遺憾では済まない北朝鮮の蛮行

アゴラ 言論プラットフォーム

政治家の発する言葉はパタン化しているのかもしれません。直接的被害こそないけれどよくない事件が起こった際によく使うのが「遺憾」です。ただ、遺憾の意味は「期待外れで残念だ」という意味ですのでじっとしていればそれでよいのか、という無作為を表す言葉にもとれます。

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北朝鮮が今年6回目、計10発のミサイルを発射しました。岸田首相はオウムのように「遺憾」と述べています。これを「北朝鮮よ、何もしてくれるな」ととるなら日本は北朝鮮との外交そのものを放棄しているようにも受け止められます。先日ご紹介したように岸田首相の施政方針演説では外交問題について国別ではアメリカ、オーストラリアに次いで3番目に名前を挙げた国が北朝鮮です。中国や韓国が最後の方だったことを考えれば岸田首相はその気があるのか、と思わせました。

しかし、北朝鮮政策については政権が過去何度変わっても同じスタンスで拉致被害者問題の解決が進みません。それが重要なのは百も承知ですが、あの問題が起きたのは金正恩の祖父である金日成の時代である1970-80年代です。それ以来40年以上動かない問題です。金正恩氏は生まれてもないので知りようがない話でそれを父である金正日氏からどれだけ聞いているか、そしてその拉致された日本人が北朝鮮の中で何をしているのか、これほど未知数というのもなんともしがたい話です。

日本の外交はとても偏屈なところがあります。北方領土問題などがその典型で4島返還でその後、平和条約を結ばないとロシアとは正常なお付き合いはできません、とします。韓国とは慰安婦に徴用工問題が存在する限り、果てしなく遠い関係、となります。他方、アメリカとの外交ですと戦争で徹底的にやられた後、占領時は日米が共同して国土再建を行い、工業製品の爆発的輸出で日米貿易摩擦が起きたと思えばは沖縄返還をしてくれました。(いろいろ裏があるのはご承知のとおりですが。)

日本の外交姿勢はアメリカ型、つまり粘ればどうにかなるという発想があるのですが、それでうまくいく外交もあるし、箸にも棒にもかからない国もあるのです。ロシア、北朝鮮、韓国、中国あたりは梃でも動きません。ならば臨機応変な対応が求められる中で「遺憾」だけではどうにもならないのです。

今年に入ってなぜ、安くもないロケットを貧しい北朝鮮が連続して打ち上げるのか、単にアメリカの気を引くだけなのでしょうか? 当初は私もそう考えていました。しかし、これだけ連続となると違うな、と考え直しています。BBCは中国が五輪を控える中、心地よく思っていないのでは、とし、今年前半の訓練は2月3日の五輪までに終わらせるのでは、と分析しています。果たしてそうなのでしょうか?

私は「ヤマが動く」ことを見越しているのではないかと思うのです。2週間ほど前にロシアと中国と北朝鮮は結託しているのはないかと勘繰りたくなるという趣旨のことを書かせていただきました。もしも悪役といい人役を使い分けるとすれば中国は今はいい人役でバッハ会長とにこやかに最高の五輪を、とご満悦の習近平国家主席がいます。一方のプーチン大統領はゴリゴリと最後の一線という緊張感の中にいます。金正恩氏はミサイルを打ち上げ、アメリカの気を引き、アメリカの股裂き外交を推進するため、わき役ながら悪役を演じている、そう見えるのです。つまり、目線を変えさせるための周到な作戦ではないかと思うのです。

では北朝鮮が動くとすれば何処を仮想ターゲットにするのか、ですが、あくまでも極論の仮定の話ですが、私は韓国だとみています。ロケットは確かに破壊力があるものの核がない限り点の攻撃にとどまり線や面の攻撃になりません。日本には十分届くミサイルですが、仮に日本に向けて打っても余計な敵を作るだけです。それなら韓国を刺激し、アメリカを引っ張り出そうとしないでしょうか?韓国を刺激すればアメリカは北朝鮮を叩こうとするでしょう。そうすれば金正恩氏にとっては「外交の道筋が出来た」ということです。中国はそこでも「まぁまぁ」と仲裁役を買って出るのでしょう。芝居がかっていますが、こんなシナリオがないとは言い切れないのです。

とすれば最近、政府からの発信力が極めて少ない日本は無作為では済まされないのではないかと思います。私は「遺憾」という岸田首相を遺憾に思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月28日の記事より転載させていただきました。

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