぐらい。
石川:
3時間も何するんですか?
まこ:
意外とすぐ終わるんですよ。1曲5分として、今度のライブ6曲やるから一応さらっとこうか、でもう30分過ぎますから。
石川:
たしかに。
まこ:
で、ここおかしいから修正しようとか言ってるうちにさらに30分ぐらい経って…のくり返し。めちゃめちゃ疲れますね。3時間やるとお腹すくんですよ。すごく。
石川:
なるほど。スタジオ練習ってそういうことだったんだ。
パンクスと思われがち問題
石川:
「踊る!ディスコ室町」はファンクバンドですけど、ギターの演奏としてはロックバンドとか弾き語りとどう違うんですか?
まこ:
まずファンクと言って通じない場合がすごい多いんです。美容室とかでバンドやってる話になって、ファンクバンドってやってますっていうと、「パンク?こんな感じ(風貌)やのに!」って。
石川:
あはは、パンクスだと思われて。
まこ:
日本で有名なバンドでいうと?って言われても、ちょうどいいのがないんですよね。ないからやってるんだぞっていうのもあるんですけど。
石川:
気概があってかっこいいな。
まこ:
海外だと、ジェームス・ブラウンとかあるんですけど。
石川:
ジェームス・ブラウンは何が良いですか。曲は。
まこ:
何がいいかな。でも、有名なやつだとセックスマシーンですよね。ゲロッパ!ってやつ。最近知り合いとゲロッパチャレンジというのをやってて、4分くらいの曲なのでランダムに時間を3分10秒とか言って、再生したところでゲロッパって言ってるかどうかっていう。
石川:
セックスマシーンの中で何分地点で言ってるか当てるんだ。それ面白いですね。
まこ:
楽しいです。ぜひ。みんなでやると楽しいので。
石川:
ファンクの中でギターはどういうポジションなんですか?
まこ:
リズムが重要なジャンルなので、ギターもロックバンドとかよりリズム寄りです。ベースとドラムがよくリズム隊って呼ばれますけど、そこにギターも入る感じ。
石川:
リズムを刻むパートなんですね。でも一応コード(和音)を弾いているんですよね?あれは。
まこ:
コードも弾くし、単音でリズムを刻んでるときもありますね。あと、ファンクの特徴といえば、ワウっていう機材をよく使います。足で踏むとギターの音がワウワウワウワウってなるやつ。
石川:
へ〜。
まこ:
よくファンクのギターを表現するときに、チャカポコしてるとかいうんです。チャカポコチャカポコってリズムをやってますね。
石川:
「踊る!ディスコ室町」ってギタリストが2人いるじゃないですか。どういう役割があるんですか?
まこ:
曲にもよるんですけど、それこそ1人はリズムをがんばってて、1人はもうちょっと目立つ音というか、高い音とかでキラキラさせとくみたいな。
石川:
キラキラさせとく(笑)。
まこ:
ありますね。でも、2人が違うリズムをどっちもやってるみたいなときももちろんありますね。
石川:
なるほどね。
まこ:
1人は短く刻んでて、チャッチャッチャッてやってて、1人はジャーンって伸ばしてるとか。あとは、ギターソロをどっちか弾いてるとか。
石川:
なるほどー。
[embedded content]
いかにもファンクっぽい曲をどうぞ
なんで楽器いっぱい買うの?
石川:
ギタリストってギターいっぱい持ってるじゃないですか。あれはなんでですか?
まこ:
僕そんなにいっぱい持ってるほうじゃないんですよ。手元に2本、実家にあと何本か。メインの楽器は1本しか使ってないんです。もっと買いたい気持ちはありますけど。
石川:
それは、音が違うから?
まこ:
音は違うけど、実際は他人が弾いてるのを聴いてもそんなに……たとえば、赤と青ぐらい違うかと言われたらそうでもないと思うんですよ。せいぜい朱色と赤色ぐらいの違い。
石川:
じゃあなんで買うんですか?
まこ:
主観的に、弾いていると全然違って。
石川:
なんだろう、気分の良さ?
まこ:
そう。高校生のときに部活でちょっといいぐらいのギターを使ってたんですけど、あとから入ってきた後輩が何十万もするようなめちゃくちゃいいギターを持ってて。それをちょっと弾かせてもらったら、「今までこんなん思いついたことないぞ」みたいなフレーズがどんどん出てくるんです。高い楽器すごいなって思って。
石川:
そんなに違うんだ!
まこ:
弾きやすいし、音もいいし、全然違うやんって。そういう感動はありましたね。やっぱりいい楽器を持つとうまくなりますね。たぶん。
石川:
魔法がかかってるんでしょうね。
まこ:
弾きやすさとか気分の良さみたいなのは大事です。当時思いました。
石川:
みんな楽器たくさん持ってる理由がよくわかりました。
生放送「記事の森」やってます
この対談は、先日放送したトーク配信『樹液でも飲みながら記事を振り返る「記事の森」』から抜粋したものです。番組ではこの2倍くらいしゃべってますので、対談をお楽しみいただけた方はぜひアーカイブをどうぞ。
[embedded content]
次回は、10月に配信予定です!ぜひチャンネル登録をお願いします!
まこまこまこっちゃんからのおしらせ
バンドの10周年を記念して、ZINEを作りました!