円安インバウンド復活で困る2つのこと

アゴラ 言論プラットフォーム

黒坂岳央です。

水際対策緩和と、円安によってインバウンド復活の兆しが見えてきた。すでに、7日からの緩和で1日の入国者数の上限が2万人→5万人に引き上げられた。それに伴い、外国人観光客の爆買いが進んでいるようである。まもなく、これが本格化する。

インバウンド復活では円が買われるので円高是正と、観光産業や小売店が潤うなどポジティブな影響も想定される。これまで長きに渡ってずっと苦しめられてきた産業が、一気に大復活となる見込みもあり、日本経済に大きくプラスに寄与するファクターとなる点は個人的にはとても嬉しい。

だが、どんなものでも必ずしもプラス面だけではなくマイナス面もある。冷静かつ総合的に考慮し、円安インバウンド復活を評価するべきだろう。個人的に考えるところを取り上げたい。

simonkr/iStock

1. 観光公害

まずはオーバーツーリズム、いわゆる観光公害だ。わかりやすいのは、観光地の混雑やツアーバス、ホテルなどのブッキングも想定されるだろう。筆者が2019年に東京に行くときには、ホテル予約があまりに多く、目当てのところを諦めざるをえなかったと記憶している。あの状況がまた帰ってくるのだ。

また、これまで円安と帰国前PCR検査などで海外旅行がはばかられる状況だったが、さらに国内旅行も難しくなるだろう。物理的に体を観光地に持っていけたとしても、あまりに過密では、混雑で旅行を楽しめなくなるかもしれない。

だがこれは日本経済へのポジティブインパクトと比べると、些末な問題と言えるかもしれない。インバウンド復活は現行の円安を最大限享受できるチャンスであり、マクロでの国益は優先されるべきだ。

2. 品不足

昨今、日本はグローバルマクロで見て物価安となっている。ビッグマック指数はタイや韓国よりも安く、iPhoneは世界屈指の安さとなっている。多くの外国人観光客がやってくると、多くのものが買われることにより品不足が悪化するリスクがある。

たとえば、ゲーム機のPS5は一部の中国人バイヤーにより国際的に転売されており、これが国内ユーザーの手に渡りにくい状況を悪化させていると見る専門家もいる。また、日本のiPhoneも同じリスクがある。

Apple社は円安コストアップをすべて商品に転嫁しておらず、部分的に自社でコストを引き受けている。これは同社がiPhoneがよく売れる日本の市場を重視していることから来ており、「日本のiPhoneを安くするから、買ってほしい」という姿勢の現れだろう。だが、相対的に価格差が生じるとiPhoneにおけるアービトラージが激化し、その結果として差額を埋めるための値上げが実施される可能性は否定できない。そうなると困るのは、高くなったiPhoneを買わされる日本人である。

このあたりは外国人の購入規制を設けたいところだが、やり過ぎると購買を削ぐことになり難しい。販売店としては売れるものは売りたいというインセンティブも働くだろう。

後はゴミ問題や犯罪増加、感染拡大リスクなどもあるが、無理にあら捜しばかりしても仕方がないと思うし、実際メリットはかなり大きい。外国人旅行消費額総額はコロナ前は5兆円に迫る勢いであり、これだけ円が買われ、消費されれば経済にポジティブなのは間違いない。

観光産業は労働集約型ビジネスであるため、付加価値の高いビジネスとはいえないが、将来的にはテクノロジー進展による省人力化を期待したいところだ。日本にはそれができるポテンシャルがあると信じている。インバウンド復活で日本経済にプラスに働くことを、心から願う。

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